訪問看護ステーション開業時に気をつけるべきこと6選
訪問看護ステーション開業時に気をつけるべきこと6選
はじめに
ご覧いただきありがとうございます。この記事に辿り着かれた方は、今まさに訪問看護ステーションの開業を検討されているのではないでしょうか。それとも既に開業準備中でしょうか。もし既に開業準備中でもまだ間に合う可能性があります。是非ご一読ください。訪問看護ステーション開業検討中の方~開業準備中の方に贈る、訪問看護ステーション立ち上げ時の留意事項6選をご紹介いたします。
その① 開業時になるべくお金を掛けないこと
訪問看護ステーションの立ち上げに必要な資金は1,000万円以上と言われています。その多くを占めるのが人件費や家賃などの運転資金。この運転資金に回すお金を少しでも増やすため、開業時の初期費用はなるべく抑える努力をしましょう。例えば、開業時に消費してしまいがちな会社設立、創業融資、指定申請、名刺・パンフレットのデザイン、開業コンサルといった費用の抑え方を解説いたします。
会社設立
マネーフォワード会社設立などのサービスを利用して自ら手続を実施することにより、設立費用を抑えることが可能です。この時にご注意いただきたいのが定款に記載する事業目的。この事業目的が指定の基準を満たしていないと指定を受けることができません。事前に指定権者に記載が必要な事項を確認しておきましょう。「介護保険法に基づく介護事業」と記載することで指定を受けることが可能な自治体もありますが、「介護保険法に基づく訪問看護事業」「健康保険法に基づく訪問看護事業」のように、準拠法と事業別に記載しておく方が無難です。また、事後的に定款の事業目的を変更する場合にも、登録免許税などの諸費用が発生します。このため、将来訪問看護事業以外で指定を受ける予定の事業がある場合は、予め記載をしておきましょう。
また、認定創業支援等事業計画に基づいた特定創業支援等事業による支援を受け、市町村からの証明を受けることで、会社設立時の登録免許税の減免を受けることが可能です(株式会社の最低税額15万円の場合は7.5万円に軽減、合同会社の最低税額6万円の場合は3万円に軽減)。認定創業支援等事業計画は、市町村が計画しているため、まずは会社設立予定地の市町村の担当部署に問い合わせてみましょう。
(参考)
マネーフォワードクラウド会社設立:https://biz.moneyforward.com/establish/
創業支援等事業計画の概要:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/nintei.html
創業融資
全国の「よろず支援拠点」や「商工会」で、専門家等の支援を受けながら無料で事業計画を作成することが可能です。特によろず支援拠点では、地銀での融資担当経験のある中小企業診断士が配属されていたりもするので安心です。また、日本政策公庫のビジネスサポートプラザや支店にて、融資申請前に事前に事業計画のレビューを受けることが可能です。融資を断られたら一定期間融資を受けられなくなると言った情報で不安に思われている方は、事前にレビューを受け、その事業計画での融資実行の可能性を判断して貰うと良いでしょう。なお、上述した特定創業支援等事業の証明を受けることで、融資利率の優遇を受けることも可能です。
(参考)
よろず支援拠点全国本部:https://yorozu.smrj.go.jp/
全国商工会連合会:https://www.shokokai.or.jp/
日本政策金融公庫 予約相談:https://www.jfc.go.jp/n/service/heijitsu_soudan.html
指定申請
訪問看護の指定申請は、それ程難しくはありません。指定権者への相談を含めた早めの情報収集によって計画的に行うことが不可欠ですが、社会保険労務士などの専門家に依頼せずとも、ご自身で指定申請を行うことは十分可能です。むしろ、指定申請手続を自ら行うことによって、運営基準を把握する機会が発生し、今後の運営の助けとなるでしょう。なお、指定申請の際には、公費負担医療制度に関する指定申請もお忘れなく。
(参考)
公費負担医療制度に関する事項(熊本県看護協会):https://www.kna.or.jp/supportcenter/faq/c9
名刺・パンフレットのデザイン
デザインソフトが難しいとかセンスがないからといった理由で、名刺やパンフレットのデザインを外注される方も多いかと思います。そんな方にお勧めなのが「Canva」。多種多様なテンプレートが取り揃えられており、デザインの知識のない方でも、それなりのデザインのものを比較的簡単に作成することが可能です。是非一度挑戦してみてください。
(参考)
Canva:https://www.canva.com/
開業コンサル
開業時に数百万円を支払い、その後これと言ったサポートがないといった、悪質な開業コンサルの噂もよく耳にします。数百万円あれば色々なものにお金を掛けることができます。逆に数百万円を開業コンサルに支払うことによって、その分ほかを削らなければなりません。大切なお金です。本当に必要なのか、契約は慎重に判断しましょう。
その② 必要なお金は削らないこと
訪問看護の倒産理由は、職員の退職が原因であることも少なくはありません。そして、職員の退職理由は、労働環境に対する不満に起因することが多いでしょう。このため、職員が退職を検討する様な要素は極力排除すべきです。例えば、トイレが和式だとかウォシュレットが付いてないだとか、事務所や備品がボロボロすぎるとか、給与明細が手書きで合ってるかどうかもわからないだとか。職員の退職防止のため最低限のお金は掛けましょう。開業コンサルなんかにお金を払っている余裕はないはずです。
その③ 嫌な顔をされても営業を続けること
利用者の紹介を受けるためには、ケアマネージャーや医療機関などへ訪問営業をして認知して貰う必要があります。認知して貰わなければ紹介先の候補になり得ないからです。
また、嫌な顔をされたからといって紹介して貰える可能性がゼロという訳ではありません。例えばケアマネージャー。他で受け入れて貰えない利用者が発生した際、受け入れ先を探す必要があります。この時に、直前に挨拶していれば紹介先の候補として挙がり易くなるでしょう。特に新規事業所であれば、受け入れを断わられる可能性が低いため、紹介先の候補として優先的に紹介して貰える可能性もあります。新規事業所の強みと言っても良いでしょう。この新規事業所の強みも生かして、臆さずどんどん訪問営業を掛けていきましょう。
その④ パソコンは苦手でも克服すること
経営管理の基本は数字です。パソコン以外で数字をすることは非常に効率が悪いため、パソコンの利用は不可欠です。また、訪問看護における申請書類は、Excel形式であることが多いです。このため、パソコンは苦手で上達するつもりもないと言うのであれば、訪問看護の経営は諦めた方がよいと言っても過言ではありません。会社設立から指定申請までのスケジュールは数ヶ月あります。数ヶ月あれば十分です。その間に必死で上達しましょう。
どうやったら上達できるかわからない場合、WindowsやExcelの基礎的な書籍を購入し、一巡することをお勧めします。すべて覚える必要はありません。一巡することが非常に重要です。『そういう機能がある』ということを認知してさえいれば、Google検索などで調べて利用することが可能です。適宜検索しながら、実際の業務をこなしていくことによって、自然と身についていくことでしょう。また、『こういったことが出来ないか』といった観点から検索を掛けることも重要です。そこには思わぬ効率化の余地があるかもしれません。パソコンを利用するうえで重要なのは『認知』+『検索スキル』です。磨いていきましょう。
その⑤ 社長(最高経営責任者)としての自覚を持つこと
会社を立ち上げ、社長(最高経営責任者)になるということは、単に肩書きを得るだけではありません。それは、会社の舵取りを一身に担い、あらゆる決断に責任を持つことを意味します。立ち上げ当初は、様々な業務を一人でこなさなければならない場面も多々あります。総務、人事、経理といった専門知識が必要な分野でも、自ら情報収集し、コンプライアンスを遵守していく必要があります。もし、このような責任と負担に耐えられないと感じるのであれば、会社員として働く道を選ぶ方が賢明かもしれません。
例えば、運営指導において運営基準違反を指摘されたとしましょう。そんな時、「誰々がこう言っていた」「知らなかった」といった言い訳は通用しません。全ての責任は社長(最高経営責任者)であるあなたにあります。会社を立ち上げ、社長(最高経営責任者)になるということは、会社の全ての行動に対して、最終的な責任を負う覚悟が必要なのです。
その⑥ 早めに税理士と契約すること
会社を経営するに当たって、知らなかったでは済まされない様々な税務上のリスクが存在します。その様なリスクに適時に対応するためには、立ち上げ初期から税理士と契約することが不可欠です。会計記帳や税務申告をご自身で行うことを検討される方もいらっしゃいますが、会社経営は初めてのことだらけです。ひとつひとつのことに膨大な時間が割かれてしまいます。事務作業経験の少ない専門職経営者なら尚更です。簿記や税務を覚えることに割く時間はないでしょう。会計記帳や税務申告は税理士にお任せください。
まとめ
本記事では、訪問看護ステーション立ち上げ時の留意事項6選について解説しました。訪問看護ステーションの立ち上げは、資金面、手続き面、人材確保、営業活動など、様々な課題があります。この記事で紹介した5つのポイントを参考に、計画的に準備を進めましょう。もし、税理士の選び方がわからない場合、以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。