福祉事業の指定申請代行の依頼は社労士?行政書士?

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介護事業や障害福祉事業を始めたいと考えているけれども、時間がないため指定申請の代行を専門家に依頼したい。
でも、どの専門家に依頼したらいいのかわからないと、お困りではないでしょうか。
結論としましては、以下の取扱いとなります。

介護事業:社会保険労務士
障害福祉事業:行政書士

まず前提として、介護事業に係る許認可(指定)は介護保険法及び健康保険法、障害福祉事業に係る許認可(指定)は障害者総合支援法及び児童福祉法に定められています。

上記を前提として説明を進めさせていただきます。
まず、社会保険労務士が行える業務は、社会保険労務士法の『第二条』に、以下の通り定められています。

第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(中略)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。

この『第二条第一項』に記載されている『別表第一』に、介護保険法及び健康保険法が例示されています。
よって、介護事業の指定申請書類の作成・提出は、社会保険労務士業務となります。
そして、上記業務は、社会保険労務士の独占業務(他の者が行うことができない)とされています。

一方で、行政書士が行える業務は、行政書士法の『第一条の二』と『第一条の三』に、以下の通り定められています。

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(中略)を作成することを業とする。
 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(中略)について代理すること。

一見すると、官公庁への提出書類を対象としているので、行政書士も介護事業の指定申請書類の作成・提出ができそうに思います。しかし、『第一条の二第二項』に『前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。』、『第一条の三第一項』に『ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。』と定められています。

先ほど述べました通り、介護事業の指定申請書類の作成・提出は社会保険労務士の独占業務であるため、社会保険労務士法においてその業務を行うことが制限されていると言えます。このため、行政書士は当該業務を行うことができません。

一方で、障害福祉事業は、特に他の法律においてその業務を行うことが制限されていません。
このため、障害福祉事業の指定申請書類の作成・提出は、行政書士業務となります。
そして、上記業務は、行政書士の独占業務(他の者が行うことができない)となります。

以上、如何だったでしょうか。参考になりましたら幸いです。

参考

(社会保険労務士の業務)

第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
 別表第一に掲げる労働及び社会保険に関する法令(以下「労働社会保険諸法令」という。)に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、再審査請求書その他の書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)をいう。以下同じ。)を作成すること。
一の二 申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。

社会保険労務士法

別表第一(第二条関係)

 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
 労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)
 職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)
 雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)
 労働保険審査官及び労働保険審査会法(昭和三十一年法律第百二十六号)
 削除
 職業能力開発促進法(昭和四十四年法律第六十四号)
 駐留軍関係離職者等臨時措置法(昭和三十三年法律第百五十八号。第十条の二の規定に限る。)
 最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)
 中小企業退職金共済法(昭和三十四年法律第百六十号)
十一 国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法(昭和五十二年法律第九十四号)
十二 じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)
十三 障害者の雇用の促進等に関する法律
十四 削除
十五 激じん災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和三十七年法律第百五十号。第二十五条の規定に限る。)
十六 労働災害防止団体法(昭和三十九年法律第百十八号)
十七 港湾労働法(昭和六十三年法律第四十号)
十八 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
十九 炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(昭和四十二年法律第九十二号)
二十 労働保険の保険料の徴収等に関する法律
二十の二 家内労働法(昭和四十五年法律第六十号)
二十の三 勤労者財産形成促進法(昭和四十六年法律第九十二号)
二十の四 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号)
二十の五 沖縄振興特別措置法(平成十四年法律第十四号。第七十条の規定に限る。)
二十の六 労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)
二十の七 作業環境測定法(昭和五十年法律第二十八号)
二十の八 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和五十一年法律第三十三号)
二十の九 賃金の支払の確保等に関する法律(昭和五十一年法律第三十四号)
二十の十 本州四国連絡橋の建設に伴う一般旅客定期航路事業等に関する特別措置法(昭和五十六年法律第七十二号。第十六条(第十八条の規定により読み替える場合を含む。)及び第二十条の規定に限る。)
二十の十一 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律
二十の十二 地域雇用開発促進法(昭和六十二年法律第二十三号)
二十の十三 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平成三年法律第五十七号)
二十の十四 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成四年法律第六十三号)
二十の十五 労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成四年法律第九十号)
二十の十六 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
二十の十七 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
二十の十八 林業労働力の確保の促進に関する法律(平成八年法律第四十五号。第十三条の規定に限る。)
二十の十九 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
二十の二十 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
二十の二十一 石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号。第三十八条及び第五十九条の規定に限る。)
二十の二十二 次世代育成支援対策推進法(平成十五年法律第百二十号)
二十の二十三 職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(平成二十三年法律第四十七号)
二十の二十四 生活困窮者自立支援法(平成二十五年法律第百五号。第十六条第一項及び第二十一条第二項の規定に限る。)
二十の二十五 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(平成二十六年法律第百三十七号)
二十の二十六 青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和四十五年法律第九十八号)
二十の二十七 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成二十七年法律第六十四号)
二十の二十八 新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律(令和二年法律第五十四号)
二十の二十九 特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(令和三年法律第七十四号)
二十一 健康保険法
二十二 船員保険法
二十三 社会保険審査官及び社会保険審査会法(昭和二十八年法律第二百六号)
二十四 厚生年金保険法
二十五 国民健康保険法
二十六 国民年金法
二十六の二 年金生活者支援給付金の支給に関する法律(平成二十四年法律第百二号)
二十七 独立行政法人福祉医療機構法(平成十四年法律第百六十六号。附則第五条の二の規定に限る。)
二十八 石炭鉱業年金基金法(昭和四十二年法律第百三十五号)
二十九 児童手当法(昭和四十六年法律第七十三号)
二十九の二 平成二十二年度等における子ども手当の支給に関する法律(平成二十二年法律第十九号)
二十九の三 平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する特別措置法(平成二十三年法律第百七号)
三十 高齢者の医療の確保に関する法律
三十一 介護保険法
三十二 前各号に掲げる法律に基づく命令
三十三 行政不服審査法(前各号に掲げる法令に係る不服申立ての場合に限る。)

社会保険労務士法 別表第一

(業務)

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。

行政書士法
事務所概要

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