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のどか会計事務所
公認会計士・税理士事務所 / 行政書士事務所
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インボイス制度 Q&A 一問一答【令和6年4月版】

のどか会計事務所

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・ 人員配置体制加算 対応
会計の区分 対応(複数指定事業所)
就労支援事業会計 対応(就労支援)

目次

インボイス制度でわからないことはコレで解決!Q&A一問一答【令和6年4月版】

インボイス制度 Q&A 一問一答【令和6年4月版】

参考

(国税庁)特集 インボイス制度

YouTube動画
3分でわかる 銀行振込手数料のインボイス対応
3分でわかる インボイスETC対応
3分でわかる インボイス立替金精算
3分でわかる インボイス登録申請
3分でわかる インボイス2割特例

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A【令和6年4月版】

Ⅰ 適格請求書等保存方式の概要等
(適格請求書等保存方式の概要)
問1 「適格請求書等保存方式」の概要を教えてください。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、令和5年 10 月1日から「適格請求書等保 存方式」(「インボイス制度」)が開始されました(消法 30、57 の2、57 の4)。

1  適格請求書発行事業者の登録制度
 適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の要件として、原則、適格請求書発行事業者から交付を受けた適格請求書の保存が必要になります。
 適格請求書を交付しようとする事業者は、納税地を所轄する税務署長に適格請求書発行事業者の登録申請書(以下「登録申請書」といいます。)を提出し、適格請求書発行事業者として登録を受ける必要があり(登録を受けることができるのは、課税事業者に限られます。)、税務署長は、氏名又は名称及び登録番号等を適格請求書発行事業者登録簿に登載し、登録を行います(消法 57 の2①②④)。登録申請書は、e-Tax を利用して提出できますので、ぜひご利用ください(個人事業者はスマートフォンでも手続が可能となります。)。
 なお、郵送により提出する場合の送付先は、各国税局(沖縄国税事務所を含みます。以下同じです。)のインボイス登録センターとなります。
 また、相手方から交付を受けた請求書等が適格請求書に該当することを客観的に確認できるよう、適格請求書発行事業者の情報については、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において公表されます。

(注) 適格請求書とは、次の事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシート等)をいいます(消法 57 の4①)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等(消費税額及び地方消費税額に相当する金額の合計額をいいます。以下同じです。)
 ⑥  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

2  適格請求書の交付義務等
 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)から適格請求書の交付を求められたときは適格請求書の交付義務が課されています(消法 57 の4①)。
 ただし、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難な次の取引については、適格請求書の交付義務が免除されます(消法 57 の4①、消令 70 の9②、消規 26 の6)。
 ①  3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
 ②  出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
 ③  生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売
(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
 ④  3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
 ⑤  郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
 なお、小売業、飲食店業、タクシー業等の不特定多数の者に対して資産の譲渡等を行う事業については、適格請求書の記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができます(消法 57 の4②、消令 70 の 11)。
 また、適格請求書や適格簡易請求書の交付に代えて、これらに係る電磁的記録を提供することもできます(消法 57 の4⑤)。

3  仕入税額控除の要件
 適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります(消法 30⑦⑧⑨)。
 保存すべき請求書等には、適格請求書のほか、次の書類等も含まれます。
 イ  適格簡易請求書
 ロ  適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録
 ハ  適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類
(課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するもので、相手方の確認を受けたものに限ります。)(書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)
 ニ  次の取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類(書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)
  ◼  卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の販売
  ◼  農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等が生産者(組合員等)から委託を受けて行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式によるものに限ります。)
 なお、請求書等の交付を受けることが困難であるものとして次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法 30⑦、消令 49①、消規 15 の4)。
 ①  適格請求書の交付義務が免除される上記2①の3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
 ②  適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
 ③  古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
 ④  質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の取得
 ⑤  宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
 ⑥  適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当する場合に限ります。)の購入
 ⑦  適格請求書の交付義務が免除される上記2④の3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
 ⑧  適格請求書の交付義務が免除される上記2⑤の郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
 ⑨  従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

(注) 一定規模以下の事業者は、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 53 の2、改正令附則 24 の2①)。
 詳細については、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。

(参考)
 令和元年9月 30 日までの請求書等保存方式においては、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされていました。
 また、令和元年 10 月1日の軽減税率制度の実施から令和5年9月 30 日までは、区分記載請求書等保存方式となり、帳簿及び区分記載請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされていました(28 年改正法附則 34②)。

 ※  令和5年 10 月1日以後の適格請求書発行事業者が行う課税資産の譲渡等について、適格請求書の交付義務等が課され、同日以後の課税事業者(簡易課税制度を適用して申告する事業者を除きます。)が行う課税仕入れについて、仕入税額控除の要件として、適格請求書等の保存が必要となります。詳細については、問 38《令和5年 10 月1日前後の取引に係る適用関係》、問 77《登録日である令和5年 10 月1日をまたぐ請求書の記載事項》、問 77-2《月の中途で適格請求書発行事業者となった場合の適格請求書等の交付方法》を、それぞれご参照ください。

Ⅱ 適格請求書発行事業者の登録制度
(1 登録手続)
(登録の手続)
問2 適格請求書発行事業者の登録は、どのような手続で行うのですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者(登録を受けることができるのは、課税事業者に限られます。)は、納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出する必要があります(消法 57 の2②、基通1-7-1)。
 登録申請書は、e-Tax を利用して提出できますので、ぜひご利用ください(個人事業者はスマートフォンでも手続が可能となります。)。なお、郵送により登録申請書を提出する場合の送付先は、各国税局のインボイス登録センターとなります。
 登録申請書の提出を受けた税務署長は、登録拒否要件に該当しない場合には、適格請求書発行事業者登録簿に法定事項を登載して登録を行い、登録を受けた事業者に対して、その旨を通知することとされています(消法 57 の2③④⑤⑦)。
 また、適格請求書発行事業者の情報は、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において公表されます。
 なお、免税事業者が登録を受ける場合の手続については、問7《免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合》をご参照ください。

(参考1) 「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で公表される事項は次のとおりです。
⑴ 法定の公表事項(消法 57 の2④➃、消令 70 の5①)
 ①  適格請求書発行事業者の氏名(※)又は名称
 ②  法人(人格のない社団等を除きます。)については、本店又は主たる事務所の所在地
 ③  特定国外事業者(国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを国内に有しない国外事業者をいいます。以下同じです。)以外の国外事業者については、国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地
 ④  登録番号
 ⑤  登録年月日
 ⑥  登録取消年月日、登録失効年月日

(※)個人事業者の氏名について、「住民票に併記されている外国人の通称」若しくは「住民票に併記されている旧氏(旧姓)」を氏名として公表することを希望する場合又はこれらを氏名と併記して公表することを希望する場合は、登録申請書の他に、必要事項を記載した「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」をご提出ください。
 なお、住民基本台帳法令の規定により、やむを得ず住民票に旧姓を併記できない場合には、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」に戸籍謄本を添付して提出することにより、旧姓(氏)での公表をすることができます。
 また、既に公表サイトに氏名が公表されている方についても同様の手続により旧姓(氏)での氏名の公表が可能です(既に付されている登録番号は変更されませんのでご留意ください。)。

(注)
 1  住民基本台帳法令の規定により、やむを得ず住民票に旧姓を併記できない場合とは、例えば、過去に住民票に旧姓を併記する手続を行い、その併記した旧姓を削除した後、再度、氏に変更(婚姻や離婚)がないにもかかわらず、旧姓を併記しようとする場合が該当します。
 2  氏名に代えて旧姓を使用するケースにおいては、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の記載に当たっては、「氏名に代えて公表」にチェックを入れていただくようお願いします。
 3  e-Tax により届出書や申出書を提出する場合は、住民票の提出は不要ですが、戸籍謄本の添付をされる方については、管轄のインボイス登録センターに郵送いただくようお願いします。
 4  「住民票への旧姓の併記方法」や「住民票に旧姓を併記できない場合」の詳細については、お住いの市区町村にお尋ねください。

⑵ 本人の申出に基づき追加で公表できる事項
次の①、②の事項について公表することを希望する場合には、必要事項を記載した「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」をご提出ください。
 ①  個人事業者の「主たる屋号」、「主たる事務所の所在地等」
 ②  人格のない社団等の「本店又は主たる事務所の所在地」

(参考2) 適格請求書発行事業者の登録申請手続は、e-Tax(注1)又は書面によって行うことができます。
【e-Tax をご利用いただく場合】
 ◼ パソコンで利用可能な「e-Tax ソフト(WEB 版)」
 ◼ スマートフォンやタブレットで利用可能な「e-Tax ソフト(SP 版)」(注2)
を利用して提出することができ、これらのソフトは、画面に表示された質問に回答していくことで、入力漏れ等がなく、スムーズに申請データを作成することができる「問答形式」を採用していますので、ぜひご利用ください。
なお、e-Tax を利用した場合の登録申請手続の詳細(事前準備や上記ソフトを利用する場合の操作マニュアル等)については、インボイス制度特設サイト(「申請手続」関連ページ)の「e-Tax による登録申請手続」をご確認ください。

(注)
 1  e-Tax の利用には電子証明書(マイナンバーカード等)の取得などの事前準備が必要です。
  ただし、税理士による代理送信の場合には、事業者の電子証明書は不要です。
 2  個人事業者の方のみがご利用になれます。

【書面により提出いただく場合】
 郵送により登録申請書を提出する場合の送付先は、各国税局のインボイス登録センターとなりますので、インボイス制度特設サイト(「申請手続」関連ページ)の「郵送による提出先のご案内」から提出先をご確認ください。

(登録通知)
問3 適格請求書発行事業者の登録は、どのような方法で通知されますか。【令和3年7月追加】【令和4年4月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者の登録の通知については、登録申請書を e-Tax により提出して、登録通知について電子での通知を希望した場合は、通知書等一覧に登録番号等が記載された登録通知書がデータで格納され、その他の場合は、書面にて登録番号等が記載された登録通知書が送付されます。
 電子データで登録通知を希望していただくことで、
 ◼  税務署での処理後、速やかに電子通知が行われるため、書面より早期に登録通知書を受領することができる
 ◼  通知書等一覧内にデータ保管されるため、登録通知書の紛失のおそれがない(保管されたデータは、書面により出力することやPDFデータでの保存をすることが可能)などのメリットがありますので、ぜひご利用ください。
 なお、登録通知書は、原則として再発行を行いませんので大切に保管してください。

問4 登録申請書を提出してから登録の通知を受けるまでにどの程度の期間がかかりますか。また、自分の登録番号が記載されている通知書を紛失してしまった場合、どうすればよいでしょうか。【令和3年7月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 登録申請書を提出してから登録通知を受けるまでの期間については、一時期に多量の登録申 請書が提出された場合は処理に時間を要するなど、登録申請書の提出状況により異なります。現時点における登録申請書を提出してから登録通知までに要する期間については、国税庁ホ ームページの「インボイス制度特設サイト」に「適格請求書発行事業者の登録通知時期の目安について」を掲載しています。まずはこの登録通知時期の目安をご確認いただき、当該目安を超えていた場合は、各国税局(所)インボイス登録センターへお問合せください。
 また、ご自身の登録番号がわからなくなった場合などの理由により、既に登録を受けている事業者の方が自身の登録番号を確認したい場合には、各国税局(所)インボイス登録センターの案内ページに記載の問合せ先にお問合せください。
 なお、登録申請書を e-Tax で提出し、登録通知を電子データで受け取ることを希望される場合は、事前にメールアドレスを登録すると、登録したメールアドレス宛に、登録通知が「通知書等一覧」に格納されたことをお知らせするメールが送信され、すぐに登録通知を確認できますので、ぜひご利用ください。

(注)
 1  法人番号を有する法人の登録番号は「T+13 桁の法人番号」となります。法人番号については、「国税庁法人番号公表サイト」で検索できます。
 2  登録通知をe-Tax(電子データ)で受領することを希望された場合、e-Tax(電子データ)で確認ができます。具体的な確認手順は、「インボイス制度特設サイト」の「申請手続」にある「登録通知データ確認マニュアル」をご参照ください。
 3  メールアドレスの登録方法については、国税庁ホームページ「インボイス制度特設サイト」の「申請手続」にある「メールアドレス・宛名登録マニュアル e-Tax ソフト(WEB 版)ver.」をご参照ください。

(登録の効力)
問5 適格請求書発行事業者の登録の効力は、いつから発生するのですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 登録申請書の提出を受けた税務署長は、登録拒否要件に該当しない場合には、適格請求書発行事業者登録簿に法定事項を登載して登録を行い、登録を受けた事業者に対して、その旨を通知することとされています(消法 57 の2③④⑤⑦)。
 登録の効力は、通知の日にかかわらず、適格請求書発行事業者登録簿に登載された日(以下「登録日」といいます。)から生じます。このため、登録日以降の取引については、相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務があります(基通1-7- 3)。
 なお、登録日から登録の通知を受けるまでの間の取扱いについては、問 36《登録日から登録の通知を受けるまでの間の取扱い》をご参照ください。

(参考) 令和5年 10 月1日より前に登録の通知を受けた場合であっても、登録の効力は登録日である令和5年 10 月1日に生じることとなります。

(課税期間の中途での登録)
問6 課税事業者は、課税期間の途中であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けることができますか。【令和3年7月追加】

【答】
 課税事業者は、課税期間の途中であっても、登録申請書を提出し、登録を受けることができます。登録申請書を提出し登録を受けた場合、登録の効力は、登録日から生じます。
 なお、新たに設立された法人等の登録時期の特例については、問 11《新たに設立された法人等の登録時期の特例》をご参照ください。

(参考) 令和5年 10 月1日より前に登録の通知を受けた場合であっても、登録の効力は登録日である令和5年 10 月1日から生じることとなります。

(免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合)
問7 免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合の取扱いについて教えてください。また、この場合、いつから課税事業者となりますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 免税事業者が登録を受けるためには、原則として、消費税課税事業者選択届出書(以下「課税選択届出書」といいます。)を提出し、課税事業者となる必要がありますが、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中において、令和5年 10 月1日後に登録を受ける場合には、適格請求書発行事業者の登録申請書に登録希望日(提出日から 15 日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日)を記載することで、その登録希望日から課税事業者となる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 44④、改正令附則 15②、基通 21-1-1)。
 したがって、この経過措置の適用を受けることとなる場合は、登録希望日から課税事業者となり、登録を受けるに当たり、課税選択届出書を提出する必要はありません。
 また、税務署長による登録が完了した日が登録希望日後となった場合であっても、登録希望日に登録を受けたものとみなされます(改正令附則 15③)。
 なお、この経過措置の適用を受けて適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、基準期間の課税売上高にかかわらず、登録日から課税期間の末日までの期間について、消費税の申告が必要となります。

(注)
 1  この経過措置の適用を受ける登録日の属する課税期間が令和5年 10 月1日を含まない場合は、登録日の属する課税期間の翌課税期間から登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については免税事業者となることはできません(28年改正法附則 44⑤)。
 2  この経過措置の適用を受けない課税期間に登録を受ける場合については、原則どおり、課税選択届出書を提出し、課税事業者となる必要があります。
 なお、免税事業者が課税事業者となることを選択した課税期間の初日から登録を受けようとする場合は、その課税期間の初日から起算して 15 日前の日までに、登録申請書を提出しなければなりません(消法 57 の2②、消令 70 の2)。

(年の中途から登録を受けた場合における消費税の確定申告が必要となる期間(個人事業者の場合))
問8 個人事業者が、年の中途から適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、その年の1月1日から 12 月 31 日までの課税期間の消費税の申告について具体的に教えてください。【令和3年7月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
1  免税事業者である個人事業者が令和X年の中途に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合(登録に際して令和X年分を適用開始課税期間とする課税選択届出書を提出した場合を除きます。)
 令和X年分について免税事業者である個人事業者が例えば令和X年7月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けた場合には、登録日である令和X年7月1日以後は課税事業者となりますので、令和X年7月1日から令和X年 12 月 31 日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて、令和X年分の消費税の申告が必要となります(28 年改正法附則 44④)。

(参考) 令和X年7月1日から登録を受けることとなった場合において、登録日の前日である令和X年6月 30 日に、免税事業者であった期間中に国内において譲り受けた課税仕入れに係る棚卸資産や保税地域からの引取りに係る課税貨物で棚卸資産に該当するものを有しており、当該棚卸資産又は課税貨物について明細を記録した書類を保存しているときは、当該棚卸資産又は課税貨物に係る消費税額について仕入税額控除の適用を受けることができます(改正令附則 17)。

2  令和X年分について課税事業者である個人事業者が令和X年の中途に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合(令和X年分を適用開始課税期間とする課税選択届出書を提出している場合を含みます。)
 令和X年分について課税事業者である個人事業者が例えば令和X年7月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、同日から適格請求書発行事業者となりますが、その課税期間(令和X年1月1日から 12 月 31 日まで)中に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて、令和X年分の消費税の申告が必要となります。

(課税期間の中途から課税事業者となった場合の基準期間における課税売上高)
問8-2 私は、令和X年 10 月1日から適格請求書発行事業者となった個人事業者ですが、それまでの間は免税事業者でした。令和X+2年分の申告における基準期間(令和X年分)における課税売上高は、免税事業者であった令和X年1月から9月までの金額を含むのでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書発行事業者になったことにより、令和X年 10 月1日から課税事業者となった個人事業者が、令和X+2年分の消費税の確定申告を行うに当たり、その基準期間は令和X年となりますが、この場合の基準期間における課税売上高(税抜)は、当該個人事業者が免税事業者であった期間(令和X年1月から9月)の課税売上高を含む金額で計算することとなります(消法9②一、基通1-4-5)。
 また、その免税事業者であった期間に係る課税売上高について税抜処理は行わず、その売上げ(非課税売上げ等を除きます。)がそのまま課税売上高となりますので、以下の例のとおり計算することとなります。

(簡易課税制度を選択する場合の手続等)
問9 免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、登録を受けた日から課税事業者になるとのことですが、その課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができますか。【令和3年7月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受けることとなった場合には、登録日(令和5年 10 月1日より前に登録の通知を受けた場合であっても、登録の効力は登録日から生じます。)から課税事業者となる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 44④、基通 21-1-1)。
 この経過措置の適用を受ける事業者が、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を、納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、その課税期間の初日の前日に消費税簡易課税制度選択届出書を提出したものとみなされます(改正令附則 18)。
 したがって、ご質問の場合、登録日の属する課税期間中にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することにより、その課税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができます。

 ※  2割特例の適用を受けた適格請求書発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、提出した日の属する課税期間について適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合には、当該課税期間の初日の前日に当該届出書を税務署長に提出したものとみなされます(28 年改正法附則 51 の2⑥)。
 詳細については、問 117《2割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択》をご参照ください。

(登録の任意性)
問 10 当社は、軽減税率対象品目の販売を行っていませんが、適格請求書発行事業者の登録を必ず受けなければなりませんか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書を交付できるのは、登録を受けた適格請求書発行事業者に限られますが、適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかは事業者の任意です(消法 57 の2①、57 の4①)。
 ただし、登録を受けなければ、適格請求書を交付することができないため、取引先が仕入税額控除を行うことができませんので、このような点を踏まえ、登録の必要性をご検討ください。また、適格請求書発行事業者は、販売する商品に軽減税率対象品目があるかどうかを問わず、 取引の相手方(課税事業者に限ります。)から交付を求められたときには、適格請求書を交付しなければなりません。
 一方で、消費者や免税事業者など、課税事業者以外の者に対する交付義務はありませんので、例えば、顧客が消費者のみの場合には、必ずしも適格請求書を交付する必要はありません。このような点も踏まえ、登録の必要性をご検討ください。
 また、ご検討にあたっては国税庁ホームページに掲載している「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」もご活用ください。

(新たに設立された法人等の登録時期の特例)
問 11 新たに設立した法人が事業開始(設立)と同時に適格請求書発行事業者の登録を受けることはできますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者の登録を受けることができるのは、課税事業者に限られます(消法 57の2①)。
 新たに設立された法人が免税事業者の場合、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに、課税選択届出書を提出すれば、その事業を開始した日の属する課税期間の初日から課税事業者となることができます(消法9④、消令 20 一)。
 また、新たに設立された法人が、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出した場合において、税務署長により適格請求書発行事業者登録簿への登載が行われたときは、その課税期間の初日に登録を受けたものとみなされます(以下「新たに設立された法人等の登録時期の特例」といいます。)(消令 70 の4、消規 26 の4、基通1-4-7、1-4-8)。
 したがって、新たに設立された法人が免税事業者である場合、事業開始(設立)時から、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、設立後、その課税期間の末日までに、課税選択届出書と登録申請書を併せて提出することが必要です。
 なお、新たに設立された法人が課税事業者の場合については、事業を開始した課税期間の末日までに、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を提出することで、新たに設立された法人等の登録時期の特例の適用を受けることができます。

(参考) 新設合併、新設分割、個人事業者の新規開業等の場合も同様です。また、個人事業者が法人を設立して事業を開始する場合(引き続き個人事業者として事業を継続する場合を除きます。)は、新たに設立された法人としての手続に加えて、個人事業者としての廃業の手続(「事業廃止届出書」の提出)が必要となります。なお、吸収合併又は吸収分割により、登録を受けていた被合併法人又は分割法人の事業を承継した場合における吸収合併又は吸収分割があった日の属する課税期間についても新たに設立された法人等の登録時期の特例の適用があります(基通1-7-6)。

 ※  免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、経過措置により、課税選択届出書の提出を要せず、課税事業者となることができます(詳しくは、問7《免税事業者が令和5年 10 月1日から令和11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合》をご参照ください。)。この場合においても、登録申請書に「課税期間の初日から登録を受けようとする旨」を記載することにより、事業を開始(設立)した課税期間の初日に遡って登録を受けたものとみなされ、課税期間の初日(登録日)から課税事業者となります。

(登録の拒否)
問 12 適格請求書発行事業者の登録を申請した場合に、登録を拒否される場合はありますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 登録を受けようとする事業者が、以下の事業者の区分に応じ、それぞれ次のいずれかの事実に該当しなければ、原則として、登録を拒否されることはありません(消法 57 の2⑤)。

【特定国外事業者以外の事業者の場合】
 ◼  納税管理人を定めなければならない事業者が、納税管理人の届出をしていないこと
 ◼  消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であること

【特定国外事業者の場合】
 ◼  消費税に関する税務代理の権限を有する税務代理人がないこと
 ◼  納税管理人の届出をしていないこと
 ◼  現に国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること
 ◼  登録を取り消され(次の①又は②のいずれかに該当したことにより取り消された場合に限ります。)、その取消しの日から1年を経過しない者であること
  ①  消費税につき期限内申告書の提出がなかった場合において、当該提出がなかったことについて正当な理由がないと認められること
  ②  現に国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること
 ◼  消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者であること

(注)
 1  例えば、法人が消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられた場合において、当該法人の代表者が法人とともに罰金以上の刑に処せられたときは、その執行が終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しなければ、代表者は個人事業者としての登録も受けることができません。
 2  「罰金以上の刑」には、各種加算税や延滞税の賦課決定処分は含まれません。

(登録の取りやめ)
問 13 当社は3月決算法人であり、令和5年 10 月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けていましたが、令和7年4月1日から適格請求書発行事業者の登録を取りやめたいと考えています。この場合、どのような手続が必要ですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者は、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」(以下「登録取消届出書」といいます。)を提出することにより、適格請求書発行事業者の登録の効力を失わせることができます(消法 57 の2⑩一)。
 なお、この場合、原則として、登録取消届出書の提出があった日の属する課税期間の翌課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります(消法 57 の2⑩一)。
 ただし、登録取消届出書を、翌課税期間の初日から起算して 15 日前の日(注)を過ぎて提出した場合は、翌々課税期間の初日に登録の効力が失われることとなります(消法 57 の2⑩一、消令 70 の5③)。
 したがって、ご質問の場合については、令和7年3月 17 日までに登録取消届出書を提出する必要があります(注)。
 なお、免税事業者が登録に係る経過措置により令和5年 10 月1日を含む課税期間以外の課税期間に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合は、適格請求書発行事業者の登録を取りやめたとしても、登録日以後2年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間について免税事業者となることはできません(28 年改正法附則 44⑤)。
 免税事業者の登録に係る経過措置の詳細については、問7《免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合》をご参照ください。

(注) 「翌課税期間の初日から起算して 15 日前の日」が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和 23 年法律第 178 号)に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は 12 月 29 日、同月 30 日若しくは同月 31 日であったとしても、これらの日の翌日とはなりません。

(参考) 課税選択届出書を提出している事業者の場合、適格請求書発行事業者の登録の効力が失われた後の課税期間について、基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下であるなどの理由により事業者免税点制度の適用を受ける(免税事業者となる)ためには、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。
 例えば、上記例1の場合(課税選択届出書を提出している法人の場合)、令和8年3月期について事業者免税点制度の適用を受けるためには、令和7年3月 31 日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。

(事業の廃止や法人の合併による消滅があった場合の手続)
問 14 事業の廃止や法人の合併による消滅があった場合の手続について教えてください。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 消費税法上、事業者が事業を廃止した場合は「事業廃止届出書」を、合併による消滅の事実があった場合は「合併による法人の消滅届出書」を、納税地を所轄する税務署長に提出する義務があります(消法 57①三、五)。
なお、「事業廃止届出書」を提出した場合は、事業を廃止した日の翌日に、「合併による法人の消滅届出書」を提出した場合は、法人が合併により消滅した日に適格請求書発行事業者の登録の効力が失われます(消法 57 の2⑩、基通1-7-6、1-7-7)。

(注) これらの届出書を提出していない場合であっても、税務署長は、事業を廃止したと認められる場合、合併により消滅したと認められる場合に適格請求書発行事業者の登録を取り消すことができます(消法 57 の2⑥)。

(相続)
問 15 適格請求書発行事業者の登録を受けていた親から相続を受け、事業を承継したのですが、適格請求書等保存方式において必要となる手続及び適格請求書発行事業者の登録の効力について教えてください。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
1  令和5年 10 月1日より前に死亡した場合
 令和5年 10 月1日から登録を受けることとされていた事業者が、令和5年 10 月1日より前に死亡した場合は、登録の効力は生じません。したがって、相続により事業を承継した相続人が、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、登録申請書を提出する必要があります(相続人が既に登録申請書を提出していた場合を除きます。)。
 なお、登録申請を行った事業者が死亡した場合は、相続人は、「個人事業者の死亡届出書」を提出いただきますようお願いします。

2  令和5年 10 月1日以後に死亡した場合
 令和5年 10 月1日以後に適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が死亡した場合、その相続人は「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があり、届出書の提出日の翌日又は死亡した日の翌日から4月を経過した日のいずれか早い日(※)に登録の効力が失われます(消法 57 の3①②)。
 また、相続により事業を承継した相続人が、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、相続人は登録申請書の提出が必要となります(相続人が既に登録を受けていた場合を除きます。)。
 なお、相続により適格請求書発行事業者の事業を継承した相続人の相続のあった日の翌日から、その相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けた日の前日又はその相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から4月を経過する日のいずれか早い日までの期間については、相続人を適格請求書発行事業者とみなす措置(※)が設けられており、この場合、被相続人の登録番号を相続人の登録番号とみなすこととされています(消法 57 の3③)。
 登録申請書の提出から登録通知を受けるまでには、その審査等に一定の期間を要しますので、相続により事業を承継した相続人が適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、お早めに登録申請書をご提出ください。

(※)相続人を適格請求書発行事業者とみなす措置の適用がある場合、その措置の適用がある期間は被相続人の登録は有効です。

(登録の取消し)
問 16 適格請求書発行事業者の登録が取り消される場合はありますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 税務署長は、以下の事業者の区分に応じ、それぞれ次の場合に適格請求書発行事業者の登録を取り消すことができます(消法 57 の2⑥)。

【特定国外事業者以外の事業者である場合】
 ①  1年以上所在不明であること
 ②  事業を廃止したと認められること
 ③  合併により消滅したと認められること
 ④  納税管理人を定めなければならない事業者が、納税管理人の届出をしていないこと
 ⑤  消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと
 ⑥  登録拒否要件に関する事項について、虚偽の記載をした申請書を提出し、登録を受けたこと このうち、①「1年以上所在不明であること」における「所在不明」については、例えば、消費税の申告書の提出がないなどの場合において、文書の返戻や電話の不通をはじめとして、事業者と必要な連絡が取れないときなどが該当します。
 なお、消費税法上、事業者に、②事業の廃止の事実があった場合は「事業廃止届出書」を、③合併による消滅の事実があった場合は「合併による法人の消滅届出書」をそれぞれ提出する義務があります(これらの届出書の提出により登録は失効します。)(消法57①三、五、消法 57 の2⑩)。

【特定国外事業者である場合】
 ①  事業を廃止したと認められること
 ②  合併により消滅したと認められること
 ③  期限内申告書の提出期限までに、消費税に関する税務代理の権限を有することを証する書面が提出されていないこと
 ④  納税管理人を定めなければならない事業者が、納税管理人の届出をしていないこと
 ⑤  消費税につき期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由がないと認められること
 ⑥  現に国税の滞納があり、かつ、その滞納額の徴収が著しく困難であること
 ⑦  消費税法の規定に違反して罰金以上の刑に処せられたこと
 ⑧  登録拒否要件に関する事項について、虚偽の記載をした申請書を提出し、登録を受けたこと

(適格請求書発行事業者が免税事業者となる場合)
問 17 当社は、適格請求書発行事業者の登録を受けています。翌課税期間の基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下ですが、当社は、免税事業者となりますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 その課税期間の基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下の事業者は、原則として、消費税の納税義務が免除され、免税事業者となります。
 しかしながら、適格請求書発行事業者は、その基準期間における課税売上高が 1,000 万円以下となった場合でも免税事業者となりません(消法9①、基通1-4-1の2)。したがって、適格請求書発行事業者である貴社は、翌課税期間に免税事業者となることはありません。

(登録番号の構成)
問 18 登録番号は、どのような構成ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 登録番号(注1)の構成は、次のとおりです(基通1-7-2)。
 ①  法人番号を有する課税事業者
  「T」(ローマ字)+法人番号(数字 13 桁)
 ②  ①以外の課税事業者(個人事業者、人格のない社団等)
  「T」(ローマ字)+数字 13 桁(注2)

(注)
 1  一度付番された登録番号は、変更することはできません。
 2  13 桁の数字には、マイナンバー(個人番号)は用いず、法人番号とも重複しない事業者ごとの番号となります。

(参考) 登録番号の記載例
 ◼  T1234567890123
 ◼  T-1234567890123
 ※  請求書等への表記に当たり、半角・全角は問いません。

Ⅱ 適格請求書発行事業者の登録制度
(2 公表等)
(適格請求書発行事業者の情報の公表方法)
問 19 適格請求書発行事業者の情報は、どのような方法で公表されますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者の情報(登録日など適格請求書発行事業者登録簿に登載された事項)は、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において公表されます(消法 57 の2④➃、消令70 の5②)。また、適格請求書発行事業者の登録が取り消された場合又は効力を失った場合、その年月日が「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において公表されます。具体的な公表情報及び公表イメージについては、次のとおりです。
 ⑴  法定の公表事項(消法 57 の2④➃、消令 70 の5①)
 ①  適格請求書発行事業者の氏名※又は名称
 ②  法人(人格のない社団等を除きます。)については、本店又は主たる事務所の所在地
 ③  特定国外事業者以外の国外事業者については、国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地
 ④  登録番号
 ⑤  登録年月日
 ⑥  登録取消年月日、登録失効年月日
 ※  個人事業者の氏名について、「住民票に併記されている外国人の通称」若しくは「住民票に併記されている旧氏(旧姓)」を氏名として公表することを希望する場合又はこれらを氏名と併記して公表することを希望する場合は、登録申請書の他に、必要事項を記載した「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」をご提出ください。
 なお、住民基本台帳法令の規定により、やむを得ず住民票に旧姓を併記できない場合には、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」に戸籍謄本を添付して提出することにより、旧姓(氏)での公表をすることができます。
 また、既に公表サイトに氏名が公表されている方についても同様の手続により旧姓(氏)での氏名の公表が可能です(既に付されている登録番号は変更されませんのでご留意ください。)。

(注)
 1  住民基本台帳法令の規定により、やむを得ず住民票に旧姓を併記できない場合とは、例えば、過去に住民票に旧姓を併記する手続を行い、その併記した旧姓を削除した後、再度、氏に変更(婚姻や離婚)がないにもかかわらず、旧姓を併記しようとする場合が該当します。
 2  氏名に代えて旧姓を使用するケースにおいては、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の記載に当たっては、「氏名に代えて公表」にチェックを入れていただくようお願いします。
 3  e-Tax により届出書や申出書を提出する場合は、住民票の提出は不要ですが、戸籍謄本の添付をされる方については、管轄のインボイス登録センターに郵送いただくようお願いします。
 4  「住民票への旧姓の併記方法」や「住民票に旧姓を併記できない場合」の詳細については、お住いの市区町村にお尋ねください。

 ⑵  本人の申出に基づき追加で公表できる事項
次の①、②の事項について公表することを希望する場合には、必要事項を記載した「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」をご提出ください。
 ①  個人事業者の「主たる屋号」、「主たる事務所の所在地等」
 ②  人格のない社団等の「本店又は主たる事務所の所在地」
 ⑵  本人の申出に基づき追加で公表できる事項
次の①、②の事項について公表することを希望する場合には、必要事項を記載した「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」をご提出ください。
 ①  個人事業者の「主たる屋号」、「主たる事務所の所在地等」
 ②  人格のない社団等の「本店又は主たる事務所の所在地」

(適格請求書発行事業者公表サイト)
問 20 適格請求書発行事業者公表サイトでの適格請求書発行事業者の公表情報の確認方法について教えてください。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」では、交付を受けた請求書等に記載された登録番号を基にして検索する方法により、適格請求書発行事業者の氏名・名称や登録年月日などの公表情報を確認することができます。
 なお、相手方から交付を受けた請求書等に記載がある登録番号に基づき、検索を行った結果、該当する公表情報がない場合(交付を受けた請求書等の記載内容と異なる情報が表示される場合を含みます。)、請求書等に記載された登録番号が誤っている可能性などがありますので、まずは、相手方にご確認いただきますようお願いします。

(参考) 「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」には、登録番号を基にした検索のほか、システム間連携のためのWeb-API 機能や公表情報に係るデータのダウンロード機能があります。これらの機能の詳細については、同サイトで仕様公開しておりますので、ご確認ください。

(登録番号の効率的な確認方法)
問 21 当社は取引先が多いため、登録番号の有効性の確認を効率的に実施したいと考えています。どのような方法がありますか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 登録番号の有効性を効率的に確認する方法として、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」の Web-API 機能又は公表情報ダウンロード機能を利用する、あるいはこれらの機能に対応している会計ソフト等を導入するなどの方法が考えられます。

 ①  Web-API 機能
 利用者の皆様が保有するシステムからインターネットを経由して、簡単なリクエストを送信していただくことで、指定した登録番号で抽出した情報、指定した期間で抽出した更新(差分)情報を取得するための、システム間連携インターフェース(データ授受の方式)を提供するものです。

 ②  公表情報ダウンロード機能
 前月末時点に公表しているデータの最新情報を、全件データファイルとして提供するとともに、新規に適格請求書発行事業者として登録された事業者の情報のほか、公表情報の変更・追加や失効年月日等の情報をダウンロードすることができます。

 ※  個人事業者については氏名等の情報を削除して提供しています。
なお、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」の検索機能(登録番号を利用して適格請求書発行事業者の情報を表示する機能をいいます。)に対して、いわゆるスクレイピングなど、プログラムを用いて公開している情報を取得する行為については、本サイトの利用規約上禁止しています。

(適格請求書発行事業者公表サイトの検索結果とレシート表記が異なる場合)
問 21-2 屋号が記載されたレシート(適格簡易請求書)の交付を受けました。当該レシートに記載された登録番号に基づき、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」にて検索した結果、事業者の氏名又は名称のみが表示され、屋号は表示されませんでした。このような場合、当社は仕入税額控除の適用を受けてよいのでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書(以下「適格請求書等」といいます。)に記載する氏名・名称については、電話番号等により適格請求書を交付する事業者を特定することができれば、屋号や省略した名称などの記載で差し支えないこととされています(屋号による記載については、問 55《屋号による記載》をご参照ください。)。
 したがって、その氏名・名称の代わりに屋号が記載された適格請求書等を受領した事業者においては、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で当該適格請求書等に記載された登録番号を基にして検索したとしても、その結果として表示された事業者が当該適格請求書等に記載された屋号の事業者と同一であるか明らかとならないことも考えられます。
 この点、本サイトは、取引先から受領した請求書等に記載されている登録番号が取引時点において有効なものかを確認するために利用されるものであるため、その登録番号の有効性が確認できれば、一義的には有効な適格請求書等として取り扱うこととして差し支えありません(注)。

(注) 売手が適格請求書発行事業者以外の者であるにもかかわらず、自らの登録番号と誤認されるような英数字が記載されているような場合には、当該請求書等は適格請求書等に該当しないこととなりますが、適格請求書発行事業者以外の者がそうした適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類を交付することや、適格請求書発行事業者が偽りの記載をした適格請求書又は適格簡易請求書を交付すること、それらの書類の記載事項に係る電磁的記録を提供することは禁止されており、罰則(1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金)の適用対象となります(消法 57 の5、65)。また、そうした書類や電磁的記録を受領した事業者において、災害その他やむを得な い事情により、請求書等の保存をすることができなかったことを証明した場合には、帳簿や請求書等の保存がなくとも仕入税額控除の適用を受けることが可能です(消法 30⑦但書)。

(参考)適格請求書を発行する事業者における対応例
 国税庁適格請求書発行事業者公表サイトの検索結果として表示される事業者名とレシートに表記した屋号等が異なる場合、売手である適格請求書発行事業者において、顧客から問合せを受けることも考えられます。
 こうした問合せに対する対応としては、例えば、個人事業者については、申出により「主たる屋号」を公表することが考えられます。
 また、法人については「主たる屋号」の公表ができる仕組みとはなっていませんが、例えば、レシートに、屋号に加えて「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」に掲載されている運営会社等の名称を併記することや、店頭に「公表サイトには運営会社等の名称(○○(株))が表示される」旨を掲示する等の方法によることもご検討ください。

(適格請求書発行事業者の公表情報の変更等)
問 22 適格請求書発行事業者の公表情報に変更等があった場合の手続について教えてください。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者の氏名又は名称、法人の本店所在地などの法定の公表事項に変更があった場合は、適格請求書発行事業者は、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」を提出する必要があり、これにより、適格請求書発行事業者登録簿の情報及び公表情報が変更されます(消法 57 の2⑧)。
 この場合、法人である適格請求書発行事業者においては、変更事項が「名称」又は「本店又は主たる事務所の所在地」であり、その異動事項について記載した異動届出書の提出を行っている場合は、「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」の提出を省略して差し支えありません。
 また、次の場合には、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」を提出する必要があり、これにより、公表情報が変更されます。
 ◼  個人事業者の氏名について「住民票に併記されている外国人の通称」若しくは「住民票に併記されている旧氏(旧姓)」を公表している場合又はこれらを氏名と併記して公表している場合に、その公表事項等を変更するとき
 ◼  個人事業者等が主たる屋号や主たる事務所の所在地を公表している場合に、その情報に変更等があったとき又は公表をしないこととするとき
 なお、通知を受けた適格請求書発行事業者の登録番号は変更することはできません。
 旧姓について、住民基本台帳法令の規定により、やむを得ず住民票に旧姓を併記できない場合には、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」に戸籍謄本を添付して提出することにより、旧姓(氏)での公表をすることができます。既に公表サイトに氏名が公表されている方についても同様の手続により旧姓(氏)での氏名の公表が可能です(既に付されている登録番号は変更されませんのでご留意ください。)。

(注)
 1  住民基本台帳法令の規定により、やむを得ず住民票に旧姓を併記できない場合には、例えば、過去に住民票に旧姓を併記する手続を行い、その併記した旧姓を削除した後、再度、氏に変更(婚姻や離婚)がないにもかかわらず、旧姓を併記しようとする場合が該当します。
 2  氏名に代えて旧姓を使用するケースにおいては、「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」の記載に当たっては、「氏名に代えて公表」にチェックを入れていただくようお願いします。
 3  e-Tax により届出書や申出書を提出する場合は、住民票の提出は不要ですが、戸籍謄本の添付をされる方については、管轄のインボイス登録センターに郵送いただくようお願いします。
 4  「住民票への旧姓の併記方法」や「住民票に旧姓を併記できない場合」の詳細については、お住いの市区町村にお尋ねください。
 「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」及び「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」は、e-Tax を利用して提出することができますのでぜひご利用ください。また、郵送により提出する場合の送付先は、各国税局のインボイス登録センターとなります。届出の概要については、問2《登録の手続》をご参照ください。

Ⅲ 適格請求書発行事業者の義務等
(1 総論)
(適格請求書発行事業者の適格請求書の交付義務)
問 23 適格請求書発行事業者は、どのような場合に適格請求書の交付義務が課されるのですか。また、交付義務が課されない場合はあるのですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等(注1、2)を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)からの求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されています(消法 57 の4①)。
 なお、適格請求書発行事業者は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供することができます(消法 57 の4⑤)。
 ただし、次の取引は、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除されます(消令 70 の9②)(適格請求書の交付義務が免除される取引の詳細については、問 41 から問 47 までをご参照ください。)。
 ①  3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
 ②  出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
 ③  生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
 ④  3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
 ⑤  郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

(注)
 1  課税資産の譲渡等に係る適用税率は問いませんので、標準税率の取引のみを行っている場合でも、取引の相手方(課税事業者に限ります。)から交付を求められたときは、適格請求書の交付義務があることにご留意ください。
 2  免税取引、非課税取引及び不課税取引のみを行った場合については、適格請求書の交付義務は課されません。

(適格簡易請求書の交付ができる事業)
問 24 適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付できるのは、どのような場合ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う次の事業を行う場合には、適格請求書に代えて、適格請求書の記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができます(消法 57 の4②、消令 70 の 11)。
 また、適格簡易請求書についても、その交付に代えて、その記載事項に係る電磁的記録を提供することができます(消法57の4⑤)。
 ①  小売業
 ②  飲食店業
 ③  写真業
 ④  旅行業
 ⑤  タクシー業
 ⑥  駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)
 ⑦  その他これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業

 ①から⑤までの事業については、「不特定かつ多数の者に対するもの」との限定はありませんので、例えば、小売業として行う課税資産の譲渡等は、その形態を問わず、適格簡易請求書を交付することができます。
 また、「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」であるかどうかは、個々の事業の性質により判断します。例えば、以下のような事業が該当することとなります。
 ◼  資産の譲渡等を行う者が資産の譲渡等を行う際に相手方の氏名又は名称等を確認せず、取引条件等をあらかじめ提示して相手方を問わず広く資産の譲渡等を行うことが常態である事業
 ◼  事業の性質上、事業者がその取引において、氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行っている事業(取引の相手方について資産の譲渡等を行うごとに特定することを必要とし、取引の相手方ごとに個別に行われる取引であることが常態である事業を除きます。)

(適格簡易請求書を交付することができる事業の具体例)
問 24-2 当団体は、多数の会員を有する事業者団体です。当団体は、定期的に会員の中から広く参加者を募ってセミナーを開いており、セミナー当日に参加者からその対価を徴収しています。このセミナーについては、適格簡易請求書の交付対象になりますか。なお、参加者は毎回多数に上るため、参加費を徴収する際には「●●会会員様」という宛名を事前に印刷した領収書、あるいは宛名のない領収書を配布しています。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書発行事業者が、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業を行う場合には、適格請求書に代えて、記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができます(消法 57 の4②、消令 70 の 11)。
 この適格簡易請求書の交付ができる事業は、小売業や飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業及び駐車場業(不特定かつ多数の者に対するものに限ります。)の他、「これらの事業に準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業」についても対象になりますが、当該事業に該当するかは、個々の事業の性質により判断されます。
 「不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行うもの」には、その取引に当たり、相手方の氏名等を確認するものであったとしても、相手方を問わず広く一般を対象に資産の譲渡等を行う、ホテル・旅館等の宿泊サービスや航空サービス、レンタカー事業なども含まれます。
 他方、通常の事業者間取引や、消費者を含めた多数の者に対して行う取引であったとしても、その相手方を一意に特定したうえで契約を行い、その契約に係る取引の内容に応じて個々に課税資産の譲渡等を行うようなもの(電気・ガス・水道水の供給、電話料金など)は、一般的には、適格簡易請求書の交付ができる事業には当たりません。
 ご質問のセミナーについては、その参加者が貴団体の会員に限られ、一定の対象者に対して取引を行うものではありますが、相手方を一意に特定したうえで開催されるものではなく、また、対象者も多数に上るものであることから、適格簡易請求書の交付を行う事業に該当することとなります。
 これにより、領収書に「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載は不要となりますので、あらかじめ「●●会会員様」との宛名を印刷した領収書を適格簡易請求書として交付することも認められます。また、仮に宛名として会員名を記載した場合であっても、適格簡易請求書であることには変わりはないため、消費税額等又は適用税率のいずれかの記載があれば問題ないことになります。

(消費者に限定した取引についての適格請求書の交付義務)
問 24-3 当社は適格請求書発行事業者です。当社の提供しているサービスは、利用規約においてその対象を消費者に限定しているため、課税事業者から適格請求書の求めがあったとしても適格請求書の交付は行わないこととしてよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書発行事業者は、課税事業者の求めに応じて、適格請求書の交付義務が生じます(消法 57 の4①)。
 そのため、消費者に対しては適格請求書を交付する義務は生じませんので、貴社の利用規約等において提供するサービスの対象を消費者に限定し、実際に事業者による利用がないのであれば、適格請求書を交付する必要はありません。
 しかしながら、そうした制限にもかかわらず、実際に当該サービスを利用した課税事業者から適格請求書の交付を求められた場合には、利用規約等にかかわらず、消費税法上、貴社にその交付義務が生じることとなります。
 その際、貴社の提供するサービスが不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業である場合には、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することが可能です(消法 57 の4②、消令70 の 11)。

(適格請求書の様式)
問 25 適格請求書の様式は、法令又は通達等で定められていますか。【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書の様式は、法令等で定められていません。
 適格請求書として必要な次の事項が記載された書類(請求書、納品書、領収書、レシート等)であれば、その名称を問わず、適格請求書に該当します(消法57の4①、基通1-8-1)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日(※)
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 ※  課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税資産の譲渡等につき適格請求書をまとめて作成する場合には、当該一定の期間を記載することができます。
 なお、上記のとおり、適格請求書はその記載事項を満たす限り、様式や名称を問いませんので、通常、代金の支払いを受ける際に適格請求書の記載事項を満たした領収書等を交付することとしている事業形態であっても、それとは別に適格請求書の記載事項を満たした「領収書」以外の書類(例えば、請求書や納品書、明細書など)を交付するといった対応も考えられます。

(手書きの領収書)
問 26 手書きの領収書を適格請求書として交付することはできますか。【令和6年4月改訂】

【答】
 手書きの領収書であっても、適格請求書として必要な次の事項が記載されていれば、適格請求書に該当します(消法57の4①、基通1-8-1)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
 なお、適格簡易請求書を交付する場合の記載事項については、問 58《適格簡易請求書の記載事項》を、手書きの領収書による適格簡易請求書の交付については、問 58-2《手書きの領収書による適格簡易請求書の交付》を、それぞれご参照ください。

(免税事業者の交付する請求書等)
問 26-2 私は、免税事業者である個人事業者です。適格請求書等保存方式においては適格請求書発行事業者しか適格請求書を交付できないとのことですが、免税事業者はこれまで交付していたような請求書や領収書等を交付することはできないのでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書等保存方式において、適格請求書を交付することができるのは適格請求書発行事業者に限られます(消法 57 の4①)。
 他方、適格請求書発行事業者以外の者であっても、適格請求書に該当しない(適格請求書の記載事項を満たさない)請求書や領収書等の交付や、それらに記載すべき事項に係る電磁的記録の提供を行うことは、これまでと同様に可能です(注1)。
 ただし、適格請求書発行事業者以外の者が、適格請求書発行事業者が作成した適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類(注2)を交付することや、当該書類の記載事項に係る電磁的記録を提供することは禁止されており、罰則(1年以下の懲役又は 50 万円以下の罰金)の適用対象となります(消法 57 の5、65)。
 なお、免税事業者が請求書等に消費税相当額を記載したとしても、それが適格請求書等と誤認されるおそれのあるものでなければ、基本的に罰則の適用対象となるものではありません。また、免税事業者であっても、仕入れの際に負担した消費税相当額を取引価格に上乗せして請求することは適正な転嫁として、何ら問題はありません。

(注)
 1  適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額相当額の一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 52、53)が、当該経過措置の適用を受けるためには、区分記載請求書の記載事項を満たした書類等の保存が求められていますので、取引の相手方からそうした書類等の作成・交付を求められることも考えられます。なお、保存されている書類が消費税法上の適格請求書か区分記載請求書であるかは、所得税・法人税の必要経費性・損金性に影響を与えるものではありません。
 2  適格請求書又は適格簡易請求書であると誤認されるおそれのある表示をした書類とは、例えば、登録番号(T+13 桁の数字)と類似した英数字や、自身のものではない登録番号を、自らの「登録番号」として記載した書類などをいいます。

(参考)免税事業者等からの仕入れに係る経過措置の詳細については、問 113《免税事業者等からの仕入れに係る経過措置》をご参照ください。

(適格返還請求書の交付義務)
問 27 返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格請求書発行事業者は、何か対応が必要ですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書の交付義務が課されています(消法57の4③)。適格返還請求書の記載事項については、問60から問62までをご参照ください。
 ただし、次の取引は、適格返還請求書の交付義務が免除されます(消令70の9③一)。
 ①  3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
 ②  出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
 ③  生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
 ④  3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
 ⑤  郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
 上記のほか、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満(注)である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。

(注) ここでいう1万円未満の判定単位については、問 28《少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位》をご参照ください。
 なお、適格請求書発行事業者の登録を受ける前に行った課税資産の譲渡等について、登録を受けた以後に売上げに係る対価の返還等を行う場合には、適格返還請求書の交付義務はありません(基通1-8-18)。

(少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位)
問 28 売上げに係る対価の返還等に係る税込金額が1万円未満である場合には、当該対価返還等に関し適格返還請求書を交付する義務が免除されるとのことですが、1万円未満の対価返還等とは、どのような単位となりますか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法57の4③、消令70の9③二)。
 また、売上げに係る対価の返還等とは、事業者の行った課税資産の譲渡等に関し、返品を受け又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、売上金額の全部若しくは一部の返還又は当該売上げに係る売掛金等の債権の額の全部若しくは一部の減額を行うことをいいます(消法38①)。
 したがって、このような売上金額の返還や債権の減額の金額が1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります。
 具体的には、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとに減額した金額により判定することとなります(基通1-8-17)。

例:
 ①  500,000円の請求に対し、買手は振込手数料相当額440円減額した499,560円を支払(売手は、440円を対価の返還等として処理)
 ~ 1万円未満の対価返還等であり、適格返還請求書の交付義務は免除される
 ②  400,000円の請求に関し、1商品当たり100円のリベートを後日支払(合計20,000円)
 ~ 1万円以上の対価返還等であり、適格返還請求書の交付義務は免除されない

(注) この1万円かどうかの判定は、値引き等の金額に標準税率が適用されたものと軽減税率が適用されたものが含まれている場合であったとしても、適用税率ごとの値引き等の金額により判定するものではなく、返還した金額や値引き等の対象となる請求や債権の単位ごとの減額金額により判定することとなります。

(売手が負担する振込手数料相当額)
問 29 売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うことで売手が負担する商慣行があります。この売手が負担する振込手数料相当額について、売手が代金請求の際に既に適格請求書を交付している場合に、必要となる対応を教えてください。【令和5年4月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 ご質問の場合、取引当事者間の契約関係等により、次のように対応が分けられます。

1  売手が振込手数料相当額を売上値引きとする場合
 売手は、振込手数料相当額について売上値引きとする場合、売上げに係る対価の返還等を行っていることとなりますので、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられますので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。
 ご質問の場合は、売上値引きの金額が 440 円であるため、当該売上値引きに係る適格返還請求書の交付は必要ありません。
 なお、売手が買手に対して売上げに係る対価の返還等を行った場合の適用税率は、売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の適用税率に従います。そのため、軽減税率(8%)対象の課税資産の譲渡等を対象とした振込手数料相当額の売上値引きには、軽減税率(8%)が適用されます。

2  振込手数料相当額について、売手が買手から「代金決済上の役務提供(支払方法の指定に係る便宜)」を受けた対価とする場合
 売手の買手に対する課税資産の譲渡等と、買手の売手に対する代金決済上の役務の提供は、それぞれ異なる課税資産の譲渡等となります。
 したがって、売手は、請求金額から差し引かれた振込手数料相当額について、仕入税額控除の適用を受けるためには、買手から交付を受けた適格請求書の保存が必要となります。
 なお、売手は、請求金額から差し引かれた振込手数料相当額について、仕入明細書等を作成し、買手の確認を受けて仕入税額控除を行うこともできます(消法 30⑨三)。

(注)
 1  一定規模以下の事業者については、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 53 の2、改正令附則 24 の2①)。
 詳細については、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。
 2  振込手数料等の適格請求書の保存方法については、問 103-2《金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る適格請求書の保存方法》をご参照ください。

3  買手が売手のために金融機関に対して振込手数料を立替払したものとする場合
 買手が売手に代わって振込手数料を立替払したものとする場合、売手は、買手が金融機関から受け取った振込手数料に係る適格請求書及び買手が作成した立替金精算書等の交付を受け、振込手数料に係る仕入税額控除を行うことになります(この場合、買手が請求金額から差し引く金額が金融機関の振込手数料と同額である必要があります。)。
 なお、買手が金融機関のATMを使って振込手続を行った場合、当該ATM手数料は3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等(以下「自動販売機特例」といいます。)の対象となりますので、買手が金融機関から受け取った適格請求書及び買手が作成した立替金精算書等の保存は不要となります(売手は、買手が差し引いた金額が振込手数料であること及び立替えでの支払が金融機関のATMでの振込みであることを確認した上で、一定の要件の下で帳簿のみの保存により仕入税額控除を行うことが可能となります。)。
 立替金については、問 94《立替金》を、自動販売機特例については、問 41《適格請求書の交付義務が免除される取引》及び問 47《自動販売機及び自動サービス機の範囲》を、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の要件については、問 110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》を、それぞれご参照ください。

(注) 一定規模以下の事業者については、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 53 の2、改正令附則 24 の2①)。
 詳細については、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。

(売手が負担する振込手数料相当額に係る経理処理の変更)
問 30 売手からの代金請求について、取引当事者の合意の下で買手が振込手数料相当額を請求金額から差し引いて支払うことで売手が当該振込手数料相当額を負担する場合について、当社は、当該負担額を支払手数料として経理処理していましたが、適格請求書等保存方式の開始後においては、売上げに係る対価の返還等として経理処理することを考えています。この場合、どのような対応が必要となりますか。【令和5年4月追加】【6年4月改訂】

【答】
 売手が負担する振込手数料相当額に係る経理処理については、当該振込手数料相当額を売上げに係る対価の返還等として処理する場合又は支払手数料として処理する場合(立替金とする場合も含みます。)があります(詳細については、問29《売手が負担する振込手数料相当額》をご参照ください。)。
 ご質問のように、支払手数料としての経理処理を適格請求書等保存方式の開始後、売上げに係る対価の返還等としての経理処理に変更することは問題なく、当該振込手数料相当額を売上げに係る対価の返還等として処理する場合、原則として、買手に対して適格返還請求書を交付する必要がありますが、一般的には、こうした振込手数料相当額は1万円未満となると考えられますので、その場合は適格返還請求書の交付義務が免除されることとなります。
 なお、売手が買手に対して売上げに係る対価の返還等を行った場合の適用税率は、売上げに 係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の適用税率に従います。そのため、軽減税率(8%)対象の課税資産の譲渡等を対象とした振込手数料相当額の売上値引きには、軽減税率(8%)が適用されます。
 また、経理処理を支払手数料としつつ、消費税法上、売上げに係る対価の返還等とすることもできますが、この場合であっても、売手が買手に対して売上げに係る対価の返還等を行った場合の適用税率は、売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等の適用税率に従うことから、適用税率に応じた区分のほか、帳簿に売上げに係る対価の返還等に係る事項を記載する必要があります。
 この点、支払手数料のコードを売上げに係る対価の返還等と分かるように別に用意するといった、通常の支払手数料と判別できるように明らかにする対応が考えられます。

(適格請求書に係る電磁的記録による提供)
問 31 当社は、請求書を取引先にインターネットを通じて電子データにより提供していますが、この請求書データを適格請求書とすることができますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)から求められたときは、適格請求書を交付する必要がありますが、交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供することができます(消法57の4①⑤)。
 したがって、貴社は、請求書データに適格請求書の記載事項を記録して提供することにより、適格請求書の交付に代えることができます。
 ただし、適格請求書発行事業者が提供した電子データを電磁的に保存しようとする場合には一定の要件を満たした状態で保存する必要がありますが、その具体的な内容については、問81《適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法》をご参照ください。

(参考) 電磁的記録による提供方法としては、光ディスク、磁気テープ等の記録用の媒体による提供のほか、例えば、次の方法があります(基通1-8-2)。
 ①  EDI取引(注)における電子データの提供
 ②  電子メールによる電子データの提供
 ③  インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じた電子データの提供

(注) EDI(Electronic Data Interchange)取引とは、異なる企業・組織間で商取引に関連するデータを、通信回線を介してコンピュータ間で交換する取引等をいいます。

(交付した適格請求書に誤りがあった場合の対応)
問 32 交付した適格請求書の記載事項に誤りがあった場合、何か対応が必要ですか。【令和5年10 月改訂】

【答】
 売手である適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書(電磁的記録により提供を行った場合も含みます。)の記載事項に誤りがあったときは、買手である課税事業者に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければなりません(消法57の4④⑤)。
 なお、買手である課税事業者が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けたものについても、仕入税額控除の適用のために保存が必要な請求書等に該当しますので(消法30⑨三)、買手において適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手である適格請求書発行事業者に確認を求めることも考えられます。この場合は、売手である適格請求書発行事業者は、改めて修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなくても差し支えありません。
 買手である課税事業者の対応は、問92《交付を受けた適格請求書に誤りがあった場合の対応》をご参照ください。

(修正した適格請求書の交付方法)
問33 交付した適格請求書等に誤りがあった場合に交付する修正した適格請求書等の交付方法について教えてください。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者が、適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付した場合(電磁的記録により提供を行った場合を含みます。)において、これらの書類の記載事項に誤りがあったときには、これらの書類を交付した相手方に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければなりません(消法57の4④⑤)。
 これらの交付方法は、例えば、
 ◼  誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項の全てを記載したものを交付する方法
 ◼  当初に交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したものを交付する方法
 などが考えられます。

(継続した取引における修正した適格請求書等の交付方法)
 問 34 当社は機械用部品の卸売業者です。販売先の小売業者に対しては、1月ごとに請求書を交付しており、単価や数量誤りなどにより当月の請求金額が変わる場合には、以下のとおり、継続的に翌月の請求書において前月の過少請求又は過大請求分を加減算し調整しています。
 以下の請求書について登録番号等を追加することで適格請求書の記載事項を満たす場合には、当月分の請求書で前月分の過少請求等を調整する記載は認められますか。【令和4年 11月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者が、適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付した場合(電磁的記録により提供を行った場合を含みます。)において、これらの書類の記載事項に誤りがあったときには、これらの書類を交付した相手方に対して、修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書を交付しなければなりません(消法57の4④⑤)。
 これらの交付方法として、
 ◼  誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項の全てを記載したものを交付する方法
 ◼  当初に交付したものとの関連性を明らかにし、修正した事項を明示したものを交付する方法
 などが考えられます(具体的な記載方法については、問33《修正した適格請求書の交付方法》をご参照ください。)。
 一方で、ご質問における過少請求等の調整に関しては、単に誤りを修正するもののほか、売上げに係る対価の返還等に該当するものも含まれるものと考えられます。当該対価の返還等については、適格返還請求書を交付することとなりますが、適格返還請求書と適格請求書は一の書類で交付することができます(具体的な方法については、問62《適格請求書と適格返還請求書を一の書類で交付する場合》をご参照ください。)。
 したがって、ご質問のような過少請求等について、翌月の請求書等において継続的に調整している場合には、当該調整(翌月の請求書等において、過少請求等に関する金額を当該請求書における課税資産の譲渡等の対価の額から直接加減算した金額及びその金額に基づき計算した消費税額等を記載する方法)により修正した適格請求書の交付があったものとして取り扱って差し支えありません。
 ご質問の場合における当月分の適格請求書等に記載すべき「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」及び「税率ごとに区分した消費税額等」は、前月分の過少請求等について加減算を行った調整後の金額となります。

(値増金に係る適格請求書の交付)
問 35 当社の行う建設工事等について、その建設工事等の引渡しの日において当該建設工事等の請負代金に係る請求書を交付しています。一方、建設工事等の請負契約に伴い収受する値増金については、相手方との協議によりその収入すべきことが確定することから、当初交付した請求書とは別に値増金に係る請求書を交付しています。この場合、それぞれ交付している請求書を適格請求書とすることで問題ないですか。【令和4年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 建設工事等の請負契約に伴い収受する値増金は、当該建設工事等の対価の一部を構成するものですが、その金額の確定時期は区々であり、必ずしも建設工事等の引渡しの時までに確定するものではありません。
 そのため、相手方との協議によりその収入すべきことが確定する値増金については、その収入すべき金額が確定した日の属する課税期間の課税標準額に算入することとしています(基通 9-1-7)。
 このように、ご質問の値増金は、相手方との協議によりその収入すべきことが確定した日の属する課税期間の課税標準額に算入することとしているため、当該値増金が建設工事等の対価の一部を構成するものであったとしても、当初交付している適格請求書とは別に当該値増金に係る適格請求書を交付することとなります。
 この場合における適格請求書の次の記載事項は、当該値増金に係る金額を基礎として記載することとなります。
 ①  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ②  税率ごとに区分した消費税額等

(参考) 協同組合等において農産物の買取販売に係る販売代金の価格修正として組合員が受け取る事業分量配当金についても同様です。

(登録日から登録の通知を受けるまでの間の取扱い)
問 36 適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者に対しては、その旨が書面等で通知されるそうですが、登録日から通知を受けるまでの間の取引については、既に請求書(区分記載請求書等の記載事項である「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」を記載しており、「税率ごとに区分した消費税額等」の記載はありません。)を交付しています。改めて、適格請求書の記載事項を満たした書類を交付しなければいけませんか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 ご質問の場合、登録日から登録の通知を受けるまでの間の取引について、相手方に交付した請求書は、登録番号、税率ごとに区分した消費税額等の記載がなく適格請求書の記載事項を満たしていません。
 この場合、通知を受けた後、登録番号や税率ごとに区分した消費税額等を記載し、適格請求書の記載事項を満たした請求書を改めて相手方に交付する必要がありますが、通知を受けた後に登録番号などの適格請求書の記載事項として不足する事項を相手方に書面等(注)で通知することで、既に交付した請求書と合わせて適格請求書の記載事項を満たすことができます(基通 1-7-3)。
 なお、小売業等の不特定かつ多数の者に対して事業を行う場合には、事前に適格請求書の交付が遅れる旨を伝えたうえで、事業者のホームページ等において登録番号を掲示するなどにより対応することとして差し支えありません。詳細は、問37《小売店を経営する新設法人における登録の通知を受けるまでの間の適格簡易請求書の交付方法》をご参照ください。

(注) 既に交付した書類との相互の関連が明確であり、書面等の交付を受ける事業者が適格請求書の記載事項を適正に認識できるものに限ります。

(参考) 現時点における登録申請書を提出してから登録通知までに要する期間については、「インボイス制度特設サイト」に掲載していますのでご確認ください。

(小売店を経営する新設法人における登録の通知を受けるまでの間の適格簡易請求書の交付方法)
問 37 当社は、当期に新設した法人で、小売店(コンビニエンスストア)を経営しています。課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受ける旨を記載した申請書を当該課税期間の末日までに提出し、課税期間の初日から登録を受けたのですが、登録通知が届くまでの間、登録番号の記載をしていないレシートを交付していた場合、登録通知書が届いた後、どのように適格簡易請求書を交付すればよいですか。【令和5年 10 月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 新たに設立された法人が、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を、当該課税期間の末日までに提出した場合において、税務署長により適格請求書発行事業者登録簿への登載が行われたときは、その課税期間の初日において登録を受けたものとみなされます(消令 70 の4、消規 26 の4、基通1-4-7、1-4-8)。この場合、登録日(課税期間の初日)から適格請求書等を交付する義務は生じますが、通知 を受けるまでの間、適格請求書等を交付することはできませんので、売手は、例えば次のように対応することが考えられます。
 ◼  事前に適格請求書等の交付が遅れる旨を取引先に伝え、通知後に適格請求書等を交付する。
 ◼  取引先に対して、通知を受けるまでは、登録番号のない請求書等を交付し、通知後に改めて適格請求書等を交付し直す。
 ◼  取引先に対して、通知を受けるまでは、登録番号のない請求書等を交付し、その請求書等との関連性を明らかにした上で、適格請求書等に不足する登録番号を書類やメール等でお知らせする。
 他方、ご質問のように小売業等の不特定かつ多数の者に対して事業を行う場合には、上記の事後交付等の対応が困難な場合があると考えられます。そのため、小売店等を営む事業者が、不特定かつ多数の方に登録番号のないレシート等を交付している場合、事前に、適格簡易請求書の交付が遅れる旨を事業者のホームページや店頭にてお知らせした上で、例えば次のように対応することが考えられます。
 ◼  当該事業者(売手)のホームページ等において、「弊社の登録番号は『T1234…』となります。令和■年■月■日(課税期間の初日)から令和●年●月●日(通知を受けた日)までの間のレシート等をお持ちの方で仕入税額控除を行う方におきましては、当ページを印刷するなどの方法により、レシートと併せて保存してください」と掲示する。
 ◼  買手側から電話等を受け、その際に登録番号をお知らせし、買手側においてその登録番号の記録とレシート等とを組み合わせて適格簡易請求書として保存してもらう(これにより、買手は仕入税額控除を受けることができます。)。
 なお、こうした取扱いは、登録日から登録番号の通知が届いた日までにおける、経過的な取扱いとなります。したがって、お手元に登録番号の通知が届き、登録番号を記載した適格簡易請求書を交付できるようになった日以降は、記載事項を満たした適格簡易請求書を交付していただく必要がありますので、ご注意ください。

(参考) 新たに設立された法人等の登録時期の特例については、問 11《新たに設立された法人等の登録時期の特例》をご覧ください。

 登録番号のない請求書等を受領した事業者(買手)においては、申告期限後に記載事項を満たす適格請求書を受領する又は登録番号のお知らせを受けることとなった場合であっても、事前に売手が適格請求書発行事業者の登録を受ける旨を確認できたときは、登録番号のない請求書等に記載された金額を基礎として、仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。この場合には、事後的に交付された適格請求書や登録番号の通知を保存することが必要となります。
 なお、事後的に適格請求書等の交付等を受けることができなかった場合には、仕入税額控除を行った翌課税期間において、本来の控除税額との差額を調整することとして差し支えありません。

(参考) 基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が5千万円以下の事業者は、1万円未満の課税仕入れについて、適格請求書の保存がなくとも帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能とされています(少額特例)。そのため、この少額特例の適用対象となる買手においては、こうした課税仕入れについて上記のような対応は必要ありません。

(令和5年10月1日前後の取引に係る適用関係)
問 38 適格請求書等保存方式の下では、仕入税額控除の適用を受けるためには、課税仕入れ等に係る帳簿及び適格請求書等の保存が原則として必要になるとのことですが、令和5年 10 月 1日前後の取引において、売手における売上げの計上時期と買手における仕入れの計上時期が異なる場合、適格請求書等の保存の要否についてどのように考えればよいでしょうか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、適格請求書発行事業者である売手は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合、取引の相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務が課されています(消法57の4①)。
 また、課税事業者である買手は、仕入税額控除の要件として、原則として、課税仕入れ等に係る帳簿及び適格請求書等の保存を要することとなります(消法30⑦⑧⑨)。
これらについては、令和5年10月1日以後に売手が行う課税資産の譲渡等及び買手が行う課税仕入れについて適用されることとなります(28年改正法附則46①)。
 この点、同じ取引であっても、売手における売上げの計上時期と買手における仕入れの計上時期が必ずしも一致しない場合があります。
 例えば、機械装置の販売において、売手が出荷基準により令和5年9月に課税売上げを計上し、買手が検収基準により令和5年10月に課税仕入れを計上するといったことも生じます。この場合、売手においては、適格請求書等保存方式の開始前に行った取引(課税資産の譲渡等)であることから、買手から当該取引について適格請求書の交付を求められたとしても、当該取引に係る適格請求書の交付義務はありません。
 このため、買手においては、原則として、売手における課税売上げの計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が令和5年10月1日以後のものとなる取引から、仕入税額控除の適用を受けるために適格請求書等を保存する必要があります。
 なお、上記の例のように、売手における課税売上げの計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が令和5年9月となる取引については、買手は区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。

(注)
 1  令和5年10月1日前であっても、適格請求書の記載事項を満たした請求書等を交付することとしても問題ありません。詳細は、問76《令和5年9月30日以前の請求書への登録番号の記載》をご参照ください。
 2  電気料金等のように検針日基準で売上げ及び仕入れを計上している場合であって、当該検針した期間に令和5年10月1日を含んでいたとしても、検針日により売上げ及び仕入れを計上している限り、令和5年10月1日前後の取引を厳密に区分する必要はありません。
 3  未成工事支出金及び建設仮勘定に係る課税仕入れの計上時期について、建設工事等の目的物の引渡し又は完成の日の属する課税期間の課税仕入れとすることができます(基通11-3-5、11-3-6)。この場合、当該引渡し等の日(課税仕入れを計上する日)が令和5年10月1日以後であったとしても、当該未成工事支出金等の基礎となる課税仕入れに含まれる令和5年10月1日前の取引については、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます。
 4  短期前払費用に係る課税仕入れの計上時期について、その支出した日の属する課税期間の課税仕入れとすることができます(基通11-3-8)。この場合、当該短期前払費用に係る取引に係る売手における課税売上げの計上時期(課税資産の譲渡等の時期)が令和5年10月1日以後になるものであっても、買手において同日前までに課税仕入れを計上しているものについては、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることができます(短期前払費用について、買手における課税仕入れの計上時期が令和5年10月1日以後になる場合の取扱いに関しては、問98《短期前払費用》をご参照ください。)。

(対価を前受けした場合の適格請求書の交付時期)
問 39 当社はシステム保守を業としています。この点、定期保守については、月額 22,000 円(税込み)であるところ、1年間分を保守開始前に相手方から支払ってもらうこととしており、当該代金請求時において請求書を交付しています。
 適格請求書等保存方式の下では、この請求書を適格請求書とする予定ですが、問題ありませんか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】(対価を前受けした場合の適格請求書の交付時期)

【答】
 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)からの求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されています(消法57の4①)が、課税資産の譲渡等を行う前であっても、適格請求書を交付することは可能です。
 したがって、貴社は、現状交付している定期保守に係る代金請求時における請求書について適格請求書として必要な事項を記載することにより、当該請求書を適格請求書とすることができます。
 なお、課税資産の譲渡等を行った時において、交付した適格請求書の記載事項に変更が生じることとなった場合には、修正した適格請求書を交付する必要があります。交付した適格請求書の修正方法等の詳細については、問33《修正した適格請求書の交付方法》をご参照ください。

(資産の譲渡等の時期の特例と適格請求書の交付義務)
問 40 工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例(工事進行基準)など、資産の譲渡等の時期の特例を適用した場合、適格請求書の交付義務はどのようになるでしょうか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例(工事進行基準)(消法17)など、資産の譲渡等の時期の特例により、資産の譲渡等を行ったものとみなされるものについては、適格請求書の交付を要しないこととされています(消法57の4①、消令70の9①)。
 これは、当該資産の譲渡等の時期の特例により、原則的な資産の譲渡等の時期よりも前に課税売上げを計上した際、当該特例により資産の譲渡等を行ったものとみなされる部分について、適格請求書の交付を要しないこととしているものです。
 したがって、原則的な資産の譲渡等の時期において、当該資産の譲渡等に係る適格請求書の交付を要しないこととしているものではありません。
 このため、例えば、工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例(工事進行基準)の適用を受ける工事の請負工事については、適格請求書発行事業者は、工事完成(引渡し)時に相手方(課税事業者に限ります。)からの求めに応じて適格請求書の交付義務が生じることとなります。
 また、リース譲渡(所得税法第 65 条第1項又は法人税法第 63 条第1項に規定するリース譲渡に係る資産の譲渡等をいいます。)については、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(延払基準)により、リース資産の譲渡(引渡し)時ではなく、支払期日ごとに当該支払期日に係るリース料部分について、課税売上げを計上することができます(消法 16)。
 この点、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例(延払基準)により、資産の譲渡等を行ったものとみなされるものについては、適格請求書の交付を要しないこととされていませんが、これは、リース資産の譲渡(引渡し)を行った時に当該リース資産の譲渡に対して、適格請求書の交付義務が生じるためであり、支払期日ごとに当該支払期日に係るリース料部分について、課税売上げを計上したものに対して適格請求書の交付義務が課されているものではありません。

(参考)資産の譲渡等の時期の特例と適格請求書の交付義務の関係

Ⅲ 適格請求書発行事業者の義務等
(2 交付義務の免除)
(適格請求書の交付義務が免除される取引)
問 41 適格請求書の交付が困難な取引として、交付義務が免除される取引にはどのようなものがありますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)からの求めに応じて適格請求書の交付義務が課されています(消法57の4①)。
 ただし、次の取引は、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除されます(消令70の9②)。
 ①  3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送(以下「公共交通機関特例」といいます。)
 ②  出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
 ③  生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
 ④  3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
 ⑤  郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

(公共交通機関特例の対象)
問 42 公共交通機関特例の対象となる公共交通機関の行う旅客の運送とは、具体的にはどのようなものですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
適格請求書の交付義務が免除される公共交通機関特例の対象となるのは、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送で、次のものをいいます(消令70の9②一)。
 ①  船舶による旅客の運送
  一般旅客定期航路事業(海上運送法2⑤)、人の運送をする貨物定期航路事業(同法19の6の2)、人の運送をする不定期航路事業(同法20②()乗合旅客の運送をするものに限ります。)として行う旅客の運送(対外航路のものを除きます。)
 ②  バスによる旅客の運送
  一般乗合旅客自動車運送事業(道路運送法3一イ)として行う旅客の運送
  (注) 路線不定期運行(空港アクセスバス等)及び区域運行(旅客の予約等による乗合運行)も対象となります。
 ③  鉄道・軌道による旅客の運送
  ◼  鉄道:第一種鉄道事業(鉄道事業法2②)、第二種鉄道事業(同法2③)として行う旅客の運送
  ◼  軌道(モノレール等):軌道法第3条に規定する運輸事業として行う旅客の運送

(公共交通機関特例の3万円未満の判定単位)
問 43 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、どのような単位で判定するのですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書の交付義務が免除される公共交通機関特例の対象となるのは、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送です(消令70の9②一)。
 この3万円未満の公共交通機関による旅客の運送かどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します(基通1-8-12)。したがって、1商品(切符1枚)ごとの金額や、月まとめ等の金額で判定することにはなりません。

【具体例】
 東京‐新大阪間の新幹線の大人運賃が 13,000 円であり、4人分の運送役務の提供を行う場合には、4人分の 52,000 円で判定することとなります。

(特急料金・入場料金)
問 44 特急列車に乗車するために支払う特急料金や駅構内に入場するために支払う入場料は、公共交通機関特例の対象になりますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書の交付義務が免除される公共交通機関特例の対象となるのは、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送です(消令70の9②一)。
 ご質問の特急料金、急行料金及び寝台料金は、旅客の運送に直接的に附帯する対価として、公共交通機関特例の対象となります。
 他方、入場料金や手回品料金は、旅客の運送に直接的に附帯する対価ではありませんので、公共交通機関特例の対象となりません(基通1-8-13)。

(卸売市場を通じた委託販売)
問 45 卸売市場を通じた生鮮食料品等の委託販売は、出荷者等の適格請求書の交付義務が免除されるそうですが、具体的には、どのような取引が対象となりますか。【令和6年4月改訂】

【答】
 卸売市場法に規定する卸売市場において、同法に規定する卸売業者が卸売の業務として出荷者から委託を受けて行う同法に規定する生鮮食料品等の販売は、適格請求書を交付することが困難な取引として、出荷者等から生鮮食料品等を購入した事業者に対する適格請求書の交付義務が免除されます(消法57の4①、消令70の9②二イ)。
 本特例の対象となる卸売市場とは、
 ①  農林水産大臣の認定を受けた中央卸売市場
 ②  都道府県知事の認定を受けた地方卸売市場
 ③  ①及び②に準ずる卸売市場として農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たす卸売市場のうち農林水産大臣の確認を受けた卸売市場とされています。
 農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準は、以下の5つが定められています(令和2年農林水産省告示第683号)。
 ①  生鮮食料品等(卸売市場法第2条第1項に規定する生鮮食料品等をいいます。②についても同じです。)の卸売のために開設されていること
 ②  卸売場、自動車駐車場その他の生鮮食料品等の取引及び荷捌きに必要な施設が設けられていること
 ③  継続して開場されていること
 ④  売買取引の方法その他の市場の業務に関する事項及び当該事項を遵守させるための措置に関する事項を内容とする規程が定められていること
 ⑤  卸売市場法第2条第4項に規定する卸売をする業務のうち販売の委託を受けて行われるものと買い受けて行われるものが区別して管理されていること
 なお、この場合において、生鮮食料品等を購入した事業者は、卸売の業務を行う事業者など媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類を保存することが仕入税額控除の要件となります。仕入税額控除の要件については、問84《仕入税額控除の要件》をご参照ください。

(参考)農林水産大臣が財務大臣と協議して定める基準を満たす卸売市場のうち農林水産大臣の確認を受けた卸売市場については、農林水産省ホームページ「適格請求書等保存方式(インボイス制度)における卸売市場特例の対象となる卸売市場について」をご参照ください。

【参考】
○  卸売市場法第2条(定義)
  この法律において「生鮮食料品等」とは、野菜、果実、魚類、肉類等の生鮮食料品そ の他一般消費者が日常生活の用に供する食料品及び花きその他一般消費者の日常生活と密接な関係を有する農畜水産物で政令で定めるものをいう。
2  この法律において「卸売市場」とは、生鮮食料品等の卸売のために開設される市場で あつて、卸売場、自動車駐車場その他の生鮮食料品等の取引及び荷さばきに必要な施設を設けて継続して開場されるものをいう。
3  (省略)
4  この法律において「卸売業者」とは、卸売市場に出荷される生鮮食料品等について、 その出荷者から卸売のための販売の委託を受け、又は買い受けて、当該卸売市場において卸売をする業務を行う者をいう。
5  (省略)

○  卸売市場法施行令第1条(一般消費者の日常生活と密接な関係を有する農畜水産物)卸売市場法第2条第1項の政令で定める農畜産物は、次に掲げるものとする。
 一  野菜及び果樹の種苗
 二  牛、馬、豚、めん羊及び山羊の原皮

(農協等を通じた委託販売)
問 46 農業協同組合等を通じた農林水産物の委託販売は、組合員等の適格請求書の交付義務が免除されるそうですが、具体的には、どのような取引が対象となりますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 農業協同組合法に規定する農業協同組合や農事組合法人、水産業協同組合法に規定する水産業協同組合、森林組合法に規定する森林組合及び中小企業等協同組合法に規定する事業協同組合や協同組合連合会(以下これらを併せて「農協等」といいます。)の組合員その他の構成員が、農協等に対して、無条件委託方式かつ共同計算方式により販売を委託した、農林水産物の販売(その農林水産物の譲渡を行う者を特定せずに行うものに限ります。)は、適格請求書を交付することが困難な取引として、組合員等から購入者に対する適格請求書の交付義務が免除されます(消法57の4①、消令70の9②二ロ)。
 なお、無条件委託方式及び共同計算方式とは、それぞれ、次のものをいいます(消令70の9②二ロ、消規26の5②)。
 ①  無条件委託方式
出荷した農林水産物について、売値、出荷時期、出荷先等の条件を付けずに、その販売を委託すること
 ②  共同計算方式
 一定の期間における農林水産物の譲渡に係る対価の額をその農林水産物の種類、品質、等級その他の区分ごとに平均した価格をもって算出した金額を基礎として精算すること
 また、この場合において、農林水産物を購入した事業者は、農協等が作成する一定の書類を保存することが仕入税額控除の要件となります。仕入税額控除の要件については、問84《仕入税額控除の要件》をご参照ください。

【参考】
○  農業協同組合法第4条(法人性)
  農業協同組合及び農業協同組合連合会(以下「組合」と総称する。)は、法人とする。
○  水産業協同組合法第2条(組合の種類)
  水産業協同組合(以下この章及び第七章から第九章までにおいて「組合」という。)は、漁業協同組合、漁業生産組合及び漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合及び水 産加工業協同組合連合会並びに共済水産業協同組合連合会とする。
○  森林組合法第4条(事業の目的)
  森林組合、生産森林組合及び森林組合連合会(以下この章、第五章及び第六章におい て「組合」と総称する。)は、その行う事業によつてその組合員又は会員のために直接の奉仕をすることを目的とする。
2  (省略)
○  中小企業等協同組合法第3条(種類)
  中小企業等協同組合(以下「組合」という。)は、次に掲げるものとする。
 一  事業協同組合
 一の二  事業協同小組合
 二  信用協同組合
 三  協同組合連合会
 四  企業組合

(自動販売機及び自動サービス機の範囲)
問 47 3万円未満の自動販売機や自動サービス機による商品の販売等は、適格請求書の交付義務が免除されるそうですが、具体的にはどのようなものが該当しますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書の交付義務が免除される自動販売機特例の対象となる自動販売機や自動サービス機とは、代金の受領と資産の譲渡等が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで、代金の受領と資産の譲渡等が完結するものをいいます(基通1-8-14)。
 したがって、例えば、自動販売機による飲食料品の販売のほか、コインロッカーやコインランドリー等によるサービス、金融機関のATMによる手数料を対価とする入出金サービスや振込サービスのように機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものが該当することとなります。
 なお、小売店内に設置されたセルフレジを通じた販売のように機械装置により単に精算が行われているだけのもの、コインパーキングや自動券売機のように代金の受領と券類の発行はその機械装置で行われるものの資産の譲渡等は別途行われるようなもの及びネットバンキングのように機械装置で資産の譲渡等が行われないものは、自動販売機や自動サービス機による商品の販売等に含まれません。

(参考) コインパーキングは、適格請求書の交付義務が免除される自動販売機特例の対象とはなりませんが、駐車場業(不特定かつ多数の者に対するもの)に該当することから、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することができます。

Ⅲ 適格請求書発行事業者の義務等
(3 適格請求書の交付方法)
(媒介者交付特例)
問 48 当社(委託者)は、取引先(受託者)に商品の販売を委託し、委託販売を行っています。これまで、販売した商品の納品書は取引先から購入者に交付していましたが、この納品書を適格請求書として交付することはできますか。
 なお、当社と取引先はいずれも適格請求書発行事業者です。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、課税資産の譲渡等を行った場合、課税事業者からの求めに応じて適格請求書の交付義務が課されています(消法57の4①)。
 委託販売の場合、購入者に対して課税資産の譲渡等を行っているのは、委託者ですから、本来、委託者が購入者に対して適格請求書を交付しなければなりません。
 このような場合、受託者が委託者を代理して、委託者の氏名又は名称及び登録番号を記載した、委託者の適格請求書を、相手方に交付することも認められます(代理交付)。
 また、次の①及び②の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、委託者の課税資産の譲渡等について、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書又は適格請求書に係る電磁的記録を、委託者に代わって、購入者に交付し、又は提供することができます(以下「媒介者交付特例」といいます。)(消令70の12①)。
 ①  委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること
 ②  委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること(通知の方法としては、個々の取引の都度、事前に登録番号を書面等により通知する方法のほか、例えば、基本契約等により委託者の登録番号を記載する方法などがあります(基通1-8-10)。)
 この媒介者交付特例は、物の販売などを委託し、受託者が買手に商品を販売しているような取引だけではなく、請求書の発行事務や集金事務といった商品の販売等に付随する行為のみを委託しているような場合も対象となります。

 なお、媒介者交付特例を適用する場合における受託者の対応及び委託者の対応は、次のとおりです。
【受託者の対応(消令70の12①③)】
 ①  交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を保存する。
 ②  交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を速やかに委託者に交付又は提供する。

(注) 委託者に交付する適格請求書の写しについては、例えば、複数の委託者の商品を販売した場合や、多数の購入者に対して日々適格請求書を交付する場合などで、コピーが大量になるなど、適格請求書の写しそのものを交付することが困難な場合には、適格請求書の写しと相互の関連が明確な、精算書等の書類等を交付することで差し支えありませんが、この場合には、交付した当該精算書等の写しを保存する必要があります(基通1-8-11)。
 なお、精算書等の書類等には、適格請求書の記載事項のうち、「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率」や「税率ごとに区分した消費税額等」など、委託者の売上税額の計算に必要な一定事項を記載する必要があります。

【委託者の対応(消令70の12④)】
 ①  自己が適格請求書発行事業者でなくなった場合、その旨を速やかに受託者に通知する。
 ②  委託者の課税資産の譲渡等について、受託者が委託者に代わって適格請求書を交付していることから、委託者においても、受託者から交付された適格請求書の写しを保存する。
 したがって、ご質問の場合は、取引先も適格請求書発行事業者ですから、貴社が取引先に自らが適格請求書発行事業者であることを通知することにより、取引先が自らの名称及び登録番号を記載した納品書を作成し、貴社の適格請求書として購入者に交付することができます。
 なお、貴社は取引先から交付を受けた適格請求書の写しを保存する必要があります。

(注) 媒介者交付特例により適格請求書の交付を行う受託者が、自らの課税資産の譲渡等に係る適格請求書の交付も併せて行う場合、自らの課税資産の譲渡等と委託を受けたものを一の適格請求書に記載しても差し支えありません。

(参考) 事業者(適格請求書発行事業者に限ります。)が国税徴収法第2条第12号に規定する強制換価手続により、執行機関(同条第13号に規定する執行機関をいいます。)を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合には、当該執行機関は、当該課税資産の譲渡等を受ける他の者に対し、「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」の記載に代えて「当該執行機関の名称及び本件特例の適用を受ける旨(「公売特例による適格請求書の交付」など)」を記載した適格請求書又は適格請求書に記載すべき事項に係る電磁的記録を交付し、又は提供することができます(消令70の12⑤)。
 なお、この場合、当該執行機関は、強制換価手続を受ける当該事業者から適格請求書発行事業者の登録を受けている旨の通知を受ける必要はありませんが、交付した適格請求書の写しの保存及び事業者への交付は媒介者交付特例と同様に必要となります(消令70の12②③⑤⑥)。
 また、当該執行機関は、適格請求書発行事業者である必要はありません。

【参考】
○  国税徴収法第2条(定義)
  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一~十一 (省略) 十二 強制換価手続
滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行手続及び破産手続をいう。
 十三  執行機関
  滞納処分を執行する行政機関その他の者(以下「行政機関等」という。)、裁判所(民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百六十七条の二第二項(少額訴訟債権執行の開始等)に規定する少額訴訟債権執行にあつては、裁判所書記官)、執行官及び破産管財人をいう。

(複数の委託者から委託を受けた場合の媒介者交付特例の適用)
問 49 当社(受託者)は、複数の取引先(委託者)から委託を受けて、受託販売を行っています。一の売上先に対して、複数の取引先の商品の販売を行うことがあり、その場合、媒介者交付特例により、当社が一括して適格請求書を交付することは可能でしょうか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 次の①及び②の要件を満たすことにより、媒介又は取次ぎを行う者である受託者が、委託者の課税資産の譲渡等について、自己(受託者)の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書又は適格請求書に係る電磁的記録を、委託者に代わって、購入者に交付し、又は提供することができます(消令70の12①)。
 ①  委託者及び受託者が適格請求書発行事業者であること
 ②  委託者が受託者に、自己が適格請求書発行事業者の登録を受けている旨を取引前までに通知していること(通知の方法としては、個々の取引の都度、事前に登録番号を書面等により通知する方法のほか、例えば、基本契約等により委託者の登録番号を記載する方法などがあります(基通1-8-10)。)
 この媒介者交付特例の適用により、ご質問のように複数の委託者に係る商品を一の売上先に販売した場合であっても、1枚の適格請求書により交付を行うことが可能です。
 この場合、適格請求書の記載事項である課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額は、委託 者ごとに記載し、消費税額等の端数処理についても委託者ごとに行うことが原則となります。ただし、受託者が交付する適格請求書単位で、複数の委託者の取引を一括して記載し、消費 税額等の端数処理を行うことも差し支えありません。この場合において、受託者が各委託者に適格請求書の写しに替えて交付する精算書等(適格請求書の写しに替えて精算書等の書類等を交付することで差し支えない場合については、問48《媒介者交付特例》の【受託者の対応(消令70の12①③)】をご参照ください。)に記載する消費税額等の合計額と、売上先に交付した適格請求書に記載した消費税額等とが必ずしも一致しないことも生じますが、各委託者の税込対価の合計額から消費税額等を計算するなど、合理的な方法によることとしている場合には差し支えありません。
 また、委託者に適格請求書発行事業者とそれ以外の者が混在していたとしても、適格請求書発行事業者とそれ以外の者とに区分することにより、適格請求書発行事業者に係るもののみを適格請求書とすることができます。

(参考) 複数の委託者の取引を一括して代理交付する場合
 受託者(代理人)が複数の委託者(被代理人)の取引について代理して適格請求書を交付する場合は、各委託者の氏名又は名称及び登録番号を記載する必要があります。
 また、複数の委託者の取引を一括して請求書に記載して交付する場合、委託者ごとに課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を記載し、消費税額等も委託者ごとに計算し、端数処理を行わなければなりません。

(適格請求書を再交付する場合)
問 49-2 当社は、役務の提供に当たり、予約サイトを通じて予約や代金の精算を行っています。この際、媒介者交付特例を適用し、予約サイトから購入者に適格請求書を交付してもらっていますが、実際の役務の提供に際し、顧客から当社に対して適格請求書の交付を求められました。この場合、当社は改めて適格請求書を交付しなければならないのでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書発行事業者には、課税資産の譲渡等を行った場合、課税事業者からの求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されています。また、ご質問のように予約サイトを通じて代金の精算等を行う場合、一定の要件を満たしていれば、当該予約サイトの運営者が、媒介者等として、自己の氏名又は名称及び登録番号を記載した適格請求書を、委託者である貴社に代わって顧客に対し交付することができます(消令 70 の 12①)。
 媒介者交付特例を適用し、媒介者等が適格請求書を交付したのであれば、その時点で適格請求書の交付義務を果たしていますが、ご質問のように、改めて委託者が適格請求書を交付することについて、消費税法上妨げられるものではありませんので、顧客の求めに応じて、適格請求書を交付することもできます。この場合において、委託者が交付しようとする適格請求書に記載すべき課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額は、委託者である売手の認識している金額によることとなる点にご留意ください。
 なお、仕入税額控除は、行った課税仕入れに対して適用されるものですので、購入者において、一の課税仕入れについて複数枚の適格請求書の保存があったとしても、仕入税額控除の適用は一回となります。

(注) 予約サイトの運営者が適格請求書発行事業者ではないなどの理由により、媒介者交付特例を適用できない場合に、課税事業者である顧客から適格請求書の交付を求められた際は、委託者においては、適格請求書の交付義務が生じることとなります(消法 57 の4①)。
 なお、代金の支払を受けていない等の理由で「領収書」の交付を行っていない場合であっても、適格請求書はその記載事項を満たす限り、様式や名称を問いませんので、記載事項を満たした「領収書」以外の書類(例えば、請求書や納品書、明細書など)を交付するといった対応が考えられます。

(参考) 適格請求書を再交付するに当たり、既に交付した複数枚の適格請求書をまとめて一の適格請求書として再発行する必要がある場合にはそのような対応も可能です。その場合、当該一の適格請求書に記載された全ての課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額の合計額を基礎として再計算した消費税額等が、適格請求書の記載事項としての消費税額等となります。他方、売手において既に交付した適格請求書の写しを保存しているなど、再発行であることが客観的に明らかである場合には、その記載すべき消費税額等は、既に交付した適格請求書に記載された消費税額等を基に記載することとして差し支えありません。

(任意組合等に係る事業の適格請求書の交付)
問 50 当社は、取引先数社と任意組合であるJVを組成し、建設工事を行っています。このような任意組合により事業を行う場合、取引の相手方に対し、どのように適格請求書を交付すればよいですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 民法第667条第1項に規定する組合契約によって成立する組合、投資事業有限責任組合契約に関する法律第2条第2項に規定する投資事業有限責任組合若しくは有限責任事業組合契約に関する法律第2条に規定する有限責任事業組合又は外国の法令に基づいて設立された団体であってこれらの組合に類似するもの(以下「任意組合等」といいます。)が事業として行う課税資産の譲渡等については、その組合員の全てが適格請求書発行事業者であり、民法第670条第3項に規定する業務執行者などの業務執行組合員が、納税地を所轄する税務署長に「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書」を提出した場合に限り、適格請求書を交付することができます(消法57の6①、消令70の14①②)。
 この場合、任意組合等のいずれかの組合員が適格請求書を交付することができ、その写しの保存は、適格請求書を交付した組合員が行うこととなります。
 なお、次の場合に該当することとなったときは、該当することとなった日以後の取引について、適格請求書を交付することができなくなります。
 ①  適格請求書発行事業者でない新たな組合員を加入させた場合
 ②  当該任意組合等の組合員のいずれかが適格請求書発行事業者でなくなった場合
 これらの場合に該当することとなったときは、業務執行組合員が速やかに納税地を所轄する税務署長に「任意組合等の組合員が適格請求書発行事業者でなくなった旨等の届出書」を提出しなければなりません(消法57の6②)。

(参考) 任意組合等の事業に係る適格請求書の記載事項については、問75《任意組合が交付する適格請求書の記載事項》をご参照ください。

(任意組合等に係る事業の適格請求書交付に当たっての各種届出書の提出方法)
問 51 当団体は、任意組合等に係る事業として適格請求書の交付を考えていますが、組合員の一人が新たに事業を開始した者であるため(事業を開始した日の属する課税期間に当たるため)、その組合員が当該課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を当該課税期間の末日までに提出することで、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなされる事業者である場合、登録申請書を提出していることを確認の上、「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書」の当該事業者の登録番号欄を空欄で提出し、当該組合員に係る登録通知書が届き次第、登録番号を別途提出することとしてよいでしょうか。
 また、組合員の加入・離脱が頻繁に行われることが予定されるところ、「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出事項の変更届出書」は組合員の加入・離脱の都度提出しなければならないのでしょうか。【令和5年 10 月追加】

【答】
 任意組合等が事業として行う課税資産の譲渡等については、その組合員の全てが適格請求書発行事業者であり、業務執行組合員が、その旨を記載した「任意組合等の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出書」(以下「任意組合等の届出書」といいます。)を納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限り、適格請求書を交付することができます(消法 57 の6、消令70 の 14①②)。
 そのため、適格請求書発行事業者でない事業者が任意組合等の組合員となる場合、当該事業者が適格請求書発行事業者としての登録を受けるまでは、任意組合等の届出書は提出できないこととなります。
 しかしながら、当該適格請求書発行事業者でない事業者が、新たに事業を開始した者であるため(事業を開始した日の属する課税期間に当たるため)、当該課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を当該課税期間の末日までに提出することで、当該課税期間の初日から登録を受けたものとみなされる事業者である場合(消令 70 の4、消規 26 の4一)において、当該登録申請書を提出し、課税期間の初日から適格請求書発行事業者の登録を受けることが見込まれる場合には、任意組合等の届出書における当該組合員の登録番号欄に「後日提出予定」などの記載を行った上で提出し、当該組合員に対して適格請求書発行事業者の登録通知があった後、速やかに任意組合等の届出書(次葉)等により、当該組合員の登録番号を提出することとして差し支えありません(注)。
 また、任意組合等の届出書に記載した事項に変更があったときは、その旨を記載した「任意組合等の組合員の全てが適格請求書発行事業者である旨の届出事項の変更届出書」(以下「任意組合等の変更届出書」といいます。)に、任意組合等に係る組合契約の契約書その他これに類する書類の写しを添付し、速やかに納税地を所轄する税務署長に提出する必要があります(消令 70 の 14③)。
 任意組合等の変更届出書は、原則として、適格請求書発行事業者である組合員の加入や離脱など、変更があった都度速やかに提出することが求められますが、そうした変更が頻繁に行われるなど、速やかな提出が困難である場合には、当該任意組合等に係る一定の期間(以下「計算期間」といいます。)の末日までに、その計算期間内に生じた変更事項をまとめた一覧を添付の上、任意組合等の変更届出書を提出することで差し支えありません。

(注) 仮に当該組合員が登録拒否要件(消法 57 の2⑤)に該当し、適格請求書発行事業者の登録を受けられなかった場合には、それまで適格請求書を交付した任意組合等の事業に係る課税資産の譲渡等について、改めて適格請求書ではない書類を交付する等の対応を行う必要がありますのでご留意ください。

(適格請求書発行事業者とそれ以外の事業者の共有資産の譲渡等)
問 52 当社は、適格請求書発行事業者です。適格請求書発行事業者でない事業者と共有している建物を売却することになりましたが、適格請求書はどのように交付すればよいですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者が適格請求書発行事業者以外の者と資産を共有している場合、その資産の譲渡や貸付けについては、所有者ごとに取引を合理的に区分し、相手方の求めがある場合には、適格請求書発行事業者の所有割合に応じた部分について、適格請求書を交付しなければなりません(基通1-8-7)。
 したがって、貴社は、建物の売却代金のうち、貴社の所有割合(例えば持分など)に対応する部分を基礎として、適格請求書を交付することとなります。

(ごみ袋等に係る適格請求書の交付方法)
問 53 当社は、小売業(スーパーマーケット)を営む事業者です。当社が商品として扱う自治体の指定ごみ袋や粗大ごみの処理券等については、条例等の内容に応じて、課税や非課税、不課税など課税関係が異なります。こうした課税関係の中、顧客に対してどのように適格請求書を交付すればよいですか。【令和5年 10 月追加】

【答】
 小売店等が商品として扱う各自治体の指定ごみ袋や粗大ごみの処理券等(以下「ごみ袋等」といいます。)の販売については、各自治体が定める条例等の内容に応じて、各自治体から仕入れたごみ袋等自体の譲渡として課税取引となる場合のほか、物品切手の譲渡として非課税取引となる場合、受託販売(一時的な代金の預かり)として課税対象外(不課税取引)となる場合など様々ですので、こうした態様や課税関係に応じて、適格請求書等を交付する等の対応を検討いただく必要があります。
 この点、ごみ袋等の販売により収受する金銭は、各自治体におけるごみ処理という役務の提供(課税資産の譲渡等)の対価(ごみ処理手数料)を各自治体に代わって収受するという側面を有するものであるため、その販売が非課税取引や不課税取引(以下「非課税取引等」といいます。)となるものであっても、媒介者交付特例を活用し、顧客に対して、小売店等の名称や登録番号を記載した適格請求書等の交付を行うこととしても差し支えありません(消令70の12①)。
 なお、媒介者交付特例に係る適格請求書等の写しの交付については、小売店等から各自治体に対して交付している納入通知書等に代えることも認められます。
 また、ごみ袋等については、一般的に条例等に基づいてその税込販売価額が定められているものと考えられるため、小売店等においては、税込価額で記載するごみ袋等と、税抜価額で記載するその他の商品を併せて一の適格簡易請求書に記載する場合に、「税込販売価額」を税抜化せず、「税込販売価額」を合計した金額及び「税率の異なるごとの税抜価額」を合計した金額を表示し、それぞれを基礎として消費税額等を算出し、算出したそれぞれの金額について端数処理をして記載することとしても差し支えありません(消令70の10、基通1-8-15)。

(注) ごみ袋等の販売が非課税取引等となる場合に、媒介者交付特例を活用し適格請求書等の交付を行ったとしても、小売店等において課税資産の譲渡等として取り扱う必要はありません。また、小売店等において、媒介者交付特例を活用せず、ごみ袋等の本来的な課税関係に基づき、非課税取引等として領収書等の交付を行うことを妨げるものではありません。

(参考) 媒介者交付特例については問48《媒介者交付特例》を、税抜価額と税込価額が混在する場合の消費税額等の端数処理の方法については、問59《税抜価額と税込価額が混在する場合》をご覧ください。

 小売店等からごみ袋等を購入した事業者が、その購入したごみ袋等のうち、自ら引換給付(ごみ処理という役務の提供)を受けるものにつき、継続してそのごみ袋等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとする場合には、各自治体の条例等の内容にかかわらず、小売店等から交付を受けた媒介者交付特例に係る適格請求書等及び一定の事項を記載した帳簿の保存により、仕入税額控除の適用を受けることが可能です。

Ⅲ 適格請求書発行事業者の義務等
(4 適格請求書の記載事項)
(適格請求書に記載が必要な事項)
問 54 当社は、事業者に対して飲食料品及び日用雑貨の卸売を行っています。軽減税率制度の実施後、買手の仕入税額控除のための請求書等の記載事項を満たすものとして、次の請求書を取引先に交付しています。
 今後、適格請求書発行事業者の登録を受け、適格請求書の記載事項を満たす請求書を取引先に交付したいと考えていますが、どのような記載事項の追加が必要ですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書には、次の事項が記載されていることが必要です(区分記載請求書等保存方式における請求書等の記載事項に加え、①、④及び⑤の下線部分が追加されます。)(消法57の4①)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 このため、貴社の対応としては、次の記載例のように、適格請求書として必要な事項(上記①、④及び⑤の下線部分)を記載することが必要です。

(注) 上記の記載事項のうち、①の登録番号を記載しないで作成した請求書等は、令和元年10 月1日から実施された軽減税率制度における区分記載請求書等として取り扱われます。

(参考) 令和元年 10 月1日から令和5年9月 30 日(適格請求書等保存方式の開始前)までの間において、適格請求書として必要な事項が記載されている請求書等については、区分記載請求書等として必要な事項が記載されていることとなります(旧消法30⑨、 28 年改正法附則 34②)。

(注)
 1  区分記載請求書等の記載事項
  ①  書類の作成者の氏名又は名称
  ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
  ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
  ④  税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
  ⑤  書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
 2  区分記載請求書等の記載事項のうち、④の「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」については、適格請求書等の記載事項である「課税資産の譲渡等の税抜価額を税率ごとに区分して合計した金額」及び「税率ごとに区分した消費税額等」を記載することとして差し支えありません。

(屋号による記載)
問 55 適格請求書に記載する名称は屋号も認められますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書に記載する名称については、例えば、電話番号を記載するなどし、適格請求書を交付する事業者を特定することができれば、屋号や省略した名称などの記載でも差し支えありません。

(記号、番号による適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号の記載)
問 56 当社は、名称に代えて、取引先と共有する取引先コード(取引先コード表により当社の名称等の情報を共有しています。)を請求書に記載しています。
 取引先コードの内容に登録番号を追加することにより、適格請求書の記載事項を満たすことになりますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書には、「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」の記載が必要となります(消法57の4①一)。
 登録番号と紐付けて管理されている取引先コード表などを適格請求書発行事業者と相手先の間で共有しており、買手においても取引先コードから登録番号が確認できる場合には、取引先コードの表示により「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」の記載があると認められます。したがって、貴社の請求書は、適格請求書の記載事項を満たすことになります(基通1-8-3)。
 なお、売手が適格請求書発行事業者でなくなった場合は、速やかに取引先コード表を修正する必要があるほか、事後的な確認を行うために、売手が適格請求書発行事業者である期間が確認できる措置を講じておく必要があります。

(適格請求書に記載する消費税額等の端数処理)
問 57 適格請求書には、税率ごとに区分した消費税額等の記載が必要であるとのことですが、消費税額等を計算する際の1円未満の端数処理はどのように行えばよいですか。【令和6年4月改訂】

【答】
適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(消令70の10、基通1-8-15)。なお、切上げ、切捨て、四捨五入などの端数処理の方法については、任意の方法とすること
ができます。
(注) 一の適格請求書に記載されている個々の商品ごとに消費税額等を計算し、1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等として記載することは認められません。

(参考)1枚の書類に複数の適格請求書を合わせて記載する場合の記載例(パターン別)
 ①  自社の売上に係る適格請求書と媒介者交付特例により他人の売上を合わせて一の適格請求書に記載する場合は、自社の売上と他社の売上を区分して記載するほか、税率ごとにまとめて1回端数処理することも可能です。
 ②  自社の売上に係る適格請求書と代理交付により他人の売上を合わせて一の適格請求書に記載する場合は、自社の売上と他社の売上をまとめて端数処理することはできず、それぞれ税率ごとに区分して端数処理する必要があります。
 ③  複数社の支払先に係る立替金精算書については、支払先ごとに区分して記載するほか、税率ごとにまとめて1回端数処理することも可能です。
 なお、媒介者交付・代理交付の詳細ついては、問48《媒介者交付特例》、問49《複数の委託者から委託を受けた場合の媒介者交付特例の適用》を、立替金精算書の詳細については、問94《立替金》を、それぞれご参照ください。

(適格簡易請求書の記載事項)
問 58 当社は、小売業(スーパーマーケット)を営む事業者です。軽減税率制度の実施後、買手の仕入税額控除のための請求書等の記載事項を満たすものとして、次のレシートを取引先に交付しています。
 適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、小売業などは、適格請求書の交付に代えて、記載事項を簡易なものとした適格簡易請求書を交付することができるそうですが、その記載事項について教えてください。【令和5年 10 月改訂】


【答】
 適格請求書等保存方式においては、適格請求書発行事業者が、小売業など不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業(適格簡易請求書を交付することができる事業については、問24《適格簡易請求書の交付ができる事業》をご参照ください。)を行う場合には、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することができます(消法57の4②、消令70の11)。
 適格簡易請求書の記載事項は、適格請求書の記載事項よりも簡易なものとされており、適格請求書の記載事項と比べると、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要である点、「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載で足りる点が異なります。
 なお、具体的な記載事項は、次のとおりです。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率(※)

 ※  「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」を両方記載することも可能です。

(注) 上記の記載事項のうち、①の登録番号を記載しないで作成したレシートは、令和元年10 月1日から令和5年9月30 日(適格請求書等保存方式の開始前)までの間における区分記載請求書等に該当します。

(参考) 区分記載請求書等保存方式においても仕入税額控除の要件として保存が必要な請求書等の記載事項について、小売業など不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業に係るものである場合には、請求書等の交付を受ける相手方の氏名又は名称の記載は不要とされていました(旧消法30⑨一)。

(手書きの領収書による適格簡易請求書の交付)
問 58-2 当社は旅館を経営しており、企業に懇親会でご利用いただくこともあります。領収書の発行を求められたときには手書きで領収書を作成し、交付してきました。これを適格請求書等とするためには、宛名や税率ごとの対象金額・消費税額を明記して交付しなければならないのでしょうか。
 また、温泉に入浴した顧客から受け取る対価には入湯税など課税対象外のものも含まれていますが、どのように記載したらよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書等保存方式においては、適格請求書発行事業者が、小売業など不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う一定の事業を行う場合には、適格請求書に代えて、適格簡易請求書を交付することが可能です(消法 57 の4②、消令 70 の 11)。
 適格簡易請求書の具体的な記載事項は以下のとおりとされており、下記記載例のとおり、「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要であり、「税率ごとに区分した消費税額等」又は「適用税率」のいずれか一方の記載で足りることとなります。
 また、適格請求書や適格簡易請求書のいずれについても、手書きの領収書等により交付することが可能であり、課税資産の譲渡等に係る「税込価額」が記載されていれば、「税抜価額」を記載する必要はありません。

【適格簡易請求書の記載事項】
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率

 また、課税対象外の取引について適格請求書等の交付義務はありませんが、適格請求書等に併せて記載することも可能です。その場合には、受け取った対価のうち課税対象外のものを除いた税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額を内訳欄に記載してください。
 例えば、旅館に宿泊した顧客から宿泊料 16,500 円の他 150 円を入湯税として受け取った場合には、領収金額は実際に受け取った 16,650 円を記載しつつ、但書きに「入湯税」を追加するとともに、左下の金額(税抜・税込)欄に課税資産の譲渡等(宿泊費)に係る税込価額 16,500円を記載してください。

(税抜価額と税込価額が混在する場合)
問 59 当社は、小売業(スーパーマーケット)を営む事業者です。当社のレジシステムで買い物客に発行するレシートは、一般の商品は、税抜価額を記載していますが、たばこなどの一部の商品は税込価額を記載しています。この場合、適格簡易請求書に記載する「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した額」及び「税率ごとに区分した消費税額等」は、どのように算出すればよいのですか。【令和3年7月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書の記載事項である消費税額等に1円未満の端数が生じる場合は、一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要があります(消令70の10、基通1-8-15)。この取扱いについては、適格簡易請求書に消費税額の記載を行う場合についても同様です。
 ご質問のように、一の適格簡易請求書において、税抜価額を記載した商品と税込価額を記載した商品が混在するような場合、いずれかに統一して「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した額」を記載するとともに、これに基づいて「税率ごとに区分した消費税額等」を算出して記載する必要があります。
 なお、税抜価額又は税込価額のいずれかに統一して「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した額」を記載する際における1円未満の端数処理については、「税率ごとに区分した消費税額等」を算出する際の端数処理ではありませんので、この場合にどのように端数処理を行うかについては、事業者の任意となります。
 ただし、たばこや指定ごみ袋など、法令・条例等の規定により「税込みの小売定価」が定められている商品や再販売価格維持制度の対象となる商品と、税抜価額で記載するその他の商品を合わせて一の適格簡易請求書に記載する場合については、「税込みの小売定価」を税抜化せず、「税込みの小売定価」を合計した金額及び「税率の異なるごとの税抜価額」を合計した金額を表示し、それぞれを基礎として消費税額等を算出し、算出したそれぞれの金額について端数処理して記載することとしても差し支えありません。

(適格返還請求書の記載事項)
問 60 適格返還請求書の記載事項について教えてください。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されています(消法57の4③)。
 適格返還請求書の記載事項は、次のとおりです。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
 ③  売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
 ⑤  売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

(注) 売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。ここでいう 1万円未満の判定単位については、問 28《少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位》をご参照ください。

(売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日の記載)
問 61 適格返還請求書には、「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」を記載する必要があるとのことですが、日々、商品の返品が行われているため、個々の商品について正確な販売年月日を把握することが困難です。そのため、例えば、10 月中に返品を受けた商品は、前月である9月中に販売したものの返品として処理している場合には「9月末日」を、同商品について最後に販売したものの返品として処理している場合には「最終販売年月日」を、それぞれ「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」として記載することも認められるでしょうか。【令和元年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、課税事業者に対して売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書を交付する義務が課されており、適格返還請求書には、「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」を記載することとされています(消法 57 の 4③)。
 この点、「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」は、課税期間の範囲内で一定の期間の記載で差し支えありませんので、例えば、月単位や「○月~△月分」といった記載も認められることとなります。
 他方、返品等の処理を合理的な方法により継続して行っているのであれば、当該返品等の処理に基づき合理的と認められる年月日を記載することとしても差し支えありませんので、ご質問のように「前月末日」や「最終販売年月日」を「売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日」として記載することも、そのような処理が合理的な方法として継続して行われているのであれば、認められることとなります。
 なお、その年月日が、適格請求書発行事業者の登録前の期間に属するものであるときは、適格返還請求書の交付義務はありません(基通1-8-18)。

(適格請求書と適格返還請求書を一の書類で交付する場合)
問 62 当社は、事業者に対して食料品及び日用雑貨の卸売を行っています。取引先と販売奨励金に係る契約を締結しており、一定の商品を対象として、取引高に応じて、取引先に販売奨励金を支払うこととしています。
 また、販売奨励金の精算に当たっては、当月分の請求書において、当月分の請求金額から前月分の販売奨励金の金額を控除する形式で行っています。適格請求書等保存方式においては、請求書の記載についてどのような対応が必要ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 ご質問の販売奨励金は、貴社の売上げに係る対価の返還等に該当します。したがって、貴社は、取引先に対し、課税資産の譲渡等と売上げに係る対価の返還等を行っていることから、取引先に対し、適格請求書と適格返還請求書を交付する義務があります。
 この場合において、貴社が交付する請求書に、適格請求書と適格返還請求書それぞれに必要な記載事項を記載して1枚の書類で交付することも可能です。
 具体的には、当月販売した商品について、適格請求書として必要な事項を記載するとともに、前月分の販売奨励金について、適格返還請求書として必要な事項を記載すれば、1枚の請求書を交付することで差し支えありません。
 また、継続して、課税資産の譲渡等の対価の額から売上げに係る対価の返還等の金額を控除した金額及びその金額に基づき計算した消費税額等を税率ごとに請求書等に記載することで、適格請求書に記載すべき「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」及び「税率ごとに区分した消費税額等」と適格返還請求書に記載すべき「売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」及び「売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等」の記載を満たすこともできます(基通1- 8-20)。

(注) この場合、課税資産の譲渡等の金額から売上げに係る対価の返還等の金額を控除した金額に基づく消費税額等の計算については、税率ごとに1回の端数処理となります。

(販売奨励金等の請求書)
問 63 当社は、販売促進の目的で、一定の商品を対象として、取引高に応じて、取引先(当社の売上先)に販売奨励金を支払うこととしています。
 販売奨励金の精算に当たっては、取引先から交付される奨励金請求書に基づき支払い、消費税については、売上げに係る対価の返還等として処理しています。この場合、適格請求書等保存方式においては、当社から取引先に対して、改めて、適格返還請求書を交付する必要がありますか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 ご質問の販売奨励金は、貴社の売上げに係る対価の返還等に該当します(基通14-1-2)ので、貴社は、取引先に対し、適格返還請求書を交付する義務があります(消法57の4③)。
 適格返還請求書の記載事項は、次のとおりです。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
 ③  売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
 ⑤  売上げに係る対価の返還等の金額に係る税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
 ご質問の場合、取引先が作成する書類である奨励金請求書に販売奨励金に関する適格返還請 求書として必要な事項が記載されていれば、貴社と取引先との間で、貴社の売上げに係る対価の返還等の内容について記載された書類が共有されていますので、貴社は、改めて、適格返還請求書を交付しなくても差し支えありません。

(注) 売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。ここでいう 1万円未満の判定単位については、問 28《少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位》をご参照ください。

(適格請求書に係る電磁的記録の内容)
問 64 当社は、書類に代えて、インターネットを利用して電子メールで請求書に係る電磁的記録を提供しています。
 適格請求書に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供できるそうですが、この電磁的記録には、どのような内容を記録する必要がありますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)から求められたときは適格請求書を交付しなければなりませんが、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供することができます(消法57の4①⑤)。
 なお、提供する電磁的記録は、次のとおり適格請求書の記載事項と同じ内容の記録である必要があります。
 ①  電磁的記録を提供する適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  電磁的記録の提供を受ける事業者の氏名又は名称
 また、電磁的記録による提供方法については、問31《適格請求書に係る電磁的記録による提供》をご参照ください。

(一定期間の取引をまとめた請求書の交付)
問 65 当社は、取引の都度、取引先に商品名を記載した納品書を交付するとともに、請求については1か月分をまとめて、請求書を交付しています。適格請求書発行事業者の登録を受け、請求書を適格請求書として交付しようと考えていますが、どのような対応が必要ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書とは、次の事項が記載された請求書、納品書等の書類をいいますが、一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば、請求書に納品書番号を記載するなど)で交付されていれば、その複数の書類の全体により適格請求書の記載事項を満たすことになります(基通1-8-1)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  適格請求書の交付を受ける事業者の氏名又は名称
 したがって、ご質問の場合、次の対応が考えられます。

1  請求書に適格請求書として必要な事項を全て記載する場合
適格請求書として必要な事項を全て記載することにより、請求書の交付のみをもって、適格請求書の交付義務を果たすことができます。この場合、納品書の様式を変更していただく必要はありません。

2  請求書のみでは適格請求書の記載事項が不足するため、納品書で不足する記載事項を補完する場合
 請求書に、登録番号、税率ごとに区分した消費税額等及び適用税率を記載するとともに、日々の取引の内容(軽減税率の対象である旨を含みます。)については、納品書に記載することにより、2種類の書類で適格請求書の記載事項を満たすことができます。
 したがって、この場合、請求書と納品書を交付することにより、適格請求書の交付義務を果たすことができます。

(複数の契約に係る適格請求書の交付の可否)
問 66 当社は、複数の事業所がある顧客との間では、その事業所ごとに契約を締結し、その代金を毎月まとめて顧客に請求しています。この代金請求に関しては、従来、毎月の請求額と消費税相当額の合計を記載した請求書に、その内訳として契約ごとの本体価格と消費税相当額(端数処理済)を記載したものを送付する方法で行ってきました。
 適格請求書等保存方式の開始により、消費税の端数処理については「一の適格請求書につき、税率ごとに1回」とされたことを踏まえ、1か月分をまとめて請求するのではなく、個々の契約ごとに適格請求書を作成・交付する方法に変更しましたが、交付した適格請求書の写しとして保存すべき量が多量となることや顧客の利便性も勘案し、複数の契約に係る料金を 1か月分まとめて一の適格請求書で請求する方法に改めることを検討していますが、問題ないでしょうか。また、その際に気を付けるべき点としてはどういったことがあるでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書に記載する消費税額等は、適格請求書に記載した税率ごとに合計した課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額に、一定の割合(税抜価額の場合 100 分の 10(又は 100 分の8)、税込価額の場合 110 分の 10(又は 108 分の8))を乗じて算出し、その算出した消費税額等に1円未満の端数が生じた場合にその端数を処理するため、適格請求書に記載する消費税額等の端数処理は一の適格請求書につき、税率ごとに1回行うこととなります(消令 70 の 10、基通1-8-15)。
 ご質問のように、事業所ごとに締結した契約に基づき課税資産の譲渡等を行っているとしても、その課税資産の譲渡等に係る対価の額を請求書内で合計し、適格請求書の記載事項(課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額)とすることは何ら問題ありません。
 また、ご質問の場合の適格請求書の記載例としては、例えば、以下のように課税資産の譲渡等の税込価額を合計し、その合計金額から算出した消費税額等を記載することにより、適格請求書の記載事項である消費税額等とすることができます。
 なお、契約ごとに算出した消費税額等を参考として記載することは問題ありませんが、法令で求められる適格請求書の記載事項としての消費税額等にはなりませんのでご留意ください。

(複数書類で適格請求書の記載事項を満たす場合の消費税額等の端数処理)
問 67 当社は、商品の納品の都度、取引先に納品書を交付しており、そこには、当社の名称、商品名、納品書ごとの合計金額を記載しています。適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、納品書に税率ごとに区分して合計した税込価額、適用税率と納品書ごとに計算した消費税額等の記載を追加するとともに、請求書に登録番号の記載を追加すれば、納品書と請求書を合わせて適格請求書の記載事項を満たすことになりますか。また、その場合、端数処理はどのように行えばよいでしょうか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書とは、必要な事項が記載された請求書、納品書等の書類をいいますが、一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、交付された複数の書類相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法(例えば、請求書に納品書番号を記載する方法など)で交付されていれば、これら複数の書類に記載された事項により適格請求書の記載事項を満たすことができます(基通1-8-1)。
 このため、ご質問のように納品書に「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率」及び「税率ごとに区分した消費税額等」の記載を追加するとともに、「登録番号」を請求書に記載した場合は、納品書と請求書を合わせて適格請求書の記載事項を満たすこととなります。
 この場合、納品書に「税率ごとに区分した消費税額等」を記載するため、納品書につき税率ごとに1回の端数処理を行うこととなります。

(外貨建取引における適格請求書の記載事項)
問 68 当社は、米ドル建てにより取引を行っており、当該取引に係る資産の譲渡等の対価の額については、法人税における処理と同様に取引を行った日の対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)により円換算を行っています。このような外貨建取引に係る適格請求書は、どのように記載すればよいですか。【令和4年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 米ドルなどの外貨建てによる取引であっても、適格請求書に記載が必要な事項は問54《適格請求書に記載が必要な事項》と同様ですが、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を除き、記載事項を外国語や外貨により記載しても問題ありません。
 しかし、外貨建てによる取引であっても、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」については、円換算した金額を記載する必要があります(基通1-8-16)。
 具体的には、以下のいずれかの計算方法により、円換算して「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を算出することとなります。

(注)
 1  消費税額等の算出に係る円換算の方法は、資産の譲渡等の対価の額の円換算の方法(基通10-1-7)と同様、所得税又は法人税の課税所得金額の計算において外貨建ての取引に係る売上金額その他の収入金額を円換算する際の取扱いの例により行うこととなります。ただし、適格請求書等を交付するときにおいて、所得税又は法人税の例により円換算す ることが困難な場合における消費税額等の算出に係る円換算の方法は、例えば、適格請求書等を交付する日における換算レートや決済日における換算レート等を継続して使用するなど、合理的な方法によることとして差し支えありません。
 2  税率ごとに区分した対価の額を円換算する際、端数処理を行うかどうかは事業者の任意となります。なお、ここでの端数処理は、税率ごとに区分した対価の額の計算であり、適格請求書の記載事項としての「消費税額等」の端数処理には該当しません。
 3  消費税額等の端数処理は、「1円未満」の端数が生じた場合に行うものであるため、計算過程の外貨建ての消費税額等を算出する際に、端数処理を行うことはできません。

(一括値引きがある場合の適格簡易請求書の記載)
問 69 当社は、小売業(スーパーマーケット)を営む事業者です。当社では、飲食料品と飲食
料品以外のものを同時に販売した際に、合計金額(税込み)から 1,000 円の値引きができる割引券を発行しています。
 顧客が割引券を使用し、値引きを行った場合、当社が発行するレシートには、どのような記載が必要となりますか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 飲食料品と飲食料品以外の資産を同時に譲渡し、割引券等の利用により、その合計額から一括して値引きを行う場合、税率ごとに区分した値引き後の課税資産の譲渡等の対価の額に対してそれぞれ消費税が課されることとなります。
 そのため、適格簡易請求書であるレシート等における「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」は、値引き後のものを明らかにする必要があります。
 なお、税率ごとに区分された値引き前の課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額と税率ごとに区分された値引額がレシート等において明らかとなっている場合は、これらにより値引き後の課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額が確認できるため、このような場合であっても、値引き後の「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」が明らかにされているものとして取り扱われます。
 また、レシート等に記載する「消費税額等」については、値引き後の「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」から計算することとなります。
 ご質問の場合、レシートの記載方法としては次のようなものがあります。

(参考) 顧客が割引券等を利用したことにより、同時に行った資産の譲渡等を対象として一括して対価の額の値引きが行われており、その資産の譲渡等に係る適用税率ごとの値引額又は値引き後の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額が明らかでないときは、割引券等による値引額をその資産の譲渡等に係る価額の比率によりあん分し、適用税率ごとの値引額を区分し、値引き後の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額を算出することとされています。
 その資産の譲渡等に際して顧客へ交付する領収書等の書類により適用税率ごとの値引額又は値引き後の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額が確認できるときは、その資産の譲渡等に係る値引額又は値引き後の税抜価額又は税込価額の合計額が、適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当することとされています。
 したがって、例えば、軽減税率の適用対象とならない課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額からのみ値引きしたとしても、値引額又は値引き後の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額が領収書等の書類により確認できるときは、適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当します。

(端数値引きがある場合の適格請求書の記載)
問 70 当社は、事業者に対して食料品などの卸売を行っています。取引先に対する請求に際して、当該請求金額の合計額の端数を値引きすることがあるのですが(いわゆる「出精値引き」)、適格請求書等保存方式においては、請求書の記載についてどのような対応が必要ですか。【令和4年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 ご質問のように課税資産の譲渡等の対価の額の端数を値引きする場合、値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かで以下のように対応が分けられます。
 ①  既に行った課税資産の譲渡等の対価の額に係る値引きである場合、売上げに係る対価の返還等として処理する
 ②  これから行う課税資産の譲渡等の対価の額に係る値引きである場合(課税資産の譲渡等を行う際に当該課税資産の譲渡等の対価の額を減額している場合)、課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理する
 なお、値引きの時期が課税資産の譲渡等を行う前か後かについて厳密な区分が困難である場合は、①と②のいずれの処理を行っても差し支えありません。

1  売上げに係る対価の返還等として処理する方法(上記①)
 既に行った課税資産の譲渡等の対価の額の端数の値引きである場合、当該課税資産の譲渡等に対する値引きについては適格返還請求書を交付することとなりますが、適格請求書と適格返還請求書のそれぞれの記載事項を満たして一の書類で記載することもできます。
 この場合、貴社が行う出精値引きは既に行った個々の取引のいずれかに対して値引きを行う性質のものではなく、その請求全体に対して値引きを行うものであるため、適格返還請求書の記載事項である「売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」は、適格請求書の記載事項である「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」と同一となることから、記載する必要はありません。
 また、例えば、標準税率の取引のみを行っているなど、取引に係る適用税率が単一である場合、適格返還請求書の記載事項である売上げに係る対価の返還等の金額に係る「適用税率」に関しても同様に、適格請求書の記載事項である「適用税率」とは別に記載する必要はありません。
 なお、適格返還請求書は、売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率のいずれか一方のみの記載が求められている(両方記載することも可能です。)ことから、適用税率を記載した場合は、「売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等」の記載を省略することができます。
 貴社が帳簿に記載する「売上げに係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」については、端数値引きによる対価の返還等であることが明らかな記載であれば問題ありません。

(注) 売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。ここでいう 1万円未満の判定単位については、問 28《少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位》をご参照ください。

2 課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理する方法(上記②)
 これから行う課税資産の譲渡等の値引きである場合、課税資産の譲渡等の対価の額から直接減額して処理することとなりますので、適格請求書には、値引き後の対価の額に係る消費税額等の記載が必要となります。
 また、標準税率及び軽減税率対象の取引を同時に行う場合の出精値引きについては、当該出精値引額をその資産の譲渡等の価額の比率によりあん分し、適用税率ごとに区分する必要があります。
 なお、この場合において、例えば、標準税率対象のものからのみ値引きを行うとしても値引額又は値引き後の対価の額が明らかとなっていれば、合理的に区分されているものに該当します(基通1-8-5)。軽減対象課税資産の譲渡等とそれ以外の資産の譲渡等を一括して値引きする場合の適格簡易請求書の記載方法については、問 69《一括値引きがある場合の適格簡易請求書の記載》をご参照ください。

(物品切手等を値引販売した場合の適格請求書の記載事項)
問 71 当社で主催する演劇の入場券について、一定の販売方法においては、券面金額から一定金額を値引きして販売しています。例えば、12,000 円の入場券について、1,000 円引きの 11,000円で販売しています。このような場合において、当該入場券と引換えに行う演劇に係る適格請求書(又は適格簡易請求書)の記載事項はどのようになりますか。【令和4年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書(又は適格簡易請求書)に記載する「課税資産の譲渡等の税抜価額(又は税込価額)を税率ごとに区分して合計した金額」は、売手において課税売上げとして計上する金額を基礎として記載することとなります(基通10-1-9⑴イ)。
 この点、貴社は、当該入場券を11,000円で販売しているとのことですので、当該入場券と引換えに行う演劇(役務の提供)の対価(課税売上げとして計上する金額)は、11,000円となります。
 したがって、当該入場券と引換えに行う演劇について適格請求書(又は適格簡易請求書)を交付する場合、当該適格請求書等に記載する「課税資産の譲渡等の税抜価額(又は税込価額)を税率ごとに区分して合計した金額」は、券面金額としている12,000円ではなく、実際に受領した金額11,000円を基礎とした金額となります。

(参考) 当該入場券のような物品切手等で適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されているものが、引換給付の際に適格請求書発行事業者により回収される場合、当該物品切手等により役務の提供等を受ける買手は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができます(消令49①一ロ)。
 このような物品切手等を値引販売する場合も、当該物品切手等に記載すべき「課税資産の譲渡等の税抜価額(又は税込価額)を税率ごとに区分して合計した金額」は値引後の金額を基礎とした金額となります。

(書面と電磁的記録による適格請求書の交付)
問 72 当社は、EDI取引を行っており、受発注や納品などの日々の取引については、取引先と電磁的記録を交換することにより行っています。ただし、請求書については、月まとめで、書面により取引先に交付しています。
 請求書を適格請求書とするために、請求書には、以下のように登録番号等の記載を行い、日々の取引の明細については、電磁的記録である請求明細(税率ごとに分けて作成します。)を参照しようと考えています。
 このような場合であっても、適格請求書を交付したことになりますか。【令和5年 10 月改訂】
(注) EDI(Electronic Data Interchange)取引とは、異なる企業・組織間で商取引に関連するデータを、通信回線を介してコンピュータ間で交換する取引等をいいます。

【答】
 適格請求書とは、次の事項が記載された請求書、納品書等の書類をいいますが、一の書類のみで全ての記載事項を満たす必要はなく、書類相互(書類と電磁的記録)の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法で交付されていれば、複数の書類や、書類と電磁的記録の全体により、適格請求書の記載事項を満たすことになります。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減税率の対象となるものであれば、その内容及び軽減税率の対象である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  適格請求書の交付を受ける事業者の氏名又は名称
 したがって、ご質問の場合、課税資産の譲渡等の内容(軽減税率の対象である旨を含みます。)を含む請求明細に係る電磁的記録を提供した上で、それ以外の記載事項のある月まとめの請求書を交付することで、これら全体により、適格請求書の記載事項を満たすことになります。
 なお、請求明細に係る電磁的記録については、提供した適格請求書に係る電磁的記録と同様の措置等を行い、保存する必要があります。提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存方法については、問81《適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法》をご参照ください。

(軽減対象課税資産の譲渡等である旨の記載方法)
問 73 適格請求書の記載事項である「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」の記載方法について
教えてください。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書の記載事項である「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」の記載については、軽減税率が適用された課税資産の譲渡等であることが客観的に明らかであるといえる程度の表示がされていればよく、個々の取引ごとに適用税率が記載されている場合のほか、例えば、以下のような場合も認められます(基通1-8-4)。
 ①  同一の適格請求書において、軽減対象課税資産の譲渡等に該当する取引内容ごとに軽減対象課税資産の譲渡等であることを示す記号、番号等を表示し、かつ、当該適格請求書において当該記号、番号等が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものであることとして表示されている場合
 ②  同一の適格請求書において、軽減対象課税資産の譲渡等に該当する取引内容を区分し、当該区分して記載された軽減対象課税資産の譲渡等に該当する取引内容につき軽減対象課税資産の譲渡等であることが表示されている場合
 ③  軽減対象課税資産の譲渡等に係る適格請求書と軽減対象課税資産の譲渡等以外のものに係る適格請求書とが区分して作成され、当該区分された軽減対象課税資産の譲渡等に係る適格請求書に、記載された取引内容が軽減対象課税資産の譲渡等であることが表示されている場合

(軽減税率の適用対象となる商品がない場合)
問 74 当社は、日用雑貨の卸売を行う事業者です。当社では、軽減税率の適用対象となる商品の販売がなく、買手の仕入税額控除のための請求書等の記載事項を満たすものとして、次の請求書を取引先に交付しています。
 当社が交付する請求書を適格請求書とするためには、記載内容にどのような変更が必要でしょうか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書の記載事項は、次のとおりです(区分記載請求書等保存方式における請求書等の記載事項に加え、①、④及び⑤の下線部分が追加されます。)(消法57の4①)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等
 ⑥  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
 このため、貴社の対応としては、次の記載例のように、適格請求書として必要な事項(上記①、④及び⑤の下線部分)を記載することが必要です。
 ご質問のように、販売する商品が軽減税率の適用対象とならないもののみであれば、「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」の記載は不要であり、これまでと同様に課税資産の譲渡等の対価の額(税込価格)の記載があれば、結果として「課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」の記載があるものとなります。
 なお、適用税率(10%)や消費税額等の記載が必要となる点には、ご留意ください。

(任意組合が交付する適格請求書の記載事項)
問 75 民法上の任意組合(組合員の全てが適格請求書発行事業者であり、その旨の届出書を所轄税務署長に提出しています。)の事業として行った取引について、適格請求書を交付する場合、適格請求書には、組合員全ての「氏名又は名称及び登録番号」を記載する必要がありますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 任意組合等の事業として行われる取引については、その組合員の全てが適格請求書発行事業者であり、業務執行組合員が、その旨を記載した届出書に、当該任意組合等の契約書の写しを添付し、納税地を所轄する税務署長に提出した場合に限り、適格請求書を交付することができます(消法57の6①、消令70の14①)。
 この場合、交付する適格請求書に記載する「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」は、原則として組合員全員のものを記載することとなりますが、次の事項(①及び②)を記載することも認められます(消令70の14⑤)。
 ①  その任意組合等の、いずれかの組合員の「氏名又は名称及び登録番号」(一又は複数の組合員の「氏名又は名称及び登録番号」で差し支えありません。)
 ②  その任意組合等の名称

(令和5年9月30日以前の請求書への登録番号の記載)
問 76 当社は、令和3年10月に登録申請書を提出し、適格請求書等保存方式が開始される前(令
和5年9月 30 日以前)に登録番号が通知されました。
 令和5年9月30日以前に行った取引に関する請求書に登録番号を記載しても問題ないですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 ご質問のように、区分記載請求書等に登録番号を記載しても、区分記載請求書等の記載事項が記載されていれば、取引の相手方は、区分記載請求書等保存方式の間(令和元年10月1日から令和5年9月30日まで)における仕入税額控除の要件である区分記載請求書等を保存することができますので、区分記載請求書等に登録番号を記載しても差し支えありません。
 また、適格請求書の発行に対応したレジシステム等の改修を行い、適格請求書の記載事項を満たした請求書等を発行する場合にも、その請求書等は、区分記載請求書等として必要な記載事項を満たしていますので、区分記載請求書等保存方式の間に交付しても問題ありません。

(注) 区分記載請求書等の記載事項のうち、税率ごとに区分して合計した税込価額については、適格請求書の記載事項である課税資産の譲渡等の税抜価額を税率ごとに区分して合計した金額及び税率ごとに区分した消費税額等を記載することとして差し支えありません。

(登録日である令和5年 10 月1日をまたぐ請求書の記載事項)
問 77 当社は、売上げの請求書について、毎月 15 日締めとしています。適格請求書等保存方式の開始の時である令和5年 10 月1日をまたぐ令和5年9月 16 日から 10 月 15 日までの期間に係る請求書の記載についてどのような対応が必要ですか。【令和4年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、登録日以後の取引について、相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務があります。
 登録日をまたぐ一定の期間の取引に係る請求書については、登録日以後の課税資産の譲渡等について適格請求書を交付することとなるため、課税資産の譲渡等の対価の額や税率ごとに区分した消費税額等の記載に当たっては、登録日前の課税資産の譲渡等に係るものと登録日以後の課税資産の譲渡等に係るものとに区分するなどの対応が必要となります。

 ただし、ご質問のように、登録日が令和5年10月1日(適格請求書等保存方式の開始日)で ある場合については、買手において登録日前後の課税仕入れがいずれも仕入税額控除の対象となることから、登録日をまたぐ請求書を適格請求書とするときは、登録日前後の課税資産の譲渡等(令和5年9月16日から30日までの期間と令和5年10月1日から15日までの期間)を区分することなく請求書に記載して交付することも認められます。

(参考) 売上税額の計算について、交付する適格請求書に令和5年10月1日以後(10月1日から15日までの期間)に係る課税資産の譲渡等の対価の額や税率ごとに区分した消費税額等を記載していない場合、売上税額の「積上げ計算」ができないことから、「割戻し計算」を行う必要があります(売上税額の「積上げ計算」を行う場合は令和5年9月30日以前と令和5年10月1日以後を区分して記載するなどの対応が必要となります。)。
 また、この場合、請求書の交付を受けた相手方においては、令和5年9月30日以前の課税仕入れについては区分記載請求書、令和5年10月1日以後の課税仕入れについては適格請求書として取り扱われますが、令和5年10月1日以後の課税仕入れについて「積上げ計算」を行う場合など、その区分が必要である場合は、取引事実等に基づき金額を合理的に区分して計算するか、売手に同日以後分の適格請求書の交付を求めるなどの対応を行うこととなります。

(注)
 1  令和5年10月2日以後に登録を受ける場合は、令和5年10月1日から登録日前までに行った課税資産の譲渡等について適格請求書を交付することはできないことから、この場合の登録日をまたぐ請求書は、登録日前後の課税資産の譲渡等を区分して請求書等に記載するなど、登録日以後の課税資産の譲渡等についてのみ適格請求書を交付する対応が必要となります。
 2  登録日前後の課税資産の譲渡等を区分して請求書等に記載する場合で登録日以後の課税資産の譲渡等が明確に区分できないときは、例えば、継続的に役務の提供が行われ、一定の期間において検針等に基づき対価の額が確定する取引について検針等の対象となる日数等により対価の額を区分するなど、取引事実等に基づいて合理的に区分することとなります。

(月の中途で適格請求書発行事業者となった場合の適格請求書等の交付方法)
問 77-2 当社は、機械装置の貸付けを行っている免税事業者です。契約上、毎月末に使用料を受領し、領収書を発行しているところ、この度、月の中途に適格請求書発行事業者の登録を受けたのですが、どのように領収書(適格請求書)を交付すべきでしょうか。
 また、棚卸資産としての機械装置の販売やその保守点検といった役務提供も行っていますが、この場合の適格請求書の交付はどうなりますか。【令和6年4月追加】

【答】
1 資産の貸付けに係る適格請求書
 適格請求書発行事業者は、登録日以後の取引について、相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じて、適格請求書を交付する義務が生じます(免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間において登録を受ける場合、登録日から適格請求書発行事業者となる経過措置が設けられています(28 年改正法附則44④、52、53))。詳細については、問7《免税事業者が令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合》をご参照ください。
 資産の賃貸借契約に基づいて支払を受ける使用料等の額(前受けに係る額を除きます。)を対価とする資産の譲渡等の時期は、当該契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とすることとされています。そのため、ある月の中途に適格請求書発行事業者の登録を受けた場合においても、月末にその月分の支払を受けることとしているなど、使用料等の支払を受けるべき日が登録日以後となるのであれば、その月分の使用料等の全額につき適格請求書を交付することとなります(基通9-1-20)。

(注) この場合、課税資産の譲渡等がその支払を受けるべき日に行われたこととなるため、その登録を受けた月分の使用料等については、適格請求書発行事業者の登録前の期間に係るものについて日割計算などは行わず、全額を課税売上げとして消費税の申告を行うこととなります。

 他方、前受けに係るもの(翌月分を前払で受けるようなもの)である場合には、その資産の譲渡等の時期は、原則として現実に資産の譲渡等を行った時となるため、登録日前の取引と登録日以後の取引に区分するなどの対応が必要となります(基通9-1-27)。この場合、適格請求書ではない領収書を交付し、登録通知を受け登録日が判明した後に、適格請求書となる部分を区分して交付するなどの方法によることとして差し支えありません。

※ 買手においては、領収金額の総額から適格請求書として交付を受けた金額(3月 15 日から 31 日までの分)を差し引いた金額を、3月1日から 14 日までの分の課税資産の譲渡等に係る対価の額として追記することにより、当該金額につき区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された請求書等の保存があるものとして、仕入税額の一定割合(80%、 50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることができます。

2  棚卸資産の譲渡に係る適格請求書
 棚卸資産の譲渡を行った日は、その引渡しのあった日とされており、引渡しの日がいつであるかについては、例えば、出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等、当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じてその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち、事業者が継続して棚卸資産の譲渡等を行ったこととしている日によるものとされています(基通9-1-1、9-1-2)。
 したがって、貴社が継続して棚卸資産の譲渡等を行ったこととしている日が、登録日以後となる取引について、適格請求書を交付することとなります。

3 役務の提供に係る適格請求書
 役務の提供を行った日は、原則として、その約した役務の全部の提供を完了した日になります(基通9-1-5)。したがって、貴社の行う保守点検が完了した日が適格請求書発行事業者の登録を受けた日以後であるならば、その保守点検料等の全額につき適格請求書を交付することとなります。

(注) 保守点検が完了した日が適格請求書発行事業者の登録を受けた日以後である場合、その保守点検料については、適格請求書発行事業者の登録前の期間に係るものについて日割計算などは行わず、全額を課税売上げとして消費税の申告を行うこととなります。

Ⅲ 適格請求書発行事業者の義務等
(5 適格請求書等の写しの保存)
(適格請求書等の写しの範囲)
問 78 適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書の写しの保存が義務付けられるとのことですが、「交付した適格請求書の写し」とは、交付した書類を複写したものでなければならないのですか。【令和元年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります(消法 57 の4⑥)。
 「交付した適格請求書の写し」とは、交付した書類そのものを複写したものに限らず、その適格請求書の記載事項が確認できる程度の記載がされているものもこれに含まれますので、例えば、適格簡易請求書に係るレジのジャーナル、複数の適格請求書の記載事項に係る一覧表や明細表などの保存があれば足りることとなります。

※ 自己が一貫して電子計算機を使用して作成した適格請求書については、その写しを電磁的記録により保存することも認められます。詳しくは、問 80《適格請求書の写しの電磁的記録による保存》をご参照ください。また、適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存については、問 81《適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法》をご参照ください。

(適格請求書の写しの保存期間等)
問 79 交付した適格請求書の写しや提供した適格請求書に係る電磁的記録については、何年間保存が必要ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写し及び提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存義務があります(消法57の4⑥)。
 この適格請求書の写しや電磁的記録については、交付した日又は提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません(消令70の13①)。

(参考) 仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等についても、同様です(消令50①)。

(適格請求書の写しの電磁的記録による保存)
問 80 当社は、自己の業務システムで作成した適格請求書を出力し、書面で交付しています。適格請求書発行事業者は、交付した適格請求書の写しを保存しなければなりませんが、書面で交付した適格請求書の写しとして、当該システムで作成したデータを保存することも認められますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書の写しの保存義務があります(消法57の4
⑥)。
こうした国税に関する法律の規定により保存が義務付けられている書類で、自己が一貫して

 電子計算機を使用して作成したものについては、電帳法に基づき、電磁的記録による保存をもって書類の保存に代えることができることとされています(電帳法4②)。
 なお、作成したデータでの保存に当たっては、次の要件を満たす必要があります。
 ①  適格請求書に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)の備付けを行うこと(電帳規2②一、③)
 ②  適格請求書に係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと(電帳規2②二、③)
 ③  国税に関する法律の規定による適格請求書に係る電磁的記録の提示若しくは提出の要求に応じることができるようにしておくこと又は適格請求書に係る電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと(電帳規2②三、③)
  ◼  取引年月日、その他の日付を検索条件として設定できること
  ◼  日付に係る記録項目は、その範囲を指定して条件を設定することができること

(参考1) 複数の適格請求書の記載事項に係る一覧表等を適格請求書の写しとして電磁的記録により保存する場合には、消費税法上は、必ずしも交付した適格請求書として出力する必要はなく、上記①~③の要件を満たした当該一覧表等の電磁的記録を保存することで問題ありません。

(参考2) 電帳法上の保存方法等については、国税庁ホームページに掲載されている、「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」や「電子帳簿保存法一問一答」を参考としてください。

(適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法)
問 81 当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供しています。提供した電磁的記録については、保存しなければならないとのことですが、どのような方法で保存すればよいですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者は、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)から求められたときは適格請求書を交付しなければなりませんが、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を相手方に提供することができます(消法57の4①⑤)。
 その場合、適格請求書発行事業者は、提供した電磁的記録を
  ◼  電磁的記録のまま、又は
  ◼  紙に印刷して、
その提供した日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければなりません(消法57の4⑥、消令70の13①、消規26の8)。
 また、その電磁的記録をそのまま保存しようとするときには、以下の措置を講じる必要があります(消規26の8①)。
 ①  次のイからニのいずれかの措置を行うこと
 イ  適格請求書に係る電磁的記録にタイムスタンプを付し、その電磁的記録を提供すること(電帳規4①一)
 ロ  次に掲げる方法のいずれかにより、タイムスタンプを付すこと(電帳規4①二)
  ◼  適格請求書に係る電磁的記録の提供後、速やかにタイムスタンプを付すこと
  ◼  適格請求書に係る電磁的記録の提供からタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合において、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付すこと
 ハ   適格請求書に係る電磁的記録の記録事項について、次のいずれかの要件を満たす電子計算機処理システムを使用して適格請求書に係る電磁的記録の提供及びその電磁的記録を保存すること(電帳規4①三)
  ◼  訂正又は削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができること
  ◼  訂正又は削除することができないこと
 ニ  適格請求書に係る電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと(電帳規4①四)
 ②  適格請求書に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム概要書の備付けを行うこと(電帳規2②一、⑥六、4①)
 ③  適格請求書に係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと(電帳規2②二、4①)
 ④  適格請求書に係る電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと(電帳規2⑥五、4①)

※ 国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは、ⅱ及びⅲの要件が不要となります。また、当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合で、かつ、その判定期間に係る基準期間における売上高が 5,000 万円以下の事業者であるとき又は国税に関する法律の規定による電磁的記録の出力書面(整然とした形及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは検索機能の全てが不要となります(注)。

(注) 令和5年12月31日までにやり取りした電磁的記録の場合は、基準期間の売上高が1,000万円以下であり、国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合に限り、検索要件の確保が不要となります。
 i  取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索条件として設定できること
 ii  日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
 iii  二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること
 他方、適格請求書に係る電磁的記録を紙に印刷して保存しようとするときには、整然とした形式及び明瞭な状態で出力する必要があります(消規26の8②)。

(参考) 電帳法上の保存方法等については、問102-2《適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の保存方法》及び国税庁ホームページに掲載されている、「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」や「電子帳簿保存法一問一答」を参考としてください。

(提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存方法)
問 82 当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供しています。提供した電磁的記録については、電帳法に準じた方法により保存することとされていますが、当該電磁的記録が XML 形式等の取引情報に関する文字の羅列である場合、電帳法における保存要件の一つである「整然とした形式及び明瞭な状態」での画面及び書面への出力は、どの程度の表示が求められるのでしょうか。例えば、適格請求書の記載事項を示す文言(例えば、「取引年月日」という文言)も必要となるのでしょうか。【令和4年 11 月追加】【令和5年10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者が適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合において、電帳法に準じた方法により、当該電磁的記録を保存することで、消費税法における適格請求書の写しの保存要件を満たすこととなります。適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法の詳細については、問81《適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法》をご参照ください。
 ご質問において保存する電磁的記録は、XML形式等の取引情報に関する文字の羅列とのことですが、請求書等のフォーマットなどにより視覚的に確認・出力されるものについては、保存要件を満たすこととなります(電帳法一問一答【電子取引関係】問34参照)。
 具体的には、以下の出力(印刷)イメージのように適格請求書であることが視覚的に確認でき、内容が記載事項のどの項目を示しているか認識できるものであれば、消費税法上は、必ずしも、適格請求書の記載事項を示す文言(「取引年月日」や「課税資産の譲渡等の税抜金額又は税込金額を税率ごとに区分して合計した金額」という文言など)が必要となるものではありません。
 なお、電帳法においては、「取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項)に係る電磁的記録」を保存する必要があり(電帳法2五、7)、当該電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておく必要があります(電帳規4①柱書、2②二)。
 したがって、原則としては、電磁的に授受をした内容に含まれる「通常記載される事項」は全て出力(表示)することができる必要がありますが、その記載事項(金額等)が一見して何を表しているかが明らかである場合には、当該記載事項に係る項目が出力されていなくても差し支えありません。
 ただし、授受した「通常記載される事項」に係る電磁的記録について、要件を満たして保存を行う必要があるのでご注意ください。

(提供した適格請求書に係る電磁的記録の保存形式)
問83 当社は、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録(PDF形式)を提供しています。提供した電磁的記録については、電帳法に準じた方法により保存することとされていますが、保存する電磁的記録は、相手方に提供したPDF形式のものではなく、このPDF形式を作成するための基となったXML形式の電磁的記録でも認められますか。【令和4年11月追加】【令和5年10月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者が適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合であって、電帳法に準じた方法により、当該電磁的記録を保存したときは、消費税法における適格請求書の写しの保存要件を満たすこととなります。適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法の詳細については、問81《適格請求書に係る電磁的記録を提供した場合の保存方法》をご参照ください。
 この場合、保存する電磁的記録は、必ずしも、相手方に提供した電磁的記録そのものに限られたものではなく、取引内容が変更されるおそれのない合理的な方法により編集された電磁的記録により保存することも可能です(電帳法一問一答【電子取引関係】問36参照)。
 ご質問の場合、相手方に提供する電磁的記録は、PDF形式とのことですが、例えば、データベースからフォーマットに出力してPDF形式の請求書を作成するといった、そのPDF形式がXML形式の電磁的記録から取引内容が変更されるおそれがなく合理的な方法により編集されたものであれば、PDF形式の基となったXML形式の電磁的記録を保存することでも差し支えありません。
 なお 、当該電磁的記録の保存に当たっては、相手方に提供したPDF形式として出力できるなど、整然とした形式及び明瞭な状態でディスプレイ等に出力できるようにしておく必要がありますのでご注意ください。

Ⅳ 適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件
(1 総論)
(仕入税額控除の要件)
問 84 適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件を教えてください。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、一定の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされています(消法30⑦)。
 保存すべき請求書等には、適格請求書のほか、次の書類等も含まれます(消法30⑨)。
 イ  適格簡易請求書
 ロ  適格請求書又は適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録
 ハ  適格請求書の記載事項が記載された仕入明細書、仕入計算書その他これに類する書類(課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するもので、相手方の確認を受けたものに限ります。)(書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)
 ニ  次の取引について、媒介又は取次ぎに係る業務を行う者が作成する一定の書類(書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)
  ◼  卸売市場において出荷者から委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の販売
  ◼  農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等が生産者(組合員等)から委託を受けて行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式によるものに限ります。)
 なお、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①、消規15の4)。
 ①  公共交通機関特例の対象として適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
 ②  適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
 ③  古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
 ④  質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得
 ⑤  宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
 ⑥  適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
 ⑦  適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
 ⑧  適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
 ⑨  従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

(注) 一定規模以下の事業者は、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置が設けられています(28 年改正法附則 53 の2、改正令附則 24 の2①)。
 詳しくは、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。

Ⅳ 適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件
(2 請求書等の保存)
(提供された適格請求書に係る電磁的記録の書面による保存)
問 85 当社は、取引先から請求書を電子データにより提供を受けました。これを出力して保存することで、仕入税額控除の要件を満たしますか。
 なお、提供を受けた請求書データは、適格請求書の記載事項を満たしています。【令和6年4月改訂】

【答】
 ご質問の請求書の電子データのように、適格請求書に係る電磁的記録による提供を受けた場合であっても、電磁的記録を整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面を保存することで、仕入税額控除の適用に係る請求書等の保存要件を満たします(消規15の5②)。

(参考) 令和3年度の税制改正により、電帳法において、所得税(源泉徴収に係る所得税を除きます。)及び法人税の保存義務者については、令和4年1月1日以後行う電子取引に係る電磁的記録を書面やマイクロフィルムに出力してその電磁的記録の保存に代えられる措置が廃止されましたので、全ての電子取引の取引情報に係る電磁的記録を一定の要件の下、保存しなければならないこととされました。

 なお、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に電子取引を行う場合には、授受した電磁的記録について要件に従って保存をすることができないことについて、納税地等の所轄税務署長がやむを得ない事情があると認め、かつ、保存義務者が税務調査等の際に、税務職員からの求めに応じ、その電磁的記録を整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面の提示又は提出をすることができる場合には、その保存要件にかかわらず電磁的記録の保存が可能となり、また、その電磁的記録の保存に代えてその電磁的記録を出力することにより作成した書面による保存をすることも認められます(この取扱いを受けるに当たり税務署への事前申請等の手続は必要ありません。)。
 また、令和6年1月1日以後に行う電子取引の取引情報については要件に従った電子データの保存が必要です。
 電帳法上の保存方法等については、問102《提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法》、問102-2《適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の保存方法》及び国税庁ホームページに掲載されている、「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」、「電子帳簿保存法一問一答」を参考としてください。

(仕入明細書の相手方への確認)
問 86 適格請求書等保存方式の下でも仕入明細書を保存することによって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすそうですが、相手方への確認は、どのように行えばよいですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 仕入税額控除の適用を受けるための請求書等に該当する仕入明細書等は、相手方の確認を受けたものに限られます(消法30⑨三、基通11-6-6)。この相手方の確認を受ける方法としては、例えば、
 ①  仕入明細書等の記載内容を、通信回線等を通じて相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けた上で、自己の端末機から出力したもの
 ②  仕入明細書等に記載すべき事項に係る電磁的記録につきインターネットや電子メールなどを通じて課税仕入れの相手方へ提供し、相手方から確認の通知等を受けたもの
 ③  仕入明細書等の写しを相手方に交付し、又は仕入明細書等の記載内容に係る電磁的記録を相手方に提供した後、一定期間(注)内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする基本契約等を締結した場合におけるその一定期間を経たものがあります。
 なお、③については、
 ◼  仕入明細書等に「送付後一定期間(注)内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする」旨の通知文書等を添付して相手方に送付し、又は提供し、了承を得る。
 ◼  仕入明細書等又は仕入明細書等の記載内容に係る電磁的記録に「送付後一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする」といった文言を記載し、又は記録し、相手方の了承を得る。
といったように、仕入明細書等の記載事項が相手方に示され、その内容が確認されている実態にあることが明らかであれば、相手方の確認を受けたものとなります。

(注) 仕入明細書等の確認があったものとするための「一定期間」について、具体的な日数等を表示することまで求めるものではありませんが、業務の内容や取引先との関係を踏まえて、認識を合わせておくことが求められます。

(参考) 区分記載請求書等保存方式においても、仕入れを行った者が作成する仕入明細書等の書類で、一定事項が記載されており、相手方の確認を受けたものについては、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等に該当します。
ただし、適格請求書等保存方式における仕入明細書等と区分記載請求書等保存方式における仕入明細書等の記載事項は異なりますので、ご注意ください。

(仕入明細書等の記載事項)
問 87 当店は、食料品及び日用雑貨の小売を行っています。軽減税率制度の実施後、仕入先への代金の支払に当たり、以下のような仕入明細書を作成し、仕入先の確認を受け、保存していました。
 適格請求書等保存方式における請求書等としての記載事項を満たすためには、仕入明細書について、どのような対応が必要ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 区分記載請求書等保存方式においても、仕入側が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、相手方の確認を受けたものについては、仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等に該当することとされていました(消法30⑨二)。
 適格請求書等保存方式の下でも同様に仕入明細書等による仕入税額控除は可能ですが、課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当するものであり、次の事項が記載されていることが必要となります(区分記載請求書等保存方式における仕入明細書の記載事項に加え、②、⑤及び⑥の下線部分が追加されています。)(消法30⑨三、消令49④)。
 ①  仕入明細書の作成者の氏名又は名称
 ②  課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号
 ③  課税仕入れを行った年月日
 ④  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
 ⑤  税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
 ⑥  税率ごとに区分した消費税額等

(注) 上記の記載事項のうち、②の登録番号を記載しないで作成した仕入明細書は、令和元年 10 月1日から令和5年9月 30 日(適格請求書等保存方式の開始前)までの間における区分記載請求書等として取り扱われます。

(参考) 仕入明細書等の電磁的記録による保存
 仕入税額控除の要件として保存が必要な請求書等には、上記①から⑥までの記載事項に係る電磁的記録も含まれます(消令49⑦)。
 したがって、上記①から⑥までの記載事項を記録した電磁的記録を保存することで、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たします。
 なお、仕入明細書等の電磁的記録の保存方法は、提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法と同様となります(消令50①、消規15の5)。この電磁的記録の保存方法については、問102《提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法》をご参照ください。

(書面と電磁的記録を合わせた仕入明細書)
問 88 当社は、EDI取引を行っており、取引先と電磁的記録を交換することにより、日々の受発注などを行っています。また、決済に当たっては、取引先から請求書が交付されず、当社から取引先に、月まとめで支払通知書を書面で交付しています(いわゆる請求レス取引)。支払通知書には相手方の登録番号等の記載を行いますが、日々の取引の明細については、 取引先から提供される電磁的記録である取引明細(税率ごとに分けて作成されています。)を参照しようと考えています。
 このような場合、相手方の確認を受けた上で、書面の支払通知書と取引明細の電磁的記録を合わせて保存することで、仕入税額控除の要件である仕入明細書の保存があることとなりますか。【令和5年 10 月改訂】
(注)EDI(Electronic Data Interchange)取引とは、異なる企業・組織間で商取引に関連するデータを、通信回線を介してコンピュータ間で交換する取引等をいいます。

【答】
 相手方から確認を受けた仕入明細書を仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等とするには、次の事項が記載されていることが必要です(区分記載請求書等保存方式における仕入明細書の記載事項に加え、次の②、⑤及び⑥の下線部分が追加されました。)(消法30⑨三、消令 49④)。また、保存すべき請求書等には仕入明細書に係る電磁的記録も含まれます(消令49⑤)。
 ①  仕入明細書の作成者の氏名又は名称
 ②  課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号
 ③  課税仕入れを行った年月日
 ④  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
 ⑤  税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
 ⑥  税率ごとに区分した消費税額等
 なお、保存が必要な請求書等の記載事項は、一の書類だけで記載事項を満たす必要はなく、複数の書類や、書類と電磁的記録について、これらの書類(書類と電磁的記録)相互の関連が明確であり、適格請求書の交付対象となる取引内容を正確に認識できる方法で交付されていれば、その複数の書類や電磁的記録の全体により適格請求書の記載事項を満たすことができます。
 したがって、ご質問の場合、課税資産の譲渡等の内容(軽減税率の対象である旨を含みます。)を記録した取引明細に係る電磁的記録と書面で作成する支払通知書の全体により、請求書等の記載事項を満たすため、貴社は、書面で作成した支払通知書と取引明細に係る電磁的記録を合わせて保存することで、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすこととなります。
 また、取引明細に係る電磁的記録の保存方法は、提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録 の保存方法と同様となります(消令50①、消規15の5)。この電磁的記録の保存方法については、問102《提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法》をご参照ください。

(仕入明細書に記載する課税仕入れに係る支払対価の額)
問 89 適格請求書等保存方式の下では、記載事項を満たす仕入明細書には、「税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額」と「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が必要とのことですが、税抜きの仕入金額と消費税額等を記載することで、必要な記載事項を満たすことになりますか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下で、仕入税額控除の要件として保存すべき仕入明細書には、次の事項が記載されていることが必要です(消法30⑨三、消令49④)。
 ①  仕入明細書の作成者の氏名又は名称
 ②  課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号
 ③  課税仕入れを行った年月日
 ④  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
 ⑤  税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
 ⑥  税率ごとに区分した消費税額等
 ご質問の「税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額」については、税込金額となりますが、税率ごとに区分した仕入金額の税抜きの合計額及び税率ごとに区分した消費税額等を記載することで、その記載があるものとして取り扱われます。

(仕入明細書において対価の返還等について記載した場合)
問 90 当社は、食品及び日用雑貨の販売を行う事業者です。当社の商品販売売上げに関しては、請求書の交付をることなく、相手方から交付される次の支払通知書に基づき支払を受けています。また、返品があった場合には、支払通知書にその内容等が記載されていますが、こうした場合であっても、適格請求書等保存方式においては、改めて、適格返還請求書を交付する必要がありますか。
 なお、相手方は、仕入税額控除の適用を受けるために、支払通知書を保存しています。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、課税事業者に返品や値引き等の売上げに係る対価の返還等を行う場合、適格返還請求書の交付義務が課されています(消法57の4③)。
 適格返還請求書の記載事項は、次のとおりです。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  売上げに係る対価の返還等を行う年月日及びその売上げに係る対価の返還等の基となった課税資産の譲渡等を行った年月日(適格請求書を交付した売上げに係るものについては、課税期間の範囲で一定の期間の記載で差し支えありません。)
 ③  売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(売上げに係る対価の返還等の基となる課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
 ④  売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
 ⑤  売上げに係る対価の返還等の金額に係る税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率また、課税仕入れの相手方において課税資産の譲渡等に該当する場合において、仕入側が作 成した次の記載事項のある仕入明細書等の書類で、相手方の確認を受けたものについては、仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等に該当します(消法 30⑨三、消令 49④)。
 ①  仕入明細書の作成者の氏名又は名称
 ②  課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号
 ③  課税仕入れを行った年月日
 ④  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
 ⑤  税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
 ⑥  税率ごとに区分した消費税額等

 ご質問の場合、相手方が仕入税額控除のために作成・保存している支払通知書に、返品に関する適格返還請求書として必要な事項が記載されていれば、貴社と相手方の間で、貴社の売上げに係る対価の返還等の内容について確認されていますので、貴社は、改めて適格返還請求書を交付しなくても差し支えありません。
 なお、支払通知書に適格返還請求書として必要な事項を合わせて記載する場合に、事業者ごとに継続して、課税仕入れに係る支払対価の額から売上げに係る対価の返還等の金額を控除した金額及びその金額に基づき計算した消費税額等を税率ごとに支払通知書に記載することで、仕入明細書に記載すべき「税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額」及び「税率ごとに区分した消費税額等」と適格返還請求書に記載すべき「売上げに係る対価の返還等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額」及び「売上げに係る対価の返還等の金額に係る税率ごとに区分した消費税額等」の記載を満たすこともできます。

(注) 売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務が免除されます(消法 57 の4③、消令 70 の9③二)。ここでいう 1万円未満の判定単位については、問 28《少額な対価返還等に係る適格返還請求書の交付義務免除に係る1万円未満の判定単位》をご参照ください。

(適格請求書と仕入明細書を一の書類で交付する場合)
問 91 当社は、現在、自ら作成した仕入明細書を相手方の確認を受けた上で請求書等として保存しています。仕入明細書には、当社が行った商品の配送について、配送料として記載し、仕入金額から控除しており、これは、当社の売上げとして計上しています。この場合、仕入明細書とは別にその配送料に係る適格請求書を相手方に交付しなければならないのでしょうか。【平成 30 年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、相手方(課税事業者に限ります。)からの求めに応じて適格請求書を交付する義務が課されています(消法 57の4①)。
 ご質問の場合、貴社が行う配送(課税資産の譲渡等)の対価として収受する配送料については、別途、相手方の求めに応じて適格請求書を交付する義務があります。このため、配送料に係る適格請求書を仕入明細書とは別に交付する、又は仕入明細書に合わせて配送料に係る適格請求書の記載事項を1枚の書類で交付するといった方法により対応する必要があります。
 なお、仕入明細書と適格請求書の記載事項は、それぞれ次のとおりです。
  1  仕入明細書の記載事項(消令 49④)
  ①  仕入明細書の作成者の氏名又は名称
  ②  課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号
  ③  課税仕入れを行った年月日
  ④  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
  ⑤  税率ごとに合計した課税仕入れに係る支払対価の額及び適用税率
  ⑥  税率ごとに区分した消費税額等
 2  適格請求書の記載事項
  ㋑  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  ㋺  課税資産の譲渡等を行った年月日
  ㋩  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等である旨)
  ㋥  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
  ㋭  税率ごとに区分した消費税額等
  ㋬  書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

(交付を受けた適格請求書に誤りがあった場合の対応)
問 92 記載事項に誤りがある適格請求書の交付を受けた事業者が、その課税仕入れについて仕入税額控除の適用に係る請求書等の保存要件を満たすために必要となる対応について教えてください。【令和3年7月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 買手である課税事業者は、交付を受けた適格請求書又は適格簡易請求書(電磁的記録により提供を受けた場合も含みます。)の記載事項に誤りがあったときは、売手である適格請求書発行事業者に対して修正した適格請求書又は適格簡易請求書の交付を求め、その交付を受けることにより、修正した適格請求書又は適格簡易請求書を保存する必要があります(原則として、自ら追記や修正を行うことはできません。)。
 しかし、買手である課税事業者が作成した一定事項の記載のある仕入明細書等の書類で、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けたものについても、仕入税額控除の適用のために保存が必要な請求書等に該当しますので(消法 30⑨三)、買手において適格請求書の記載事項の誤りを修正した仕入明細書等を作成し、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けた上で、その仕入明細書等を保存することもできます。
 また、受領した適格請求書の記載事項を買手が自ら修正することは原則として認められませんが、自ら修正するのみではなく、その修正した事項について売手に確認を受けることで、その書類は適格請求書であるのと同時に修正した事項を明示した仕入明細書等にも該当することから、当該書類を保存することで、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 なお、これら仕入明細書等による対応を行った場合でも、売手において当初交付した適格請求書の写しを保存しなければなりません(消法 57 の4⑥)。また、売手において、売上税額の積上げ計算を行う場合には、これらの対応により確認を行った仕入明細書等を適格請求書等の写しと同様の期間・方法により保存する必要があります。仕入明細書等を受領した場合における売上税額の積上げ計算の詳細については、問 121《仕入明細書を受領した場合における売上税額の積上げ計算》をご参照ください。

(任意組合の構成員が保存しなければならない請求書等)
問 93 当社は、取引先数社と任意組合を組成し、イベントを行っています。これまで、仕入先から交付される請求書等は、幹事会社が保管し、当社を含めた構成員は、幹事会社から精算書の交付を受けていました。
 適格請求書等保存方式においては、構成員である当社も仕入先から適格請求書の交付を受け、保存する必要がありますか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、適格請求書など請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります(消法30⑦⑨)。
 任意組合の共同事業として課税仕入れを行った場合に、幹事会社が課税仕入れの名義人となっている等の事由により各構成員の持分に応じた適格請求書の交付を受けることができないときにおいて、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書のコピーに各構成員の出資金等の割合に応じた課税仕入れに係る対価の額の配分内容を記載したものは、貴社及びその他の構成員における仕入税額控除のために保存が必要な請求書等に該当するものとして取り扱われますので、その保存をもって、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすことになります。
 また、任意組合の構成員に交付する適格請求書のコピーが大量となる等の事情により、立替 払を行った幹事会社が、コピーを交付することが困難なときは、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書を保存し、精算書を交付することにより、貴社は幹事会社が作成した(立替えを受けた構成員の負担額が記載されている)精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができます(基通11-6-2)。
 この場合、幹事会社は、精算書に記載されている仕入れ(経費)について、仕入税額控除が可能なものか(すなわち、適格請求書発行事業者からの仕入れか、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れか)を明らかにし、また、適用税率ごとに区分するなど、各構成員が仕入税額控除を受けるに当たっての必要な事項を記載しておく必要があります。
 なお、仕入税額控除の要件として保存が必要な帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名又は名称の記載が必要となりますし、適格請求書のコピーにより、その仕入れ(経費)が適格請求書発行事業者から受けたものか否かを確認できなくなるため、幹事会社と構成員の間で、課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号を確認できるようにしておく必要があります。
 ただし、これらの事項について、別途、書面等で通知する場合のほか、継続的な取引に係る契約書等で、別途明らかにされている等の場合には、精算書において明らかにしていなくても差し支えありません。

(立替金)
問 94 当社は、取引先のB社に経費を立て替えてもらう場合があります。
 この場合、経費の支払先であるC社から交付される適格請求書には立替払をしたB社の名称が記載されますが、B社からこの適格請求書を受領し、保存しておけば、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすこととなりますか。【令和6年4月改訂】

【答】
 貴社が、C社から立替払をしたB社宛に交付された適格請求書をB社からそのまま受領したとしても、これをもって、C社から貴社に交付された適格請求書とすることはできません。
 ご質問の場合において、立替払を行ったB社から、立替金精算書等の交付を受けるなどにより、経費の支払先であるC社から行った課税仕入れが貴社のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書及び立替金精算書等の書類の保存をもって、貴社は、C社からの課税仕入れに係る請求書等の保存要件を満たすこととなります(基通11-6-2)。
 また、この場合、立替払を行うB社が適格請求書発行事業者以外の事業者であっても、C社が適格請求書発行事業者であれば、仕入税額控除を行うことができます。
 なお、立替払の内容が、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れに該当することが確認できた場合、貴社は、一定の事項を記載した帳簿を保存することにより仕入税額控除を行うことができます。この場合、適格請求書及び立替金精算書等の保存は不要となります。
 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れについては、問104《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合》を、帳簿の記載事項については、問110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》をご参照ください。

(参考1) A社を含む複数者分の経費を一括してB社が立替払している場合、原則として、B社はC社から受領した適格請求書をコピーし、経費の支払先であるC社から行った課税仕入れがA社及び各社のものであることを明らかにするために、B社が作成した精算書を添えるなどし、A社を含む立替えを受けた者に交付する必要があります。
 しかしながら、立替えを受けた者に交付する適格請求書のコピーが大量となるなどの事情により、立替払を行ったB社が、コピーを交付することが困難なときは、B社がC社から交付を受けた適格請求書を保存し、立替金精算書を交付することにより、 A社はB社が作成した(立替えを受けた者の負担額が記載されている)立替金精算書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができます。
 この場合、立替払いを受けたA社等は、立替金精算書の保存をもって適格請求書の保存があるものとして取り扱われるため、立替払を行った取引先のB社は、その立替金が仕入税額控除可能なものか(すなわち、適格請求書発行事業者からの仕入れか、適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れか)を明らかにし、また、適用税率ごとに区分するなど、A社が仕入税額控除を受けるに当たっての必要な事項を立替金精算書に記載しなければなりません。
 したがって、立替金精算書に記載する「消費税額等」については、課税仕入れの相手方であるC社から交付を受けた適格請求書に記載された消費税額等を基礎として、立替払いを受ける者の負担割合を乗じてあん分した金額によるなど合理的な方法で計算した「消費税額等」を記載する必要がありますが、複数社の支払先に係る立替金精算書については、支払先ごとに区分して記載するほか、税率ごとにまとめて1回端数処理することも可能です(詳細については、問57《適格請求書に記載する消費税額等の端数処理》(参考)③をご参照ください。)。また、立替金精算書に記載する複数の事業者ごとの消費税額等の合計額が適格請求書に記載された「消費税額等」と一致しないことも生じますが、この消費税額等が合理的な方法により計算されたものである限り、当該立替金精算書により仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。
 なお、仕入税額控除の要件として保存が必要な帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名又は名称の記載が必要であるほか、その仕入れ(経費)が適格請求書発行事業者から受けたものか否かを確認できるよう、立替払を行ったB社とA社の間で、課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号を確認できるようにしておく必要があります。ただし、これらの事項について、別途、書面等で通知する場合のほか、継続的な取 引に係る契約書等で、別途明らかにされているなどの場合には、精算書において明らかにしていなくても差し支えありません。

(参考2) 買手が作成した一定の事項の記載がある仕入明細書等の書類で、売手である適格請求書発行事業者の確認を受けたものについても、請求書等に該当しますので、B社からB社宛の適格請求書を受領し、貴社において立替金精算書の内容を記載した書類等(明細書)を作成してB社宛に交付し、その内容の確認を受けることで、貴社は、当該明細書及びB社宛の適格請求書の保存をもって、仕入税額控除を行うことができます。
 なお、この対応であっても、立替払を受ける者が多数いるなどの事情によりB社宛の適格請求書の交付を受けられなかった場合は、当該B社宛の適格請求書の保存は不要(当該明細書のみの保存)で、仕入税額控除を行うことができます。
 また、受領したB社宛の適格請求書について、宛名部分等を修正し、その修正した事項についてB社の確認を受けることで、その書類は適格請求書であるのと同時に修正した事項を明示した仕入明細書等にも該当することから、当該書類を保存することで、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 仕入明細書等による適格請求書等の誤りの修正についての詳細は、問 32《交付した適格請求書に誤りがあった場合の対応》を、修正した適格請求書の交付方法の詳細については、問 33《修正した適格請求書の交付方法》を、適格請求書と仕入明細書等を一の書類で交付することの詳細については、問 91《適格請求書と仕入明細書を一の書類で交付する場合》を、仕入明細書を受領した場合における売上税額の積上げ計算の詳細については、問 121《仕入明細書を受領した場合における売上税額の積上げ計算》を、それぞれご参照ください。

(参考3) 国税庁ホームページ「インボイス制度特設サイト」に掲載しているユーチューブ動画「3分でわかる インボイス立替金精算」も併せてご参照ください。

(従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除)
問 94-2 当社は、事業に必要な消耗品等を従業員が自ら購入し、その際受領した適格簡易請求書と引き換えに、当該消耗品費を支払っています。この場合、当該適格簡易請求書の宛名には「従業員名」が記載されているのですが、これをそのまま保存することで、当社は仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 従業員が事業に必要なものとして購入した消耗品等の代金を貴社が負担する場合には、それは貴社が負担すべき費用を従業員から立替払を受けたことになります。
 原則として、本来宛名の記載を求められない適格簡易請求書であったとしても、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称として仕入税額控除を行う事業者以外の者の氏名又は名称が記載されている場合には、当該適格簡易請求書をそのまま受領し保存したとしても、これをもって、仕入税額控除を行うことはできません。
 しかしながら、当該従業員が貴社に所属していることが明らかとなる名簿や当該名簿の記載事項に係る電磁的記録(以下「従業員名簿等」といいます。)の保存が併せて行われているのであれば、宛名に従業員名が記載された適格簡易請求書と、当該従業員名簿等の保存をもって、貴社は当該消耗品費に係る請求書等の保存要件を満たすこととして、仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。
 なお、従業員名簿等がなく、立替払を行う者である従業員を特定できない場合には、宛名に従業員名が記載された適格簡易請求書と、従業員が作成した立替金精算書の交付を受け、その保存が必要となります。

(セミナー参加費に係る適格請求書の交付方法)
問 94-3 当協会は、協会に所属する会員向けに講師を招いてセミナーを開催しています。その際の講演料はまとめて当協会が支払いますが、一定割合を協会で負担することとした上で、残りをセミナーの参加予定者数であん分して参加費として受領しています(1,000 円未満の端数は切上げ)。この場合、参加者に対してどのように適格請求書を交付すればよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
1  セミナーの参加費が貴協会の課税売上げとなる場合
 原則として、貴協会が会員(参加者)に対しセミナーという役務の提供を行ったものと解されることから、貴協会においては、当該セミナーの参加者から受領した金額が課税売上げ、講演料として支払った金額が課税仕入れとなり、参加者にとっては、セミナー参加に当たって負担した金額がセミナーという役務提供の対価として課税仕入れとなるものと考えられます。
 そのため、参加者から代金を受領する際には、適格簡易請求書の記載事項を満たした領収書等の交付を行うことが考えられます(セミナー参加費について適格簡易請求書の対象となる点は、問 24-2《適格簡易請求書を交付することができる事業の具体例》をご参照ください。)。
 なお、具体的な記載事項は、次のとおりです(消法 57 の4②)。
 ①  適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
 ④  課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額
 ⑤  税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率※

 ※  「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」を両方記載することも可能です。

2  セミナーの参加費が預り金として処理される場合
 他方、貴協会と会員(参加者)との間での契約などにより、セミナー参加に当たって負担する金額が、講演料の一部負担金(立替払)であることが明らかであり、かつ、講演料の総額を超える対価を受領することがないなどの場合には、貴協会において預り金として処理することも認められるものと考えられます。
また、その場合、参加者が負担した金額は、講演を受けるという役務提供の対価として課税仕入れに該当し、貴協会から交付を受けた講演料に係る適格請求書のコピーと立替金精算書の保存により仕入税額控除の適用を受けることが可能です。
 さらに、適格請求書のコピーが大量となるなどの事情により、コピーを交付することが困難なときは、貴協会が適格請求書を保存しておくことで、参加者は貴協会から交付を受けた立替金精算書のみの保存をもって、仕入税額控除の適用を受けることが可能です(基通11-6-2)。この場合、当該立替金精算書には、以下のイメージのとおり、課税仕入れを行う参加者が仕入税額控除の適用を受けるに当たっての必要な事項が記載されている必要があります。

 なお、上記立替金精算書による対応は貴協会が適格請求書発行事業者であるかどうかは問いませんが、貴協会と講師の双方が適格請求書発行事業者である場合においては、媒介者交付特例を適用し、貴協会の名称及び登録番号を記載して、適格簡易請求書を交付することも可能です(その場合の記載事項は上記 1 の適格簡易請求書と同じです。また、媒介者交付特例の詳細については、問 48《媒介者交付特例》をご参照ください。)。

(社員食堂での会社負担分に係る仕入税額控除)
問 94-4 当社は、他の事業者が経営する食堂を社員食堂として従業員に利用させています。例えば、従業員が 1,000 円分の喫食を行った場合、当社はその7割(700 円)を従業員から徴収し、差額 300 円を負担する形で食堂を経営する当該他の事業者に対して支払を行っています。適格請求書には、課税資産の譲渡等に係る税込価額として支払を行った全額が記載されているのですが、当社はどのように仕入税額控除を行うことになるのでしょうか。なお、従業員から徴収した代金は預り金として処理しています。【令和6年4月追加】

【答】
 事業者が他の事業者が経営する食堂を社員食堂として従業員に利用させるという契約を当該他の事業者と締結し、その従業員の食事代の全部又は一部を支払っているときは、給与として課税されるかどうかにかかわらず、その金額は課税仕入れに該当し、当該他の事業者から受領した適格請求書及び一定の記載をした帳簿の保存により仕入税額控除を行うことが可能です。
 ただし、従業員から一部の代金を徴収し、預り金として処理している場合には、事業者が実際に負担した部分の金額のみが課税仕入れの対象となることから、ご質問の例であれば、喫食に係る代金の全額が記載されている適格請求書を保存していたとしても、貴社は300 円を基礎として、仕入税額控除の適用を受けることとなります。
 なお、仕入控除税額の計算に当たって、積上げ計算を行う場合、受領した一の適格請求書に記載された課税資産の譲渡等に係る消費税額等のうち、課税仕入れに係る部分の金額として算出した金額に1円未満の端数が生じる場合は、受領した一の適格請求書につき、税率ごとに1回の端数処理を行う必要がありますが、その方法については切上げ、切捨て、四捨五入など、任意の方法とすることができます。

(口座振替・口座振込による家賃の支払)
問 95 当社は、事務所を賃借しており、口座振替により家賃を支払っています。不動産賃貸契約書は作成していますが、請求書や領収書の交付は受けておらず、家賃の支払の記録としては、銀行の通帳に口座振替の記録が残るだけです。このような契約書の締結後に口座振替等により代金を支払い、請求書や領収書の交付を受けない取引の場合、請求書等の保存要件を満たすためにはどうすればよいですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が交付されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要です。
 この点、適格請求書は、一定期間の取引をまとめて交付することもできますので、相手方(貸主)から一定期間の賃借料についての適格請求書の交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。
 なお、適格請求書として必要な記載事項は、一の書類だけで全てが記載されている必要はなく、複数の書類で記載事項を満たせば、それらの書類全体で適格請求書の記載事項を満たすことになりますので、契約書に適格請求書として必要な記載事項の一部が記載されており、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類とともに保存しておけば、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
 ご質問の場合には、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
 また、口座振込により家賃を支払う場合も、適格請求書の記載事項の一部が記載された契約書とともに、銀行が発行した振込金受取書を保存することにより、請求書等の保存があるものとして、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。
 なお、このように取引の都度、請求書等が交付されない取引について、取引の中途で取引の相手方(貸主)が適格請求書発行事業者でなくなる場合も想定され、その旨の連絡がない場合には貴社(借主)はその事実を把握することは困難となります(適格請求書発行事業者以外の者に支払う取引対価の額については、原則として、仕入税額控除を行うことはできません。)。そのため、必要に応じ、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」で相手方が適格請求書発行事業者か否かを確認してください。

(参考) 令和5年9月 30 日以前からの契約について
 令和5年9月 30 日以前からの契約について、契約書に登録番号等の適格請求書として必要な事項の記載が不足している場合には、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えありません。

(見積額が記載された適格請求書の保存等)
問 96 当社では、水道光熱費など検針等に一定期間を要し、課税仕入れを行った課税期間の末日までに支払対価の額が確定しない課税仕入れについては、対価の額を見積もることにより仕入税額控除を行っています。適格請求書等保存方式において、このような見積額による仕入税額控除の取扱いはどのようになりますか。【令和元年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 ご質問のように、課税期間の末日までにその支払対価の額が確定せず、見積額で仕入税額控除を行う場合の取扱いについては、以下のとおりとなります。
 なお、以下の①、②のいずれの場合も、その後確定した対価の額が見積額と異なるときは、確定した対価の額に基づく課税仕入れに係る消費税額と見積額に基づく課税仕入れに係る消費税額との差額を、その確定した日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額に加算又は減算することとなります(仕入税額の計算方法として、割戻し計算による場合、確定した対価の額と見積額との差額をその確定した日の属する課税期間の課税仕入れに係る支払対価の額に加算し、又は当該課税仕入れに係る支払対価の額から控除することとなります。)。
 ①  見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合
 取引の相手方から見積額が記載された適格請求書の交付を受ける場合、これを保存することで見積額による仕入税額控除が認められます(注1)。
 その後、確定額が見積額と異なる場合には、確定額が記載された適格請求書(対価の額を修正した適格請求書)の交付を受けた上で、これを保存する必要があります。
 ②  見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合
 見積額が記載された適格請求書の交付を受けられない場合であっても、電気・ガス・水道水の供給のような適格請求書発行事業者から継続して行われる取引(注2)については、見積額が記載された適格請求書や仕入明細書の保存がなくとも、その後、金額が確定したときに交付される適格請求書を保存することを条件として、課税仕入れを行う事業者が課税期間の末日の現況により適正に見積もった金額で、仕入税額控除を行うこととして差し支えありません(基通 11-6-8)。

(注)
 1  見積額を記載した仕入明細書を自ら作成し、相手方の確認を受けた場合は、これを保存することで見積額による仕入税額控除が認められます。確定額が見積額と異なる場合の取扱いは、上記と同様です。
 2  このほか、例えば、機械等の保守点検、弁護士の顧問契約のように契約等に基づき継続的に課税資産の譲渡等が行われ、金額が確定した際に適格請求書の交付を受ける蓋然性の高い取引がこれに該当します。

(出来高検収書の保存による仕入税額控除)
問 97 当社は、請け負った建設工事について、当該建設工事の一部を他の事業者(以下「下請業者」といいます。)に請け負わせています。下請業者に対しては、下請業者が行った工事の出来高について検収を行い、当該検収の内容及び出来高に応じた金額を記載した書類(以下「出来高検収書」といいます。)を作成し、それに基づき請負金額を支払っています。
 当該出来高検収書については、下請業者に記載事項の確認を受けており、これを保存することにより仕入税額控除を行っていますが、適格請求書等保存方式において、このような出来高検収書により仕入税額控除の適用を受けることは可能でしょうか。【令和4年11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下においても、建設工事を請け負った事業者(以下「元請業者」といいます。)が作成した出来高検収書を、下請業者に記載事項の確認を受けた上で保存することにより、仕入税額控除の適用を受けること(基通11-6-7)については、これまでの取扱いと変わりません。
 なお、出来高検収書は、適格請求書等保存方式における仕入明細書等の記載事項を満たす必要があります※。仕入明細書等の記載事項については、問87≪仕入明細書等の記載事項≫をご参照ください。

 ※  元請業者が出来高検収書を下請業者に交付し、それに基づき下請業者が請求書を作成・交付する場合において、当該請求書を仕入税額控除の適用を受けるために保存する場合には、当該請求書が適格請求書の記載事項を満たす必要があります。適格請求書の記載事項については、問25≪適格請求書の様式≫をご参照ください。

 したがって、ご質問の場合、貴社の取引の相手方である下請業者が適格請求書発行事業者であって、現在作成している出来高検収書を適格請求書等保存方式の下における仕入明細書等の記載事項を満たすものとして下請業者の確認を受けることにより、適格請求書等保存方式においてもその出来高検収書により仕入税額控除を行うことができます。
 ただし、下請業者の行う建設工事について、当該下請業者が適格請求書発行事業者でなくなったことにより、適格請求書の交付ができないものであることが判明した場合には、出来高検収書により仕入税額控除の対象とした消費税額を、その交付ができないことが明らかとなる建設工事完了日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額から控除することとなります(仕入税額の計算方法として、割戻し計算による場合、仕入税額控除の対象とした課税仕入れに係る支払対価の額をその建設工事完了日の属する課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額から控除することとなります。)。

(短期前払費用)
問 98 当社は、法人税基本通達2-2-14 の取扱いの適用を受けている前払費用について、その支出した日の属する課税期間の課税仕入れとしています。
 また、当該前払費用は相手方から交付を受けた請求書等に基づき支払っています。
 適格請求書等保存方式において、相手方から交付を受ける請求書等が適格請求書の記載事項を満たすものであった場合、当該前払費用について、支出した日の属する課税期間の課税仕入れとして仕入税額控除の適用を受けることができますか。【令和4年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 法人税の計算において、前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち支出した事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいいます。以下同じです。)の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、当該前払費用を損金の額に算入することが認められています(法人税基本通達2-2-14)(所得税についても同様です。)。
 消費税の計算についても、当該取扱いの適用を受ける前払費用に係る課税仕入れは、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱うこととしています(基通11-3-8)。
 したがって、このような前払費用については、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱うこととなりますが、当該前払費用に係る課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、適格請求書の保存が必要となり、ご質問のように当該前払費用に係る適格請求書等を保存している場合は、支出した日の属する課税期間の課税仕入れとして仕入税額控除の適用を受けることができます。
 また、当該前払費用に係る課税仕入れが適格請求書発行事業者から行われるものである場合には、当該前払費用を支出した日の属する課税期間において適格請求書の交付を受けられなかったとしても、事後に交付される適格請求書を保存することを条件として、当該前払費用として支出した額を基礎として仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 なお、当該前払費用として仕入税額控除の適用を受けた金額が契約変更等により変動した場合の対応については、問96《見積額が記載された適格請求書の保存等》をご参照ください。

(所有権移転外ファイナンス・リース取引で賃借人が賃貸借処理した場合の適格請求書の保存)
問 99 所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡時に適格請求書の交付義務が生じるとのことですが、当該リース取引につき賃借人が賃貸借処理し、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース譲渡時に交付を受ける適格請求書の保存により仕入税額控除の適用を受けることができますか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「リース取引」をいい、以下「移転外リース取引」といいます。)については、リース資産の譲渡として取り扱われるため、移転外リース取引によりリース資産を賃借した賃借人においては、当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間の課税仕入れとして処理(一括控除)することが原則です。
 しかしながら、経理実務の簡便性という観点から、移転外リース取引について賃借人が賃貸借処理(通常の賃貸借取引に係る取引に準じた会計処理をいいます。)している場合、リース資産の譲渡時の課税仕入れとするのではなく、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)して差し支えないこととしています。
 この点、移転外リース取引における適格請求書については、リース資産の引渡し時に当該リース取引の全額に対する適格請求書が交付されるものと考えられます。
 したがって、移転外リース取引について、賃借人が賃貸借処理によりそのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース資産の引渡し時に交付を受けた適格請求書を保存することにより、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間ごとに計上した課税仕入れに係る仕入税額控除の適用要件を満たすこととなります。
 なお、当該適格請求書については、リース料の最終支払期日(移転外リース取引について賃貸借処理により計上する最後の課税仕入れ)の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。

(注) 令和5年10月1日前に行われた移転外リース取引について、賃借人が賃貸借処理によりそのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理
(分割控除)している場合の当該移転外リース取引に係る同日以後に賃貸借処理により計上する課税仕入れについては、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることとなります。

(郵便切手類又は物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れの時期)
問 100 当社は、購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自社で引換給付を受けるものについては、継続的に郵便切手類又は物品切手等を購入した時に課税仕入れを計上していました。
 適格請求書等保存方式において、引き続き、郵便切手類又は物品切手等を購入した時に課税仕入れを計上しているものについて仕入税額控除の適用を受けることができますか。【令和4年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては原則として、課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時にその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなりますが、適格請求書等保存方式以前における取扱いとして、郵便切手類又は物品切手等を購入した事業者が、その購入した郵便切手類又は物品切手等のうち、自ら引換給付を受けるものにつき、継続してその郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合には、これを認めることとされていました。
 適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、適格請求書等の保存が必要となりますが、郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスは、適格請求書の交付義務が免除されており、買手においては、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができます(消令49①一ニ、消規15の4一)。
 また、物品切手等で適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されているものが、引換給付を受ける際に適格請求書発行事業者により回収される場合、当該物品切手等により役務又は物品の引換給付を受ける買手は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができます(消令49①一ロ)。
 したがって、このような郵便切手類及び物品切手等(適格請求書発行事業者により回収されることが明らかなものに限ります。)のうち、自ら引換給付を受けるものについては、適格請求書等保存方式においても、購入(対価の支払)時に課税仕入れとして計上し、一定の事項を記載した帳簿を保存することにより、仕入税額控除の適用を受けることができます(基通11-3-7)。
 なお、上記(一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができるもの)以外の物品切手等に係る課税仕入れは、購入(対価の支払)時ではなく、適格請求書等の交付を受けることとなるその引換給付を受けた時に課税仕入れを計上し、仕入税額控除の適用を受けることとなります。

(物品切手等により課税仕入れを行った場合における課税仕入れに係る支払対価の額)
問 101 当社は、購入した物品切手等により引換給付を受けた場合、当該物品切手等の購入金額を課税仕入れに係る支払対価の額としていました。
 適格請求書等保存方式においては、物品切手等により引換給付を受ける場合であっても、原則として、適格請求書等の保存が必要とのことですが、物品切手等の購入金額を基礎として仕入税額控除の適用を受けることになりますか。【令和4年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式以前の取扱いにおいて、物品切手等による引換給付として課税仕入れを行った場合の課税仕入れに係る支払対価の額は、事業者がその物品切手等の取得に要した金額とされていました。
 他方、適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、適格請求書等の保存が必要となりますので、物品切手等の取得(購入)に要した金額の如何にかかわらず、当該適格請求書等に記載された金額を基礎として仕入税額控除の適用を受けることとなります。
 なお、物品切手等に適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されているものが、引換給付を受ける際に適格請求書発行事業者により回収される場合、当該物品切手等により役務又は物品の引換給付を受ける買手は、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることができますが(新消令49①一ロ)、このような物品切手等には、適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されていることから、当該物品切手により引換給付を受ける課税仕入れについては、当該物品切手等に記載された金額を基礎として仕入税額控除の適用を受けることとなります。

(参考) 仕入税額の計算方法については、問126《仕入税額の計算方法》をご参照ください。

(提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録の保存方法)
問 102 当社は、取引先から、適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録の提供を受けています。仕入税額控除の要件を満たすためには、電磁的記録をどのような方法で保存すればよいですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 相手方から適格請求書の交付に代えて、適格請求書に係る電磁的記録による提供を受けた場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、その電磁的記録を保存する必要があります(消法 30⑦⑨二)。
提供を受けた電磁的記録をそのまま保存しようとするときには、以下の措置を講じる必要があります(消令50①、消規15の5)。
 ①  次のイからニのいずれかの措置を行うこと
 イ  タイムスタンプが付された適格請求書に係る電磁的記録を受領すること(受領した者がタイムスタンプを付す必要はありません。)(電帳規4①一)
 ロ  次に掲げる方法のいずれかにより、タイムスタンプを付すこと(電帳規4①二)
  ◼  適格請求書に係る電磁的記録の提供を受けた後、速やかにタイムスタンプを付すこと
  ◼  適格請求書に係る電磁的記録の提供からタイムスタンプを付すまでの各事務の処理に関する規程を定めている場合において、その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかにタイムスタンプを付すこと
 ハ  適格請求書に係る電磁的記録の記録事項について、次のいずれかの要件を満たす電子計算機処理システムを使用して適格請求書に係る電磁的記録の受領及びその電磁的記録を保存すること(電帳規4①三)
  ◼  訂正又は削除を行った場合には、その事実及び内容を確認することができること
  ◼  訂正又は削除することができないこと
 ニ  適格請求書に係る電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと(電帳規4①四)
 ②  適格請求書に係る電磁的記録の保存等に併せて、システム概要書の備付けを行うこと(電帳規2②一、⑥六、4①)
 ③  適格請求書に係る電磁的記録の保存等をする場所に、その電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、ディスプレイ及びプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、その電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力できるようにしておくこと(電帳規2②二、4①)
 ④  適格請求書に係る電磁的記録について、次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと(電帳規2⑥五、4①)

 ※  国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは、ⅱ及びⅲの要件が不要となります。また、当該電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合で、かつ、その判定期間に係る基準期間における売上高が5,000万円以下の事業者であるとき又は国税に関する法律の規定による電磁的記録の出力書面(整然とした形及び明瞭な状態で出力され、取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものに限る。)の提示又は提出の要求に応じることができるようにしているときは検索機能の全てが不要となります(注)。

(注) 令和5年12月31日までにやり取りした電磁的記録の場合は、基準期間の売上高が1,000万円以下であり、国税に関する法律の規定による電磁的記録の提示又は提出の要求に応じることができるようにしている場合に限り、検索要件の確保が不要となります。

 i  取引年月日その他の日付、取引金額及び取引先を検索条件として設定できること
 ii  日付又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること
 iii  二以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定できること
 他方、提供を受けた適格請求書に係る電磁的記録を紙に印刷して保存しようとするときは、整然とした形式及び明瞭な状態で出力する必要があります(消規15の5②)。

(参考) 電帳法上の保存方法等については、問102-2《適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の保存方法》及び国税庁ホームページに掲載されている、「電子帳簿保存法取扱通達解説(趣旨説明)」や「電子帳簿保存法一問一答」を参考としてください。

(適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の保存方法)
問 102-2 継続的な役務提供に係る課税仕入れについて、仕入先からは書面での適格請求書は交付されず、取引先が指定したホームページ上の「マイページ」等にログインし、契約ごとに電磁的記録をダウンロードすることとなっています。当社が仕入税額控除を行うには、これらの電磁的記録を毎月ダウンロードして保存する必要があるのでしょうか。なお、この電磁的記録は、7年間いつでもダウンロードして確認することが可能な状態になっています。【令和6年4月追加】

【答】
 売手である適格請求書発行事業者から適格請求書に代えて、適格請求書に係る電磁的記録による提供を受けた場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、その電磁的記録を保存する必要があります。その際、提供を受けた電磁的記録をそのまま保存しようとするときには、電帳法に準じた方法により保存することとされています(消令 50①、消規 15 の5)。
 この点、電帳法においては、ECサイト(インターネット上に開設された商品などを販売するウェブサイトをいいます。)で物品を購入したとき、ECサイト上の購入者の購入情報を管理するページ内において、領収書等データをダウンロードすることができる場合に、当該ECサイト上でその領収書等データの確認が随時可能な状態である場合には、必ずしもその領収書等データをダウンロードして保存していなくても差し支えないこととされています。
 こうした取扱いは、当該ECサイト提供事業者が、物品の購入者において満たすべき真実性の確保及び検索機能の確保の要件を満たしている場合に認められるものであり、また、当該領収書等データは各税法に定められた保存期間が満了するまで確認が随時可能である必要があります(その他、本取扱いに関する詳細については、国税庁ホームページに掲載されている「電子帳簿保存法一問一答」の「お問い合わせの多いご質問 電取追2」を参考としてください。)。
 これは、適格請求書に係る電磁的記録の保存においても同様であり、ご質問のように取引先 が指定したホームページ上の「マイページ」等にログインすることで、上記要件を満たした形で適格請求書に係る電磁的記録の確認が随時可能な状態である場合には、必ずしも当該電磁的記録をダウンロードせずとも、その保存があるものとして、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。

(参考) 電帳法において、例えば次のような事業者については、検索機能の確保の要件が不要とされています。
 ⑴  税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録の提示等の求めに応じることができるようにしている場合における
  ①  判定期間に係る基準期間における売上高が 5,000 万円以下の事業者
  ②  電磁的記録を出力した書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理されたものを提示・提出できるようにしている事業者
 ⑵  税務署長が相当の理由があると認め、かつ、保存義務者が税務調査等の際に、税務職員からの求めに応じ、その電磁的記録及び出力書面の提示等をすることができる場合には、その保存時に満たすべき要件にかかわらず電磁的記録の保存が可能となる措置(猶予措置)の対象となる事業者

(注) 令和5年 12 月 31 日までにやり取りした電磁的記録の場合は、基準期間の売上高が 1,000 万円以下であり、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録の提示等の求めに応じることができるようにしている場合に限り、検索要件の確保が不要となります。

 そのため、こうした事業者にあっては、取引先のホームページにおいて、検索機能の確保がなされていなかったとしても、適格請求書に係る電磁的記録の確認が随時可能な状態であれば、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 なお、上記⑴②、⑵における電磁的記録を出力した書面としては、必ずしも適格請求書そのものに係る電磁的記録でなくてもよく、当該取引に係る金額や取引年月日等の情報が判別できる資料でも差し支えありません。

(高速道路利用料金に係る適格簡易請求書の保存方法)
問 103 当社では高速道路を頻繁に利用するのですが、高速道路利用について、いわゆるETCシステムを利用し、後日、クレジットカードにより料金を精算しています。この場合、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書の保存により仕入税額控除を行うことはできますか。【令和5年 10 月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付するクレジットカード利用明細書は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成及び交付する書類ではなく、また、課税資産の譲渡等の内容や適用税率など、適格請求書の記載事項も満たしませんので、一般的に、適格請求書には該当しません。
 そのため、高速道路の利用について、有料道路自動料金収受システム(ETCシステム)により料金を支払い、ETCクレジットカード(クレジットカード会社がETCシステムの利用のために交付するカードをいい、高速道路会社が発行するETCコーポレートカード及びETCパーソナルカードを除きます。)で精算を行った場合に、支払った料金に係る仕入税額控除の適用を受けるには、原則、高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)から通行料金確定後、適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録(以下「利用証明書」といいます。)をダウンロードし、それを保存する必要があります。
 他方、高速道路の利用が多頻度にわたるなどの事情により、全ての高速道路の利用に係る利用証明書の保存が困難なときは、クレジットカード会社から受領するクレジットカード利用明細書
(個々の高速道路の利用に係る内容が判明するものに限ります。また、取引年月日や取引の内容、課税資産の譲渡等に係る対価の額が分かる利用明細データ等を含みます。)と、利用した高速道路会社及び地方道路公社など(以下「高速道路会社等」といいます。)の任意の一取引(複数の高速道路会社等の利用がある場合、高速道路会社等ごとに任意の一取引)に係る利用証明書をダウンロードし、併せて保存することで、仕入税額控除を行って差し支えありません。

(注)
 1  利用証明書については、クレジットカード利用明細書の受領ごとに(毎月)取得・保存する必要はなく、高速道路会社等が適格請求書発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、利用した高速道路会社等ごとに任意の一取引に係る適格簡易請求書の記載事項を満たした利用証明書を一回のみ取得・保存することで差し支えありません。また、例えば、A高速道路会社からB高速道路会社を経由してC高速道路会社の料金所で降りた際、C高速道路会社がまとめて利用証明書を発行している場合には、C高速道路会社の利用証明書を保存することになります。
 2  適格請求書等につき、電磁的記録による提供を受けた場合、仕入税額控除の適用を受けるためには、電帳法に準じた方法により保存する必要があります(消令 50①、消規 15の5)。この点、電帳法においては、当該適格請求書等の電磁的記録をダウンロードすることができる場合に、当該適格請求書等に係る電磁的記録の確認が随時可能な状態である場合には、必ずしも当該電磁的記録をダウンロードせずとも、その保存があるものとして、仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 そのため、ETC利用照会サービスにおいてダウンロードできる期間(15 か月間)に、繰り返し、同じ高速道路会社等の道路を利用しているような場合は、いつでも利用証明書をダウンロードできる状態にあるため、結果として、利用証明書のダウンロードは不要となり、クレジットカード利用明細書の保存のみで仕入税額控除の適用を受けることが可能です。なお、ダウンロードできる期間を超えて利用間隔に開きがある高速道路会社等の道路については、利用証明書のダウンロードが必要になりますのでご注意ください。
 3  空港と内陸部を結ぶ連絡橋の通行料金(空港連絡橋利用税)など、消費税の課税対象とならない金額がある場合、その金額は仕入税額控除の対象外となりますのでご留意ください。
 4  国税庁ホームページ「インボイス制度特設サイト」に掲載しているユーチューブ動画「3分でわかる インボイスETC対応」も併せてご参照ください。

(金融機関の入出金手数料や振込手数料に係る適格請求書の保存方法)
問 103-2 金融機関の窓口又はオンラインで決済を行った際の金融機関の入出金手数料や振込手数料について、仕入税額控除の適用を受けるために、何を保存すればよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 入出金手数料や振込手数料について仕入税額控除の適用を受けるには、原則として適格簡易請求書及び一定の事項が記載された帳簿の保存が必要となります(注1)(消法 30⑦)。
 他方、金融機関における入出金や振込みが多頻度にわたるなどの事情により、全ての入出金手数料及び振込手数料に係る適格簡易請求書の保存が困難なときは、金融機関ごとに発行を受けた通帳や入出金明細等(個々の課税資産の譲渡等(入出金サービス・振込サービス)に係る取引年月日や対価の額が判明するものに限ります。)と、その金融機関における任意の一取引(一の入出金又は振込み)に係る適格簡易請求書を併せて保存する(注2・3)ことで、仕入税額控除を行って差し支えありません。
 また、基準期間における課税売上高が1億円以下であるなど一定規模以下の事業者については、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置(少額特例)も設けられていますので、上記のような対応は必要ありません(28 年改正法附則 53 の2、改正令附則 24 の2①)(少額特例の詳細については、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。)。

(注)
1  一般的に、金融機関の入出金サービスや振込サービスについては、不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業に該当し、適格簡易請求書の交付対象になるものと解されます。また、金融機関のATMによるものである場合、機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結するものとして、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除が可能です(詳細については、問 47《自動販売機及び自動サービス機の範囲》をご参照ください。)。
2  インターネットバンキングなど、オンラインで振込みを行った際の手数料等について、電磁的記録により適格簡易請求書が提供される場合には、当該電磁的記録をダウンロードする必要があります。ただし、同種の手数料等の支払いが繰り返し行われているような場合において、当該手数料等の適格簡易請求書に係る電磁的記録が、インターネットバンキング上で随時確認可能な状態であるなど一定の要件を満たすのであれば、必ずしも当該適格簡易請求書に係る電磁的記録をダウンロードせずとも、仕入税額控除の適用を受けることが可能です(電子帳簿保存法の取扱いについては「電子帳簿保存方法一問一答」の「お問合せの多いご質問 電取追2-2」をご参照ください。)。
3  金融機関が適格請求書発行事業者の登録を取りやめないことを前提に、一回のみ取得・保存することで差し支えありません。また、金融機関から各種手数料に係るお知らせ(適格請求書発行者の氏名又は名称及び登録番号、適用税率、取引の内容が記載されたものに限ります。)を受領した場合には、当該一のお知らせを保存することで適格簡易請求書の保存に代えることが可能です。
4  国税庁ホームページ「インボイス制度特設サイト」に掲載しているユーチューブ動画「3分でわかる 銀行振込手数料のインボイス対応」も併せてご参照ください。

(電気通信利用役務の提供と適格請求書の保存)
問 103-3 当社は、国外事業者との間でリバースチャージ方式の対象となる取引(インターネット広告の配信)や、消費者向け電気通信利用役務の提供に該当する取引(電子書籍の購入)を行っていますが、仕入税額控除を行うために適格請求書の保存は必要でしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 国外事業者が行う「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」(例:「インターネット広告の配信」等)については、特定課税仕入れとして、当該役務の提供を受けた国内事業者に申告納税義務が課されます(リバースチャージ方式)(消法5①、28②、45①)。また、当該リバースチャージ方式により申告・納税を行う消費税額については、仕入税額控除の対象となりますが、その適用要件として適格請求書の保存は必要なく、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となります(消法 30⑦)。
 これに対し、国外事業者が行う事業者向け電気通信利用役務の提供以外の電気通信利用役務の提供(いわゆる消費者向け電気通信利用役務の提供)(例:「電子書籍・音楽の配信」等)について仕入税額控除の適用を受けるためには、売手である国外事業者から交付を受けた適格請求書(当該適格請求書の記載事項に係る電磁的記録を含みます。)の保存が必要です(消法 30⑦)。
 また、国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供について、適格請求書の保存がない場合に、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて一定割合(80%、 50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることはできませんが(改正令附則 24)、少額特例(一定規模以下の事業者が、令和5年 10 月1日から令和 11 年9月 30 日までの間に行う税込み1万円未満である課税仕入れについて、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置)の適用を受けることはできます(28 年改正法附則 53 の2、改正令附則 24 の2①)。
 詳細については、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。

(注) 令和5年9月1日時点で登録国外事業者(適格請求書等保存方式の開始前において、消費者向け電気通信利用役務の提供を行うため、国税庁長官の登録を受けた国外事業者をいいます。)であり、かつ、同日において「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない事業者は、令和5年 10 月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされ、登録番号(T+13 桁の数字)が付番されています(28 年改正法附則 45①)。
 また、そうした国外事業者においては、令和6年3月 31 日までは登録国外事業者として付番されている番号(00001 等の5桁の番号)を登録番号として適格請求書に記載することができることとされています。

(参考) 電気通信利用役務の提供やリバースチャージ方式の詳細については、「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について」をご参照ください。

Ⅳ 適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件
(3 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合)
(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合)
問 104 適格請求書等保存方式の下では、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件ですが、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の要件を満たすのは、どのような場合ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされます(消法30⑦)。
 ただし、請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消令49①、消規15の4)。
 ①  適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
 ②  適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。)
 ③  古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物(古物営業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
 ④  質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物(質屋を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の取得
 ⑤  宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物(宅地建物取引業を営む者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
 ⑥  適格請求書発行事業者でない者からの再生資源及び再生部品(購入者の棚卸資産に該当するものに限ります。)の購入
 ⑦  適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
 ⑧  適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)
 ⑨  従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

(公共交通機関による旅客の運送)
問 105 取引先への移動に際し、券売機で乗車券を購入し、公共交通機関である鉄道を利用した場合に、仕入税額控除の要件として請求書等の保存は必要ですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一イ、70の9②一)。
一方、3万円以上の公共交通機関を利用した場合には、その利用に係る適格請求書の保存が仕入税額控除の要件となりますので、ご留意ください。
 ただし、この場合であっても、公共交通機関である鉄道事業者から適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)を記載した乗車券の交付を受け、その乗車券が回収される場合は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消令49①一ロ)。
 なお、この場合の帳簿の記載事項については、問110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》をご参照ください。

(参考)
 ◼  適格請求書の交付義務が免除される取引:問 41 参照
 ◼  公共交通機関特例の3万円未満の判定単位:問 43 参照

(古物商等の古物の買取り等)
問 106 当社は、中古車販売業(古物商)を営んでおり、事業者及び消費者から中古車の仕入れを行っています。
適格請求書等保存方式の下では、消費者からの仕入れは、仕入税額控除を行うことはできないのですか。【令和6年4月改訂】

【答】
 古物営業法上の許可を受けて古物営業を営む古物商が、適格請求書発行事業者以外の者から同法に規定する古物(古物商が事業として販売する棚卸資産に該当するものに限ります。)を買い受けた場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一ハ⑴)。したがって、貴社が消費者から中古車の仕入れを行った場合には、一定の事項を記載した帳簿を保存することで、仕入税額控除が認められます(以下「古物商等特例」といいます。)(注)。

(注) 令和6年度税制改正により、輸出物品販売場(いわゆる免税店)で消費税が免除された物品(免税購入品)であることを知りながら行った課税仕入れについては、古物商等特例の適用の有無にかかわらず、仕入税額控除制度の適用を受けることができないこととされました(令和6年4月1日以後に行う課税仕入れから適用されます。)。

 なお、相手方が適格請求書発行事業者である場合は、適格請求書の交付を受け、それを保存する必要があります。
 この場合の帳簿の記載事項については、問110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》をご参照ください。
 また、古物商が適格請求書発行事業者以外の者から古物を買い取る場合のほか、適格請求書発行事業者以外の者から仕入れを行う、次の場合も同様に、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることが困難な場合として、一定の事項が記載された帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消令49①一ハ⑵~⑷)。
 ①  質屋営業法に規定する質屋営業を営む質屋が、適格請求書発行事業者以外の者から質物(質屋が事業として販売する棚卸資産に該当するものに限ります。)を取得する場合
 ②  宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業者が、適格請求書発行事業者以外の者から同法に規定する建物(宅地建物取引業者が事業として販売する棚卸資産に該当するものに限ります。)を購入する場合
 ③  再生資源卸売業その他不特定かつ多数の者から資源の有効な利用の促進に関する法律に規定する再生資源及び再生部品を購入する事業を営む事業者が、適格請求書発行事業者以外の者から再生資源及び再生部品(購入する事業者が事業として販売する棚卸資産に該当するものに限ります。)を購入する場合

【参考】
○  古物営業法第2条(定義)
 この法律において「古物」とは、一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。
 2  この法律において「古物営業」とは、次に掲げる営業をいう。
  一  古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの
  二  古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場をいう。以下同じ。)を経営する営業
  三  古物の売買をしようとする者のあつせんを競りの方法(政令で定める電子情報処理組織を使用する競りの方法その他の政令で定めるものに限る。)により行う営業(前号に掲げるものを除く。以下「古物競りあつせん業」という。)
 3  この法律において「古物商」とは、次条の規定による許可を受けて前項第一号に掲げる営業を営む者をいう。
 4・5  (省略)
○  質屋営業法第1条(定義)
 この法律において「質屋営業」とは、物品(有価証券を含む。第二十二条を除き、以下同じ。)を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業をいう。
 2  この法律において「質屋」とは、質屋営業を営む者で第二条第一項の規定による許可を受けたものをいう。
○  宅地建物取引業法第2条(用語の定義)
 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
 一  (省略)
 二  宅地建物取引業 宅地若しくは建物(建物の一部を含む。以下同じ。)の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
 三  宅地建物取引業者 第三条第一項の免許を受けて宅地建物取引業を営む者をいう。四 (省略)
○  資源の有効な利用の促進に関する法律第2条(定義)
 この法律において「使用済物品等」とは、一度使用され、又は使用されずに収集され、若しくは廃棄された物品(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。
 2・3  (省略)
 4  この法律において「再生資源」とは、使用済物品等又は副産物のうち有用なものであって、原材料として利用することができるもの又はその可能性のあるものをいう。
 5  この法律において「再生部品」とは、使用済物品等のうち有用なものであって、部品その他製品の一部として利用することができるもの又はその可能性のあるものをいう。

(返信用封筒に貼付した郵便切手に係る仕入税額控除の適用)
問 106-2 当社は、取引先に書類を送付し、その控えを返信用封筒で当社に送り返してもらうこととしています。この際、封筒に同封する返信用封筒に郵便切手をあらかじめ貼付していますが、この郵便切手により返送を受けるという引換給付についても仕入税額控除を行ってよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 郵便切手類は、購入時においては原則として、課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時にその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなります。
 適格請求書等保存方式においては、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として適格請求書等の保存が必要となりますが、郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスは、適格請求書の交付義務が免除されており、買手においては、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができます(基通 11-3-7)。この点、ご質問のように、返信用封筒に貼付された郵便切手類(自らが購入した郵便切手類) により返送を受けるのであれば、郵便切手類のみを対価とする郵便ポスト等への投函による郵便サービスを受けたものとして、帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うこととして差し支えありません。

(注) この場合、当該郵便切手類の購入時に仕入税額控除を行うことも可能ですが、その後、返送を受けないことが明らかとなった際には、その明らかとなった課税期間において、仕入控除税額を調整することとして差し支えありません。

(出張旅費、宿泊費、日当等)
問 107 社員に支給する国内の出張旅費、宿泊費、日当等については、社員は適格請求書発行事業者ではないため、適格請求書の交付を受けることができませんが、仕入税額控除を行うことはできないのですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われます。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一ニ、消規15の4二、基通11-6-4)。
 なお、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「その旅行に通常必要であると認められる部分」については、所得税基本通達9-3に基づき判定しますので、所得税が非課税となる範囲内で、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることになります。
 また、この場合の帳簿の記載事項については、問110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》をご参照ください。

【参考】
○  所得税基本通達9-3(非課税とされる旅費の範囲)
 法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
 ⑴  その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
 ⑵  その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。

(実費精算の出張旅費等)
問 107-2 当社は、社員が出張した場合、旅費規程や日当規程に基づき出張旅費や日当を支払っています。この際、実際にかかった費用に基づき精算を行うため、社員からは、支払の際に受け取った適格請求書等を徴求することとしています。この実費に係る金額について、帳簿のみの保存(従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等)により仕入税額控除を行ってもよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法 30⑦、消令 49①一ニ、消規 15 の4二、基通 11-6-4)。
 この社員に対する支給には、概算払によるもののほか、実費精算されるものも含まれますので、実費精算に係るものであっても、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うことができます。

(注) 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「その旅行に通常必要であると認められる部分」については、所得税基本通達9-3に基づき判定しますので、所得税が非課税となる範囲内で、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることになります。

(参考) 実費精算が貴社により用務先へ直接対価を支払っているものと同視し得る場合には、通常必要と認められる範囲か否かにかかわらず、他の課税仕入れと同様、一定の事項を記載した帳簿及び社員の方から徴求した適格請求書等の保存により仕入税額控除を行うこととなります。
 その際、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送など、一定の課税仕入れに当たるのであれば、当該帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法 30⑦、消令 49①一イ、70 の9②一)。

(派遣社員等や内定者等へ支払った出張旅費等の仕入税額控除)
問 107-3 当社は、自社で雇用している従業員と同様に、派遣社員や出向社員が出張した際にも、旅費規程に基づき出張旅費を支払っています。当該出張旅費については、派遣元企業や出向元企業を通じて当該社員に支払われることになるのですが、仕入税額控除の要件として派遣元企業や出向元企業から請求書等の交付を受け、これを保存する必要はありますか。また、内定者や採用面接者に対し、内定者説明会会場や面接会場までの交通費等を支給する場合の取扱いはどうなりますか。【令和6年4月追加】

【答】
 従業員等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等(以下「出張旅費等」といいます。)のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法 30⑦、消令 49①一ニ、消規 15 の4二、基通 11-6-4)(以下「出張旅費等特例」といいます。)。

1  派遣社員や出向社員に対して支払われる出張旅費等について
 派遣社員や出向社員(以下「派遣社員等」といいます。)に対して支払われる出張旅費等については、それぞれ次のとおり取り扱うこととなります。
 ⑴  派遣元企業等に支払うもの
 当該出張旅費等が直接的に派遣社員等へ支払われるものではなく、派遣元企業や出向元企業(以下「派遣元企業等」といいます。)に支払われる場合、派遣先企業や出向先企業(以下
「派遣先企業等」といいます。)においては、人材派遣等の役務の提供に係る対価として、仕入税額控除に当たり派遣元企業等から受領した適格請求書の保存が必要となります。
 ⑵  派遣元企業等を通じて派遣社員等に支払うもの
 派遣元企業等が当該出張旅費等を預かり、そのまま派遣社員等に支払われることが派遣契約や出向契約等において明らかにされている場合には、派遣先企業等において、出張旅費等特例の対象として差し支えありません。この場合、当該出張旅費等に相当する金額について、派遣元企業等においては立替払を行ったものとして課税仕入れには該当せず、仕入税額控除を行うことはできません。

2  内定者や採用面接者に対して支払われる交通費等について
 内定者のうち、企業との間で労働契約が成立していると認められる者※に対して支給する交通費等については、通常必要であると認められる部分の金額について出張旅費等特例の対象として差し支えありません。

 ※  労働契約が成立していると認められるか否かは、例えば、企業から採用内定通知を受け、入社誓約書等を提出している等の状況を踏まえて判断されることとなります。
 一方、採用面接者は通常、従業員等に該当しませんので、支給する交通費等について、出張旅費等特例の対象にはなりません。

(注)
 1  出張旅費等特例の対象となる出張旅費等や交通費等(以下「旅費交通費等」といいます。)には、概算払によるもののほか、実費精算されるものも含まれます。なお、出張旅費等特例の対象とならない場合の派遣社員等、内定者又は採用面接者(以下「派遣社員・内定者等」といいます。)に対して支払われる旅費交通費等については、貴社が当該旅費交通費等を派遣社員・内定者等を通じて公共交通機関(船舶、バス、鉄道又は軌道)に直接支払っているものと同視し得る場合には、3万円未満の支払について、一定の事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除が認められます(以下「公共交通機関特例」といいます。)。
 2  海外出張のために支給する出張旅費等については、原則として課税仕入れには該当しません。
 3  上記の出張旅費等特例や公共交通機関特例の対象にはならない旅費交通費等について仕入税額控除の適用を受けるには、派遣社員・内定者等が交付を受けた旅費交通費等に係る適格請求書又は適格簡易請求書の提出を受け、それを保存する必要があります(宛名として派遣社員・内定者等の氏名が記載されている場合には、原則として、立替金精算書の保存も必要となります。詳細については、問94-2《従業員が立替払をした際に受領した適格簡易請求書での仕入税額控除》をご参照ください。)。

(通勤手当)
問 108 社員に支給する通勤手当については、社員は適格請求書発行事業者ではないため、適格請求書の交付を受けることができませんが、仕入税額控除を行うことはできないのですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 従業員等で通勤する者に支給する通勤手当のうち、通勤に通常必要と認められる部分の金額については、課税仕入れに係る支払対価の額として取り扱われます。この金額については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①一ニ、消規15の4三、基通11-6-5)。
 なお、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる「通勤者につき通常必要と認められる部分」については、通勤に通常必要と認められるものであればよく、所得税法施行令第20条の2において規定される非課税とされる通勤手当の金額を超えているかどうかは問いません。
 また、この場合の帳簿の記載事項については、問110《帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項》をご参照ください。

(クレジットカードにより決済されるタクシーチケットに係る回収特例の適用)
問 108-2 当社は、クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットを利用しています。そうしたタクシーチケットは、タクシー事業者等が発行しているものとは異なり、クレジットカード利用明細書しか送られてこず、また、タクシーチケット自体取引先等に手交していることから、タクシーを利用した際に交付を受ける適格簡易請求書の保存をすることもできません。この場合、当社は仕入税額控除の適用を受けるためにどうすべきでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 クレジットカード会社が発行しているタクシーチケットにつき、その使用された金額について仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、その使用に当たってタクシー事業者(当該タクシー事業者に係る事業者団体など、個々の契約等により当該タクシー利用に係る課税売上げを計上すべきこととされている者を含みます。以下同じです。)から受領した適格簡易請求書の保存が必要となります。
 しかしながら、ご質問のようにタクシーチケットは取引先等に手交されることも多いことを踏まえれば、適格簡易請求書の保存が困難といった事情があると考えられます。そのため、受領したクレジットカード利用明細書及び以下の資料に記載された内容等に基づき、利用されたタクシー事業者が適格請求書発行事業者であることが確認できる場合には、適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている証票が使用の際に回収される取引として、帳簿のみの保存により仕入税額控除の適用を受けることとして差し支えありません。
 ◼  利用されたタクシー事業者のホームページ
 ◼  クレジットカード会社のホームページ等に掲載されている利用可能タクシー一覧
 なお、適格請求書発行事業者以外のタクシー事業者の利用であったことが確認された場合には、当該タクシー利用時に受領した領収書(未収書等)や、別途当該タクシー事業者から発行を受けた書類など、区分記載請求書の記載事項を満たした書類及び一定の事項を記載した帳簿の保存があれば、仕入税額相当額の一定割合(80%、50%)を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けることができます(28年改正法附則52、53)。

Ⅳ 適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件
(4 帳簿の保存)
(適格請求書等保存方式における帳簿に記載が必要な事項)
問 109 令和5年 10 月1日から、仕入税額控除の方式は、「適格請求書等保存方式」となりましたが、仕入税額控除の要件として保存が必要な帳簿の記載事項について教えてください。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 令和元年9月30日まで、仕入税額控除については、一定の帳簿及び請求書等の保存が要件とされていました(請求書等保存方式)。
 また、令和元年10月1日から令和5年9月30日(適格請求書等保存方式の開始前)までの間は、この仕入税額控除の要件について、請求書等保存方式を基本的に維持しつつ、軽減税率の適用対象となる商品の仕入れかそれ以外の仕入れかの区分を明確にするための記載事項を追加した帳簿及び請求書等の保存が要件とされていました(区分記載請求書等保存方式)。
 具体的には、請求書等保存方式において必要とされている記載事項に、次の事項が追加されています(28年改正法附則34②)。
 1  帳簿
 課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合にはその旨
 2  区分記載請求書等
  ◼  課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合にはその旨
  ◼  税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額

 令和5年10月1日から開始された適格請求書等保存方式の下では、帳簿及び請求書等の保存 が要件とされているところ、保存すべき帳簿の記載事項については次のとおりであり、区分記 載請求書等保存方式の下での帳簿の記載事項と同様です(相手方の登録番号の記載は不要です。)。
 ①  課税仕入れの相手方の氏名又は名称
 ②  課税仕入れを行った年月日
 ③  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)
 ④  課税仕入れに係る支払対価の額

(参考) 取引先コード等による表示
 帳簿に記載する課税仕入れの相手方の氏名又は名称は、取引先コード等の記号・番号等による表示で差し支えありません。
 また、課税仕入れに係る資産又は役務の内容についても、商品コード等の記号・番号等による表示で差し支えありませんが、この場合、課税資産の譲渡等であるか、また、軽減対象課税資産の譲渡等に係るものであるときは、軽減対象課税資産の譲渡等に係るものであるかの判別が明らかとなるものである必要があります(基通 11-6- 1)。

○  請求書等保存方式、区分記載請求書等保存方式及び適格請求書等保存方式の帳簿の記載事項の比較(消法 30⑧、28 年改正法附則 34②、旧消法 30⑧)

(帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿への一定の記載事項)
問 110 3万円未満の公共交通機関による旅客の運送などは、請求書等の保存が不要で、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除を行うことができるそうですが、この場合の帳簿への記載事項について教えてください。【令和5年 10 月改訂】【令和6年4月改訂】

【答】
 請求書等の交付を受けることが困難であるなどの理由により、次の取引については、一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます(消法30⑦、消令49①、消規15の4)。
 ①  適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
 ②  適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引(①に該当するものを除きます。以下「回収特例」といいます。)
 ③  古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
 ④  質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
 ⑤  宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
 ⑥  適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入
 ⑦  適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等
 ⑧  適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストにより差し出されたものに限ります。)
 ⑨  従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)
  この場合、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要となります。
  ◼  帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
   例:①に該当する場合、「3万円未満の鉄道料金」
     ⑦に該当する場合、「自販機」、「ATM」
  ◼  仕入れの相手方の住所又は所在地
   例:②に該当する場合(3万円以上のもの)、「○○施設 入場券」

(注) 帳簿に仕入れの相手方の住所又は所在地の記載が不要な課税仕入れは、次のとおりです(令和5年国税庁告示第26号)。
 イ  上記①の課税仕入れ
 ロ  上記②の課税仕入れのうち3万円未満のもの
 ハ  上記③から⑥の課税仕入れ(③から⑤に係る課税仕入れについては、古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により、業務に関する帳簿等へ相手方の氏名及び住所を記載することとされているもの以外のものに限り、⑥に係る課税仕入れについては、事業者以外の者から受けるものに限ります。)
 ニ  上記⑦から⑨の課税仕入れ

(参考) 古物営業を営む場合、古物営業法において、商品を仕入れた際の対価の総額が1万円以上(税込み)の場合には、帳簿(いわゆる「古物台帳」)に①取引年月日、②古物の品目及び数量、③古物の特徴、④相手方の住所、氏名、職業及び年齢、⑤相手方の確認方法を記載し、保存しなければならないこととされています(古物営業法16、18)。
 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿の記載事項は「、①課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地(古物台帳に、取引の相手方の氏名や住所を記載することとされていない場合には不要)」、「②課税仕入れを行った年月日」、「③課税仕入れに係る資産又は役務の内容」、「④課税仕入れに係る支払対価の額」、「⑤帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨」ですが、古物台帳には①から④の事項が記載されていることになります。
 なお、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の帳簿の記載事項としては、⑤の事項も必要となるため、古物台帳と⑤の事項について記載した帳簿(総勘定元帳等)を合わせて保存することで、帳簿の保存要件を満たすことができます。
 この場合、古物台帳については帳簿の保存期間(課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間)保存しておく必要がある点にご留意ください(消令71②)。

(自動販売機特例又は回収特例における3万円未満の判定単位)
問 110-2 帳簿の記載事項である「仕入れの相手方の住所又は所在地」の記載が不要となる、自動販売機や自動サービス機からの商品の購入等又は3万円未満の課税仕入れについて回収特例が適用される取引かどうかは、どのような単位で判定するのですか。【令和6年4月追加】

【答】
 売手における適格請求書の交付義務が免除されている3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等又適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される課税仕入れ(3万円未満のものに限ります。)については、帳簿に仕入れの相手方の住所又は所在地を記載する必要はありません(消令49①、令和5年国税庁告示第26号)。
 これらの取引に該当するかどうかは、1回の取引の税込価額が3万円未満かどうかで判定します。
 例:①  自動販売機で飲料(1本150円)を20本(3,000円)購入する場合
   ⇒1回の商品購入金額(1本150円)で判定
   ②  〇〇施設の入場券(1枚2,000円)を4枚(8,000円)購入し使用する場合
   ⇒1回の使用金額(4枚8,000円)で判定

(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)
問 111 一定規模以下の事業者は、1万円未満の課税仕入れについて、一定期間、適格請求書の保存を要しないとのことですが、その内容について教えてください。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 基準期間※1における課税売上高が1億円以下又は特定期間※2における課税売上高※3が5千万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿※4のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置(少額特例)が設けられています(28年改正法附則 53の2、改正令附則24の2①)。

※1  基準期間とは、個人事業者についてはその年の前々年、法人についてその事業年度の前々事業年度をいいます(消法2①十四)。
 2  特定期間とは、個人事業者についてはその年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人についてはその事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間をいいます(消法9の 2④)。
 3  特定期間における課税売上高については、納税義務の判定における場合と異なり、課税売上高に代えて給与支払額の合計額によることはできません。
 4  当該経過措置の適用に当たっては、帳簿に「経過措置(少額特例)の適用がある旨」を記載する必要はありません。

(注)
 1  新たに設立した法人における基準期間のない課税期間については、特定期間の課税売上高が5千万円超となった場合であっても、当該課税期間について、本経過措置の適用を受けることができます。
 2  適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れであっても、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には本経過措置の対象となります。

(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置における1万円未満の判定単位)
問 112 一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)については、1万円未満の課税仕入れが対象とのことですが、どのような単位となりますか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 一定規模以下の事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存により、当該課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けることができる経過措置が設けられています(28年改正法附則53の2、改正令附則24の2①)。
 また、ここでいう「課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満」に該当するか否かについては、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)が1万円未満かどうかで判定するため、課税仕入れに係る一商品ごとの金額により判定するものではありません。この考え方は、公共交通機関特例における「3万円未満の公共交通機関による旅客の運送」の判定と同様です。この考え方の詳細については、問43《公共交通機関特例の3万円未満の判定単位》をご参照ください。
 なお、基本的には、取引ごとに納品書や請求書といった書類等の交付又は提供を受けることとが一般的であるため、そのような書類等の単位で判定することが考えられます。

(注) 月まとめ請求書のように複数の取引をまとめた単位により判定することとはならないことにご留意ください。

 例:①  5,000円の商品をXX月3日に購入、7,000円の商品をXX月10日に購入し、それぞれで請求・精算
   ⇒  それぞれ1万円未満の取引となり、本経過措置の対象
   ②  5,000円の商品と7,000円の商品(合計額12,000円)を同時に購入
   ⇒  1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外
   ③  1回8,000円のクリーニングをXX月2日に1回、XX月15日に1回行い、それぞれで請求・精算
   ⇒  それぞれ1万円未満の取引となり、本経過措置の対象
   ④  月額100,000円の清掃業務(稼働日数:12日)
   ⇒  1万円以上の取引となり、本経過措置の対象外

Ⅳ 適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件
(5 経過措置)
(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置)
問 113 適格請求書等保存方式の開始後一定期間は、免税事業者等からの仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があるそうですが、この場合の仕入税額控除の要件について教えてください。【令和6年4月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者。以下「免税事業者等」といいます。)からの課税仕入れについては、仕入税額控除のために保存が必要な請求書等の交付を受けることができないことから、仕入税額控除を行うことができません(消法30⑦)。
 ただし、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、免税事業者等からの課税仕入れであっても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています(注)(28年改正法附則52、53)。

 なお、この経過措置の適用を受けるためには、次の事項が記載された帳簿及び請求書等の保存が要件となります。

1  帳簿
 区分記載請求書等保存方式の記載事項に加え、例えば、「80%控除対象」「免」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨の記載が必要となります。
 具体的には、次の事項となります。
 ①  課税仕入れの相手方の氏名又は名称
 ②  課税仕入れを行った年月日
 ③  課税仕入れに係る資産又は役務の内容(課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨)及び経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨
 ④  課税仕入れに係る支払対価の額

(参考1) ③の「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」の記載については、個々の取引ごとに「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」などと記載する方法のほか、例えば、本経過措置の適用対象となる取引に、「※」や「☆」といった記号・番号等を表示し、かつ、これらの記号・番号等が「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を別途「※(☆)は80%控除対象」などと表示する方法も認められます。

2  請求書等
 区分記載請求書等と同様の記載事項が必要となります(区分記載請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録を含みます。)。
 具体的には、次の事項となります。
 ①  書類の作成者の氏名又は名称
 ②  課税資産の譲渡等を行った年月日
 ③  課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
 ④  税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
 ⑤  書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称

(参考2) 免税事業者等から受領した請求書等の内容について、③かっこ書きの「軽減対象資産の譲渡等である旨」及び④の「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」の記載がない場合に限り、受領者が自ら請求書等に追記して保存することが認められます。
 なお、提供された請求書等に係る電磁的記録を整然とした形式及び明瞭な状態で出力した書面に追記して保存している場合も同様に認められます。

(適格請求書発行事業者からの課税仕入れに係る経過措置の適用等)
問 113-2 当社は、仕入先が多数あり、登録番号の記載のない請求書の交付を受けることも多くあります。この場合、登録番号の記載のない請求書等に係る課税仕入れについて、適格請求書発行事業者から交付を受けたものを含め、一律に、その仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置の適用を受けてもよいでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 適格請求書発行事業者以外の者(消費者、免税事業者又は登録を受けていない課税事業者)からの課税仕入れであっても、適格請求書等保存方式開始から一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置(注)が設けられています(28 年改正法附則 52、53)。
 ただし、当該経過措置の適用は、取引の相手方が適格請求書発行事業者以外の者である場合に限りませんので、例えば適格請求書発行事業者から交付を受けた登録番号のない請求書等を含め、区分記載請求書等の記載事項を満たしたものの保存がある場合には、一律に、当該経過措置の適用を受けることとなります。

(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置〈2割特例〉)
問 114 適格請求書等保存方式の開始後一定期間は、適格請求書発行事業者の登録により課税事業者となった免税事業者については、消費税の申告について簡易に計算できる経過措置(2割特例)があるそうですが、その内容について教えてください。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者(免税事業者が「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった場合を含みます。)が適格請求書発行事業者となる場合(注)には、納付税額の計算において控除する金額を、その課税期間における課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額に8割を乗じた額(以下「特別控除税額」といいます。)とすることができる経過措置(以下「2割特例」といいます。)が設けられています(28年改正法附則51の2①②)。

(注) 課税事業者が適格請求書発行事業者となった場合であっても、当該適格請求書発行事業者となった課税期間の翌課税期間以後の課税期間について、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができます。

 また、2割特例は、簡易課税制度のように事前の届出や継続して適用しなければならないという制限はなく、申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することにより、適用を受けることができます(28年改正法附則51の2③)。
なお、2割特例の適用を受けることができない課税期間については、問115《2割特例の適用ができない課税期間①》及び問11《6 2割特例の適用ができない課税期間②》をご参照ください。

(2割特例の適用ができない課税期間①)
問 115 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)は、基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間などについては適用できないとのことですが、具体的に教えてください。【令和5年4月追加】【令和6年4月改訂】

【答】
 2割特例は、適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者(「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます※。)が適格請求書発行事業者となる場合に適用することができます(28年改正法附則51の2①)。
 ただし、以下の課税期間については、2割特例の適用を受けることはできません。
 ※  適格請求書等保存方式の開始前である令和5年9月30日以前の期間を含む申告については、2割特例の適用はありません。詳細については、問116《2割特例の適用ができない課税期間②》をご参照ください。

【恒久的施設を有しない場合】
 ①  2割特例の適用を受けようとする課税期間の初日において恒久的施設(所得税法又は法人税法に規定する「恒久的施設」をいいます。)を有しない国外事業者が令和6年10月1日以後に開始する課税期間(28年改正法附則51の2①)

【過去の売上が一定金額以上ある場合】
 ②  基準期間の課税売上高が1千万円を超える課税期間(消法9①)
 ③  特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(消法9の2①)
 ④  相続(注1)・合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(消法10、11、12)
  (注)1 相続のあった課税期間について、当該相続により事業者免税点制度の適用が制限される場合であっても、適格請求書発行事業者の登録が相続日以前であり、他の2割特例の適用が制限される課税期間でなければ、2割特例の適用を受けることができます(28年改正法附則51の2①三)。

【新たに設立された法人が一定規模以上の法人である場合】
 ⑤  新設法人・特定新規設立法人の納税義務の免除の特例により事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(消法12の2①、12の3①)

【高額な資産を仕入れた場合】
 ⑥  「課税選択届出書」を提出して課税事業者となった後2年以内に一般課税で調整対象固定資産(注2)の仕入れ等を行った場合において、「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出ができないことにより事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(注3)(消法9⑦)
  (注)2 調整対象固定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が百万円以上の棚卸資産以外の資産をいいます(消法2①十六、消令5)。
  (注)3 免税事業者に係る登録の経過措置(28年改正法附則44④)の適用を受けて適格請求書発行事業者となった者は、「課税選択届出書」の提出をして課税事業者となっていませんので、これに該当することはありません。
 ⑦  新設法人及び特定新規設立法人の特例の適用を受けた課税期間中に、一般課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行ったことにより事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(消法12の2②、12の3③)
 ⑧  一般課税で高額特定資産(注4)の仕入れ等を行った場合(棚卸資産の調整の適用を受けた場合)において事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(消法12の4①②④)
  (注)4 高額特定資産とは、一の取引単位につき、課税仕入れ等に係る支払対価の額(税抜き)が1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいいます(消法12の 4①、消令25の5①)。
 ⑨  一般課税で金又は白金の地金等を仕入れた金額の合計額(税抜き)が200万円以上である場合において事業者免税点制度の適用が制限される課税期間(消法12の4③④、消令25の 5④)

【課税期間を短縮している場合】
 ⑩  課税期間の特例の適用を受ける課税期間(注5)
  (注)5 課税期間の特例の適用を受ける課税期間とは、「消費税課税期間特例選択届出書」の提出により、課税期間を一月又は三月に短縮している課税期間であり、当該届出書の提出により一の課税期間とみなされる課税期間も含みます(消法19)。

(2割特例の適用ができない課税期間②)
問 116 課税選択届出書の提出により納税義務の免除が制限されている場合であっても小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けられない場合があるとのことですが教えてください。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 2割特例は、適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者(「課税選択届出書」の提出により課税事業者となった免税事業者を含みます。)が適格請求書発行事業者となる場合に適用することができます(28年改正法附則51の2①)。
 一方で、令和5年10月1日より前から「課税選択届出書」の提出により引き続き課税事業者となる同日を含む課税期間※、つまり、適格請求書等保存方式の開始前である令和5年9月30日以前の期間を含む課税期間の申告については、2割特例の適用を受けることはできません(28年改正法附則51の2①一)。
 ※  適格請求書発行事業者の登録申請書を提出した事業者であって、「課税選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間の初日から課税事業者となる事業者(注)については、当該課税期間中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することにより、「課税選択届出書」を失効させることができます(28年改正法附則51の2⑤)。
 この場合、当該登録申請書の提出により、適格請求書発行事業者となった場合においては、登録日から課税事業者となり、当該課税事業者となった課税期間から2割特例を適用できることとなります。
 なお、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出しない場合であっても、令和5年10月 1日を含む課税期間の翌課税期間以後については、基準期間の課税売上高が1千万円以下である場合には、問115≪2割特例の適用ができない課税期間①≫の課税期間に該当しない限り、2割特例を適用することができます。

(注) 上記の「「課税選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間の初日から課税事業者となる事業者」とは、当該課税期間から初めて課税事業者となる事業者をいうのであり、「課税選択届出書」の提出により令和5年10月1日を含む課税期間より前の課税期間から課税事業者となっていた事業者は、該当しません。そのため、対象外となる事業者においては、令和5年10月1日を含む課税期間中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出したとしても、当該課税期間につき「消費税課税事業者選択届出書」を失効させることはできません。また、結果として当該課税期間においては2割特例を適用できないこととなります。

(消費税課税事業者選択届出書を提出しても2割特例の適用ができる場合)
問 116-2 私は、今まで免税事業者であったものの、令和5年に入ってから適格請求書発行事業者の登録申請書を提出し、令和5年 10 月1日から適格請求書発行事業者(課税事業者)となった個人事業者です。当該登録申請書の提出に当たり、「消費税課税事業者選択届出書」も同時に提出したのですが、その提出日によっては令和5年分の確定申告において2割特例が適用できないことがあると聞きました。私のような場合には、令和5年分の申告において2割特例を適用できますか。【令和6年4月追加】

【答】
 2割特例は「消費税課税事業者選択届出書」の提出により課税事業者となった事業者も適用を受けることができますが、令和5年 10 月1日より前から同届出書の提出により引き続き課税事業者となる同日を含む課税期間、つまり、令和5年9月 30 日以前の期間を含む課税期間の申告については、2割特例の適用を受けることはできません(注1)(28 年改正法附則 51 の2①)。
 「消費税課税事業者選択届出書」の効果は、原則として、その提出した日の属する課税期間の翌課税期間から生じるところ、ご質問の場合、その効果は令和6年1月1日から生じるため、令和5年分については、令和5年 10 月 1 日(適格請求書発行事業者の登録日)から令和5年12 月 31 日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて申告を行うことになり、令和5年9月 30 日以前の期間を含まないことから、2割特例の適用を受けることができます(注2)

(注)
 1  「消費税課税事業者選択届出書」の提出により令和5年 10 月 1 日の属する課税期間から課税事業者となった事業者が、同日より前に登録申請書を提出している場合は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を当該課税期間の末日までに提出することで、令和5年 10 月 1 日を含む課税期間に係る申告につき2割特例の適用を受けることができます(その場合、上記と同様、登録日から課税期間の末日までの期間に行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについて申告を行うことになります。)。
 2  令和6年1月1日から課税事業者となる効果が生じますが、令和6年分の申告においても、基準期間である令和4年分の課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、2割特例の適用を受けることができます。

(2割特例を適用した課税期間後の簡易課税制度の選択)
問 117 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(2割特例)の適用を受けていましたが、翌課税期間から2割特例が適用できなくなるため、簡易課税制度の適用を受けたいのですが、いつまでに消費税簡易課税制度選択届出書を提出すればよいですか。【令和5年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 簡易課税制度を適用して申告する場合には、原則として、その適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
 この点、2割特例の適用を受けた事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間中に納税地を所轄する税務署長にその課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、その課税期間の初日の前日に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出したものとみなされます(28年改正法附則51の2⑥)。
 したがって、例えば、令和8年分まで2割特例により申告を行った個人事業者が翌年分から簡易課税制度の適用を受けようとする場合には、令和9年中に「消費税簡易課税制度選択届出書(令和9年分から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載したもの)」を提出すれば、令和9年分から、簡易課税制度の適用を受けることができます。

(注) 簡易課税制度を適用して申告する場合には、2割特例と異なり、申告時の選択ではないため、事前の届出が必要となりますので、ご留意ください。

(2割特例を適用するよりも簡易課税制度を適用した方が納付税額が少なくなる場合)
問 117-2 当社は、ハンドメイド作家が作成した雑貨を仕入れ、小売店に販売する事業を営んでいる事業者です。これまで免税事業者でしたが、令和5年 10 月1日から適格請求書発行事業者となり、令和6年9月期について初めて消費税の確定申告を行います。このような場合、消費税の納付税額を軽減できる2割特例や、簡易課税制度も適用できると思いますが、どのような方法により消費税の申告を行えばよいのでしょうか。【令和6年4月追加】

【答】
 消費税の申告方法は、仕入控除税額について実額で計算する「一般課税」、業種ごとに決められたみなし仕入率を適用し仕入控除税額を計算する「簡易課税制度」、そして、適格請求書等保存方式を機に免税事業者から適格請求書発行事業者となった方を対象に、売上税額の2割を納税額として計算する「2割特例」による方法があります。
 貴社の行っている事業は、「卸売業」に該当し、簡易課税制度を適用して申告する場合、90%のみなし仕入率が適用されることになりますので、2割特例を適用するよりも、消費税の納付金額が少なくなると考えられます。
 2割特例については、適用を受ける旨を確定申告書に付記することで適用できますが、簡易課税制度は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります(その課税期間の基準期間における課税売上高が 5,000 万円以下である場合に限ります。)。しかし、免税事業者が登録日から課税事業者となる経過措置の適用を受ける場合には、その登録日の属する課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から、簡易課税制度の適用を受けることができることとされています。
 したがって、ご質問のような前提のもと、令和6年9月期の申告について簡易課税制度の適用を選択する場合には、課税期間の末日(令和6年9月 30 日)まで(注)に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。
 なお、多額の設備投資などがあり、課税仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合、一般課税であれば還付税額が生じますが、簡易課税制度や2割特例を適用している場合には、通常、還付税額が生じることはありませんので、その点も踏まえ申告方法をご検討ください。

(注) 課税期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他一般の休日、土曜日又は 12 月 29 日、同月 30 日若しくは同月 31 日であったとしても、これらの日の翌日とはなりませんのでご留意ください。

(参考) 免税事業者が登録日から課税事業者となる経過措置についての詳細については、問7《免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合》を、簡易課税制度を選択する場合の手続等についての詳細については、問9《簡易課税制度を選択する場合の手続等》を、それぞれご参照ください。

Ⅴ 適格請求書等保存方式の下での税額計算
(適格請求書等保存方式の下での税額計算の概要)
問 118 適格請求書等保存方式における税額計算の方法について教えてください。【令和5年 10月改訂】

【答】
 軽減税率制度の実施後は、消費税率が軽減税率と標準税率の複数となることから、売上げと仕入れを税率ごとに区分して税額計算を行う必要がありますが、売上税額から仕入税額を控除するといった消費税額の計算方法は、適格請求書等保存方式においてもこれまでと変わりません。
 具体的な売上税額と仕入税額の計算方法は、次のとおりとなります。

1  売上税額(詳細については、問119《売上税額の計算方法》をご参照ください。)
 ⑴  原則(割戻し計算)
 税率ごとに区分した課税期間中の課税資産の譲渡等の税込価額の合計額に、108分の100 又は110分の100を掛けて税率ごとの課税標準額を算出し、それぞれの税率(6.24%又は7.8%)を掛けて売上税額を算出します(消法45)。

 ⑵  特例(積上げ計算)
 相手方に交付した適格請求書又は適格簡易請求書(以下これらを併せて「適格請求書等」といいます。)の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している場合を含みます。)には、これらの書類に記載した消費税額等の合計額に100分の78を掛けて算出した金額を売上税額とすることができます(消法45⑤、消令62①)。
 なお、売上税額を積上げ計算した場合、仕入税額も積上げ計算しなければなりません。

2  仕入税額(詳細については、問 126 及び問 128 をご参照ください。)
 ⑴  原則(積上げ計算)
 相手方から交付を受けた適格請求書などの請求書等(提供を受けた電磁的記録を含みます。)に記載されている消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の 78を掛けて仕入税額を算出します(消法30①、消令46①②)。

 ⑵  特例(割戻し計算)
 税率ごとに区分した課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額の合計額に、108分の 6.24又は110分の7.8を掛けて算出した金額を仕入税額とすることができます(消令46③)。
 なお、割戻し計算により仕入税額を計算できるのは、売上税額を割戻し計算している場合に限られます。

(売上税額の計算方法)
問 119 適格請求書等保存方式における売上税額の計算方法について教えてください。【令和5年10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式における売上税額については、原則として、課税期間中の課税資産の譲渡等の税込金額の合計額に110分の100(軽減税率の対象となる場合は108分の100)を掛けて計算した課税標準額に7.8%(軽減税率の対象となる場合は6.24%)を掛けて算出します(割戻し計算)。
 また、これ以外の方法として、交付した適格請求書及び適格簡易請求書の写し(電磁的記録により提供したものも含みます。)を保存している場合に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を乗じて計算した金額とすることもできます(積上げ計算)(消法45⑤、消令62)。
 ただし、適格簡易請求書の記載事項は、「適用税率又は税率ごとに区分した消費税額等」であるため、「適用税率」のみを記載して交付する場合、税率ごとの消費税額等の記載がないため、積上げ計算を行うことはできません。
 なお、売上税額の計算は、取引先ごとに割戻し計算と積上げ計算を分けて適用するなど、併用することも認められますが、併用した場合であっても売上税額の計算につき積上げ計算を適用した場合に当たるため、仕入税額の計算方法に割戻し計算を適用することはできません(基通15-2-1の2)。

(売上税額の積上げ計算における適格請求書の交付の範囲)
問 120 当社はスーパーマーケットを経営しています。交付した適格請求書及び適格簡易請求書の写しを保存している場合には、売上税額の積上げ計算をすることができるとのことですが、例えば、商品販売時に顧客に対して適格簡易請求書であるレシートを交付しようとしたところ、顧客がこれを受け取らなかった場合などは、交付がないとして売上税額の積上げ計算はできないのですか。【令和元年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式における売上税額の計算方法については、原則の割戻し計算のほか、相手方に「交付」した適格請求書等の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している場合を含みます。)に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に 100 分の 78 を掛けて算出した金額を売上税額とする積上げ計算も認められています(消法 45⑤、消令 62)。
 この点、ご質問のように、適格請求書等を交付しようとしたものの顧客が受け取らなかったため、物理的な「交付」ができなかったような場合や交付を求められたとき以外レシートを出力していない場合であっても、適格請求書発行事業者においては、当該適格請求書等の写しを保存しておけば、「交付した適格請求書等の写しの保存」があるものとして、売上税額の積上げ計算を行って差し支えありません。
 ※  適格請求書等の写しの範囲については、問 78《適格請求書等の写しの範囲》をご参照ください。

(仕入明細書を受領した場合における売上税額の積上げ計算)
問 121 当社は売上税額の積上げ計算を行うため、適格請求書を交付して、その写しを保存することとしています。しかし、取引先の中には、仕入明細書により支払が行われ、当社が作成した適格請求書を受けとってもらえない取引先もあります。
 そういった取引先に対する売上げについては、売上税額の積上げ計算を行うために必要な「交付した適格請求書の写し」の保存を行うことができません。このような場合、当該取引先に対する売上げに係る売上税額の積上げ計算を行うことはできないのでしょうか。
 なお、確認をするために取引先から受領した仕入明細書については、当社でも保存しています。【令和4年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式における売上税額の計算方法については、割戻し計算のほか、相手方に「交付」した適格請求書等の写しを保存している場合(適格請求書等に係る電磁的記録を保存している場合を含みます。)に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の 78を掛けて算出した金額を売上税額とする積上げ計算も認められています(消法45⑤、消令62)。
 また、買手である取引先が、仕入明細書を仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等とするには、当該仕入明細書に記載されている事項について売手である貴社の確認を受けることが必要です。
 この確認の結果、貴社と相手方との間で仕入明細書に記載された消費税額等について共有されることになりますので、ご質問のように、取引当事者間での取決め等により、仕入明細書により代金の支払が行われ、売手が適格請求書を交付することができない場合であっても、仕入明細書に記載されている事項の確認に当たって仕入明細書を受領しており、かつ、当該受領した仕入明細書を適格請求書等の写しと同様の期間・方法により保存している場合には、「交付した適格請求書等の写しの保存」があるものとして、売上税額の積上げ計算を行って差し支えありません。
 ※  適格請求書の写しの保存期間や方法については、問79《適格請求書の写しの保存期間等》をご参照ください。

(媒介者交付特例における精算書による売上税額の積上げ計算)
問 122 当社は、委託先に商品の販売を委託しており、毎月、販売に係る精算書を受領しています。その精算書には、適格請求書の記載事項が全て記載されているのですが、これを基に売上税額の積上げ計算をしてもいいのですか。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 売上税額の計算は、交付した適格請求書及び適格簡易請求書の写し(電磁的記録により提供したものも含みます。)を保存している場合に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を乗じて計算した金額とすることができます(積上げ計算()消法45⑤、消令62)。
 また、委託販売における受託者が媒介者交付特例を適用して適格請求書を交付する場合においては、
 ①  買手に交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を保存する
 ②  買手に交付した適格請求書の写し又は提供した電磁的記録を速やかに委託者に交付又は提供する
こととされており、②について、例えば、複数の委託者の商品を販売した場合や、多数の購入者に対して日々適格請求書を交付する場合などで、コピーが大量になるなど、適格請求書の写しそのものを交付することが困難な場合には、適格請求書の写しと相互の関連が明確な、精算書等の書類等を交付することで差し支えないものとされています(基通1-8-11)。
 したがって、ご質問のように、委託先から適格請求書の記載事項が全て記載されている精算書の交付を受けている場合は、その精算書を基に売上税額の積上げ計算をして差し支えありません。

(委託販売等の手数料に係る委託者の売上税額の計算)
問 123 当社は、委託販売等に係る資産の譲渡等を行った場合の売上税額の計算について、資産の譲渡等の金額から、受託者に支払う委託販売手数料を控除した残額を委託者における資産の譲渡等の金額としていますが、適格請求書等保存方式の下での取扱いについて教えてください。なお、当社が行う委託販売等は軽減税率の適用対象ではありません。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 委託販売等について、委託販売等に係る委託者においては、受託者が委託商品の譲渡等をしたことに伴い収受した又は収受すべき金額が委託者における資産の譲渡等の金額となりますが、軽減税率の適用対象とならない課税資産の譲渡等のみを行うことを委託している場合、その課税期間中に行った委託販売等の全てについて、その資産の譲渡等の金額から受託者に支払う委託販売手数料を控除した残額を委託者における資産の譲渡等の金額とすることも認められています(基通10-1-12⑴)。
 適格請求書等保存方式においては、行った課税仕入れについて仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、受託者から交付を受けた適格請求書等の保存が必要となります。したがって、その資産の譲渡等の金額から受託者に支払う委託販売手数料(課税仕入れ)を控除した残額を委託者における資産の譲渡等の金額とするためには、当該委託販売手数料に係る適格請求書等の保存が必要となります。

(委託販売等の手数料に係る受託者の売上税額等の計算)
問 124 当社は、委託販売等に係る資産の譲渡等について受託し、その手数料を受け取っており、売上税額の計算について、委託された商品の譲渡等に伴い収受した又は収受すべき金額を課税資産の譲渡等の金額とし、委託者に支払う金額を課税仕入れに係る金額としていますが、適格請求書等保存方式の下での取扱いについて教えてください。なお、当社が委託された商品の販売は軽減税率の適用対象ではありません。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 委託販売等について、委託販売等に係る受託者においては、委託者から受ける委託販売手数料が役務の提供の対価となりますが、委託者から軽減税率の適用対象とならない課税資産の譲渡等のみを行うことを委託されている場合、委託された商品の譲渡等に伴い収受した又は収受すべき金額を課税資産の譲渡等の金額とし、委託者に支払う金額を課税仕入れに係る金額とすることも認められています(基通10-1-12⑵)。
 適格請求書保存方式においても、委託された商品の販売が軽減税率の適用対象でない場合には、委託された商品の譲渡等に伴い収受した又は収受すべき金額を課税資産の譲渡等の金額とし、委託者に支払う金額を課税仕入れに係る金額とすることができます。この場合、委託者に支払う金額に係る課税仕入れに関し、適格請求書等の保存は不要です。

(課税期間をまたぐ適格請求書による売上税額の計算)
問 125 当社は、3月決算の法人で、売上げの請求書については、毎月 20 日締めとしています。3月 21 日から4月 20 日までの期間に係る適格請求書には、同期間に係る消費税額を記載しているのですが、これを基に売上税額について、積上げ計算することができますか。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 売上税額の計算については、交付した適格請求書及び適格簡易請求書の写し(電磁的記録により提供したものを含みます。)を保存している場合に、そこに記載された税率ごとの消費税額等の合計額に100分の78を乗じて計算した金額とすることができます(積上げ計算()消法45⑤、消令62)。
 ご質問のような適格請求書を交付した場合、翌課税期間(4月1日から4月20日まで)の消費税額も合計して記載されていることになるため、これを基に売上税額の積上げ計算をすることはできません。
 なお、売上税額の計算は、割戻し計算と積上げ計算を併用することが認められています。したがって、ご質問のような期間(3月21日から3月31日まで(期末を含む請求書の期間)及び 4月1日から4月20日まで(期首を含む請求書の期間))の取引については割戻し計算とし、それ以外の期間(4月21日から翌年3月20日)の取引については積上げ計算とすることも可能です。
 また、課税期間をまたぐ期間(3月21日から3月31日及び4月1日から4月20日)に係る取引をまとめて一の適格請求書とする場合、当該適格請求書において、課税期間の範囲に応じて適格請求書の記載事項をそれぞれ区分して記載していれば、その課税期間で区分した税率ごとに合計した課税資産の譲渡等に係る税込対価(税抜対価)の額から算出した消費税額等を当該適格請求書に係る消費税額等としても差し支えありません。
 一方で、課税期間をまたがない期間について一の適格請求書を交付する場合においては、その期間内で任意に区分した期間に応じた税率ごとに合計した課税資産の譲渡等に係る税込対価(税抜対価)の額から算出した消費税額等を記載したとしても、当該消費税額等は、適格請求書の記載事項としての消費税額等とはなりません。

(注) 法人税基本通達2-6-1により決算締切日を継続して3月20日としているような場合、消費税の資産の譲渡等の時期についても、同様とすることが認められています(基通9-6-2)。このように決算締切日により、法人税及び消費税の申告をしている場合には、売上税額の積上げ計算のための課税期間ごとの区分の対応は不要です。

【参考】
○  法人税基本通達2-6-1(決算締切日)
 法人が、商慣習その他相当の理由により、各事業年度に係る収入及び支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合には、これを認める。
(注) (省略)

(仕入税額の計算方法)
問 126 適格請求書等保存方式における仕入税額の計算方法について教えてください。【令和5年10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式における仕入税額の計算方法は、次のとおりです。
1  積上げ計算
 原則として、交付された適格請求書などの請求書等に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の78を掛けて算出します(請求書等積上げ計算)(消法30①、消令46①)。
 また、これ以外の方法として、課税仕入れの都度(注1)、課税仕入れに係る支払対価の額に 110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額(1円未満の端数が生じたときは、端数を切捨て又は四捨五入します。)を仮払消費税額等(注2)などとし、帳簿に記載(計上)している場合は、その金額の合計額に100分の78を掛けて算出する方法も認められます(帳簿積上げ計算)(消令46②)。
 なお、仕入税額の計算に当たり、請求書等積上げ計算と帳簿積上げ計算を併用することも認められますが、これらの方法と割戻し計算(下記「2」参照)を併用することは認められません(基通11-1-9)。

(注)
 1  例えば、課税仕入れに係る適格請求書の交付を受けた際に、当該適格請求書を単位として帳簿に仮払消費税額等として計上している場合のほか、課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税仕入れにつきまとめて交付を受けた適格請求書を単位として帳簿に仮払消費税額等として計上している場合が含まれます(基通11-1- 10)。
なお、帳簿積上げ計算において計上する仮払消費税額等については、受領した適格請求書ではない納品書又は請求書を単位として計上することや継続的に買手の支払基準といった合理的な基準による単位により計上することでも差し支えありません。
 2  課税仕入れに係る支払対価の額には消費税額等を含みますので、帳簿に記載する仮払消費税額等は、一般的に、適格請求書等の請求書等に記載された課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出するものと考えられますが、例えば、課税仕入れに係る税抜対価の額が記載された納品書を基礎として帳簿に仮払消費税額等を記載する場合において、当該税抜対価の額に100分の10(軽減税率の対象となる場合は100分の8)を乗じて算出する方法も認められます。

2  割戻し計算
 課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額を税率ごとに合計した金額に110分の7.8(軽減税率の対象となる部分については108分の6.24)を掛けて算出することができます(消法30①、消令46③)。
 ただし、仕入税額を割戻し計算することができるのは、売上税額を割戻し計算する場合に限ります。

(外貨建取引における仕入税額の計算方法)
問 127 当社は、一部の取引について米ドル建てにより仕入れを行っており、当該取引に係る法人税の処理については、取引を行った日の対顧客直物電信売相場(TTS)と対顧客直物電信買相場(TTB)の仲値(TTM)により円換算を行っており、消費税の処理についても同様としております。
 このような場合に、適格請求書等保存方式における仕入税額の計算方法は、どのようになりますか。【令和4年 11 月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
外貨建取引の場合における仕入税額の計算方法の留意点は以下のとおりです。
なお、適格請求書等保存方式における仕入税額の計算方法は、問126≪仕入税額の計算方法≫をご参照ください。

1  積上げ計算
 ⑴  請求書等積上げ計算の場合(消法30①、消令46①)
 取引先から交付を受けた適格請求書などの請求書等を基礎として計算することとなりますので、外貨建取引に係る適格請求書等を取引先から交付を受けた場合、当該適格請求書等に記載された「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を基礎として計算することとなります。外貨建取引に係る適格請求書の記載事項については、問68≪外貨建取引における適格請求書の記載事項≫をご参照ください。
 この場合において、当該適格請求書等に記載された消費税額等が貴社の円換算の方法と異なるところにより算出されていたものであったとしても、問題ありません(当該適格請求書等に記載された「税率の異なるごとに区分した消費税額等」を基礎として計算することとなります。)。
 ⑵  帳簿積上げ計算の場合(消令46②)
 課税仕入れに係る支払対価の額から帳簿に記載(計上)する仮払消費税額等を算出することとなるため、外貨建取引の場合、以下のいずれかの計算方法により、仮払消費税額等を算出することとなります。
 なお、税抜経理により記帳している事業者については、現在行っている外貨建取引に係る記帳方法と異なるものではありませんが、仮払消費税額等を算出する際の端数処理は、切捨て又は四捨五入となりますのでご留意ください。

2  割戻し計算(消法30①、消令46③)
 割戻し計算により行う場合、課税期間中の課税仕入れに係る支払対価の額を税率ごとに合計した金額を基礎として仕入税額を算出することから、外貨建取引の場合、帳簿に記載された円換算後の課税仕入れに係る支払対価の額を基礎として行うこととなります。
 なお、仕入税額を割戻し計算することができるのは、売上税額を割戻し計算する場合に限ります。

(適格請求書などの請求書等に記載された消費税額による仕入税額の積上げ計算)
問 128 仕入税額の計算について、適格請求書に記載のある消費税額等に基づいて積上げ計算する場合、消費税額等の記載がない適格簡易請求書の交付を受けたときは、どのように計算すればよいですか。【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書又は適格簡易請求書に記載された消費税額等を基礎として、仕入税額を積み上げて計算する場合には、次の区分に応じた金額を基として仕入税額を計算することとなります(消令46①)。
 ①  交付を受けた適格請求書(電磁的記録により提供されたものも含みます。)に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額
 ②  交付を受けた適格簡易請求書(電磁的記録により提供されたものも含みます。)に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額
(適格簡易請求書に適用税率のみの記載があり、消費税額等が記載されていない場合は、適格請求書に消費税額等を記載する際の計算方法と同様の方法により計算した金額のうち課税仕入れに係る部分の金額)
 ③  作成した仕入明細書(電磁的記録により作成したものも含みます。)に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額
 ④  卸売市場において、委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について、受託者から交付を受けた書類(電磁的記録により提供されたものも含みます。)に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額
 ⑤  公共交通機関特例など、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるものについては、課税仕入れに係る支払対価の額に 110 分の 10(軽減税率の対象となる場合は 108 分の8)を掛 けて算出した金額(1円未満の端数が生じたときは、端数を切捨て又は四捨五入します。) したがって、ご質問の場合は、上記②の場合ですので、適格簡易請求書に記載された対価の 額が、税込金額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を掛けて消費税額等を算出し、その金額を基礎として、仕入税額の積上げ計算を行います。

(注) 一定規模以下の事業者の事務負担の軽減措置(少額特例)により、帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができる課税仕入れについては、⑤の場合と同様の計算となります(改正令附則 24 の2②)。
 少額特例については、問 111《一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置》をご参照ください。

(課税期間をまたぐ適格請求書による仕入税額の計算)
問 129 当社は、3月決算の法人です。取引先から、3月 21 日から4月 20 日までの期間をまとめた消費税額が記載されている適格請求書の交付を受けたのですが、これを基に仕入税額について積上げ計算することができますか。【令和3年7月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 仕入税額の積上げ計算については、交付された適格請求書などの請求書等に記載された消費税額等のうち課税仕入れに係る部分の金額の合計額に100分の78を掛けて算出します(請求書等積上げ計算)(消法30①、消令46①)。
 ご質問のような適格請求書の交付を受けた場合、当課税期間(3月21日から3月31日まで)の消費税額等と翌課税期間(4月1日から4月20日まで)の消費税額等が合計して記載されていることになるため、これを基に仕入税額の請求書等積上げ計算をする場合は、当課税期間に係る消費税額と翌課税期間に係る消費税額について、それぞれの期間の取引に係る消費税額を算出し、それぞれの期間が含まれる課税期間においてそれぞれ積上げ計算をする必要があります。
 また、仕入税額の積上げ計算は、課税仕入れの都度、課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減税率の対象となる場合は108分の8)を乗じて算出した金額(1円未満の端数が生じたときは、端数を切捨て又は四捨五入します。)を仮払消費税額等などとし、帳簿に記載(計上)している場合は、その金額の合計額に100分の78を掛けて算出する方法も認められます(帳簿積上げ計算)(消令46②)。
このため、ご質問の適格請求書について、当課税期間に行った課税仕入れにつき、帳簿積上げ計算することもできます。

(参考) 仕入税額の計算に当たり、請求書等積上げ計算と帳簿積上げ計算を併用することも認められますが、これらの方法と割戻し計算を併用することは認められません(基通 11-1-9)。

(注) 法人税基本通達2-6-1により決算締切日を継続して3月20日としているような場合、消費税の課税仕入れの時期についても、同様とすることが認められています(基通 11-3-1)。このように決算締切日により、法人税及び消費税の申告をしている場合には、仕入税額の積上げ計算のための課税期間ごとの区分の対応は不要です。

【参考】
○  法人税基本通達2-6-1(決算締切日)
 法人が、商慣習その他相当の理由により、各事業年度に係る収入及び支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合には、これを認める。
(注) (省略)

(免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置を適用する場合の税額計算)
問 130 適格請求書等保存方式開始後6年間は、免税事業者等からの課税仕入れについても一定割合の仕入税額控除の適用を受けられるとのことですが、その場合の仕入税額控除の具体的な計算方法を教えてください。【令和4年4月追加】【令和5年 10 月改訂】

【答】
 適格請求書等保存方式の下では、原則、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除を行うことはできませんが、制度開始後6年間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置が設けられています。本経過措置の適用を受けるために必要な要件については、問 113《免税事業者等からの仕入れに係る経過措置》をご参照ください。
 本経過措置を適用する場合に仕入税額とみなす金額の具体的な計算方法は、次のとおりとなります。

1  仕入税額について「積上げ計算」を適用している場合
 本経過措置の適用を受ける場合においても「積上げ計算」により計算する必要があります。
 本経過措置の適用を受ける課税仕入れの都度、その課税仕入れに係る支払対価の額に 110分の 7.8(軽減税率の対象となる場合は 108 分の 6.24)を乗じて算出した金額に 100 分の 80(注)を乗じて算出します(その金額に1円未満の端数が生じたときは、その端数を切捨て又は四捨五入します。)(改正令附則 22①一、23①一)。
 なお、本経過措置の適用を受ける課税仕入れを区分して管理し、課税期間の中途や期末において、当該区分した課税仕入れごとに上記の計算を行うこととしても差し支えありません。また、税抜経理を採用している場合、課税仕入れの都度、経過措置対象分(消費税額等相 当額の 100 分の 80(注))の仮払消費税額等を算出し端数処理(その金額に1円未満の端数が生じたときは、その端数を切捨て又は四捨五入します。)を行っていれば、その金額の合計額に 100 分の 78 を乗じて算出した金額(切捨て)を本経過措置の適用を受けた課税仕入れに係る消費税額としても差し支えありません※。

2  仕入税額について「割戻し計算」を適用している場合
 本経過措置の適用を受ける場合においても「割戻し計算」により計算する必要があります。
 課税期間中に行った本経過措置の適用を受ける課税仕入れに係る支払対価の額の合計金額に 110 分の 7.8(軽減税率の対象となる場合は 108 分の 6.24)を乗じて算出した金額に 100分の 80(注)を乗じて算出します(改正令附則 22①二、23①二)。

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